国際的な地球温暖化防止
2009/09/14
求められている世界の取り組み
欠かせない国際的な協力
世界全体で増え続ける、二酸化炭素(CO2)の排出量。それによって引き起こされる地球温暖化は、一つの国の取り組みだけで解決できる問題ではありません。
地域や国によって程度の差はあれ、地球上の人類ほぼすべてが、普段の生活や経済活動を通じて、CO2を始めとする温室効果ガスを排出しているためです。
また、実際に温暖化がもたらす重大な影響も、国境に関係なく広がり、被害を及ぼしています。
このような問題に、世界規模で取り組み、解決してゆくためには、各国がそれぞれの事情に合わせて対策をするだけでは、不十分です。
また、ある国が対策を頑張っているのに、別の国が頑張っていないというような、不公平な状況が続けば、頑張っている国の中でも国民の不満が高まってくるでしょう。
地球規模の問題であるからこそ、地球規模で取り組まなければ、十分かつ公平な取り組みにならないのです。
人類全体の問題として世界のリーダーたちが認識を深め、協力して温室効果ガスの削減に、取り組んでゆかねばなりません。
温暖化に関する国際的な取り組みは、主に国連の会議で議論がされていますが、WWFは、その国連会議に黎明期から参加し続けています。
世界中から集まる環境NGOの仲間たちとともに国連会議での交渉の進展を見守るとともに、各国の政府代表団に温暖化対策のあり方についての提言や働きかけを続けてきました。
WWFジャパンもWWFの国際的なネットワークの一員として、日本をはじめとする世界のNGOの仲間たちと協力して、各国政府にはたらきかけを行なっています。
国際条約と国際会議
国際社会が協力して温暖化問題に取り組んでいくための土台となるのが、国際条約や、それを話しあう国際会議です。
現在、温暖化問題に関する国際条約はパリ協定をはじめ3つあります。
1つは、世界のほぼ全ての国が参加していて、今の国際的な取り組みの礎となっている「国連気候変動枠組条約」です。英語の頭文字をとって、UNFCCCとも呼ばれます。
もう1つは、先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けた「京都議定書」です。
そして、2015年末には、先進国・途上国問わず世界のすべての国が温暖化対策に取り組む国際協定である「パリ協定」が成立しました。
気候変動枠組条約に加盟している国々は、毎年世界の地域を順番にめぐって開催される「締約国会議」(COP)と呼ばれる国連会議に参加し、国際的な温暖化対策のあり方について、議論や交渉を行なっています。
COPのような国際会議は、その内容が報道されても、なかなか理解するのが難しく、通常の日常的な暮らしとはかけ離れた、遠い世界の問題と思われるかもしれません。
しかし実際には、こうした国際会議での取り決めが、やがては一つ一つの国々での取り組みにも反映され、そして、生活の中の身の回りの取り組みにもつながってきます。
たとえば、1997年に作られた京都議定書がなければ、日本で今日ほど「温暖化」問題に関する対策の重要性が、政府や自治体、企業の中で認識され、日常の中でも「温暖化対策」という言葉を見かけることにはならなかったでしょう。
京都議定書があったからこそ、以前よりも省エネ製品の選択肢が増えたり、「CO2の排出量の削減に取り組んでいます」というアピールをするサービスを選択できたりするといったことにつながっているのです。
また2015年末に合意されたパリ協定は、平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えること(1.5度未満に抑える努力も行なう)を目的として、21世紀末までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。
その実施のために各国が温暖化対策を導入することが、義務として課されているのです。
したがって企業活動や普段の生活すべてにおいて、温暖化対策を組み込むことが求められています。
国際会議で取り決められる温暖化対策は、遠いようで、着実に身の回りの暮らしにも関係してくる、重要なものなのです。
枠組条約から京都議定書へ
温暖化に関する国際的な取り組みは、1992年の国連気候変動枠組条約を起点に始まりました。
この条約は、温暖化に国際的に取り組むことを世界中が合意した条約で、今日までの国際的な取り組みの土台となっています。
その後、1997年に合意された京都議定書の下で取り組みは本格化し、先進国は2008~2012年までの間に、温室効果ガスを全体で約5%(1990年比)減らすという約束を交わしました。
そしてパリ協定へ
京都議定書は、はじめて先進国に温室効果ガス排出量を削減する数値目標を義務づけたという点で画期的でしたが、いくつかの課題を残しました。
まず、(当時)最大の排出国であったアメリカが、そもそも京都議定書には参加しなかった(批准しなかった)ことです。
また、京都議定書では、温室効果ガス排出量削減の数値目標を持ったのは先進国だけでした。
これは、現在生じている温暖化の問題が、過去の産業化の過程でCO2を排出してきた先進国により引き起こされたものであることから、まずは先進国から取り組むべきだと、いう原則に基づいた結論でした。
しかし、その後、途上国の中でも、特に新興国と呼ばれる国々は、急速な経済発展と共に排出量を増やしてきたので、そうした国々でも対策が必要になりました。
そこで、アメリカの参加や、途上国の排出量削減を視野に入れた新しい枠組みの創設が、2007年以降目指されてきました。
2009年のコペンハーゲンで開催されたCOP15・COP/MOP5でその合意が目指されましたが、残念ながら各国の根深い利害対立を解消できず、その合意に至りませんでした。
結果として、各国は、2020年までは、京都議定書の時のように条約で合意した目標ではなく、あくまで自主的な目標や取り組みの下で温暖化対策に取り組むことになりました。
その一方で、もう一度、新しい国際的な枠組みの合意に向けた交渉も、仕切り直しで再スタートしました。
2015年の年末にフランス・パリで開催されるCOP21・COP/MOP11において、世界すべての国が参加するパリ協定が採択されたのです。このパリ協定においては、先進国も途上国もすべての国が温暖化対策を進めることになったのです。
国際交渉の舞台で
国際交渉の意義とNGOの働き
国連会議で行なわれる交渉は、基本的に国の代表団同士の交渉です。その交渉を通じて、地球環境の保護につながる成果が合意されることが理想です。
しかし、実際の会議では、それぞれの国々の間で利害の対立があったり、取り組みに消極的な国が存在することによって、必ずしも温暖化対策として十分な結果を生み出せるとは限りません。
WWFのようなNGO(非政府組織)の役割の1つは、このような国際会議の動向を見守り、よりよい合意への代替案をもって、各国政府代表団に働き掛けることです。
国連会議では、WWFのようなNGOは、産業界、研究者、労働組合など、他のさまざまなグループと同様、オブザーバーという立場で参加します。
会議で自由に発言したり、最終的な議決に参加したりすることはできませんが、世界の国々の代表が交渉する様子を見守りつつ、会議の合間にそれぞれの代表団に意見・提言を伝えることができます。
また、複雑で専門的になりがちな交渉において、各国がとっている姿勢に、実際にどのような意味があるのかを、メディアに対して解説したり、争点を明らかにすることで、世界の市民の理解を促し、政策を変えてゆく世論の高まりをめざします。
各国政府の代表団が、そうしたNGOからの直接的な働きかけを真剣にとらえたり、あるいは、世論からの圧力を感じたりすれば、国連会議での交渉や議論が、一歩でも二歩でも進展を見せる可能性があります。
WWFの役割
WWFも地球温暖化に関連する重要な国際会議には、必ずスタッフを送り、国際ネットワークを活かした提言活動や、他のNGOと協力した働きかけを行なっています。
温暖化問題については、Climate Action Network(CAN)という国際的なNGOのネットワークがあり、WWFもその一員です。
国連会議では、このCANという形で、世界のNGOが力を結集してメッセージを出すこともあります。
WWFジャパンもこのネットワークの一員として、日本をはじめとする世界各国の動向を見守り、世界のNGOの仲間たちと協力して政府に働きかけを行なっています。
国連気候変動会議の過程
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2014年 | 2014年【COP20/CMP10】国連気候変動リマ会議 |
2013年 | 2013年【COP19/CMP9】国連気候変動ワルシャワ会議 |
2012年 | 2012年【COP18/CMP8】国連気候変動ドーハ会議 |
2011年 | 2011年【COP17/CMP7】国連気候変動ダーバン会議 |
2010年 | 2010年【COP16/CMP6】国連気候変動カンクン会議 |
2009年 | 2009年【COP15/CMP5】国連気候変動コペンハーゲン会議 |
2008年 | 2008年 【COP14/CMP4】国連気候変動ポズナニ会議 |
2007年 | 2007年 【COP/MOP3】第3回 京都議定書締約国会議 |
2006年 | 2006年 【COP/MOP2】 第2回 京都議定書締約国会議 |
2005年 | 2005年 【COP/MOP1】第1回 京都議定書締約国会議 |