COP21パリ会議まで3カ月!国連気候変動ボン会議はじまる
2015/08/31
2015年8月31~9月4日、ドイツ・ボンにおいて、2015年3回目の国連気候変動会議(ADP2.10)が開催されます。2015年は12月にフランス・パリでCOP21・COP/MOP11(国連気候変動枠組条約締約国会議第21回会合・京都議定書締約国会議第11回会合)が開催されますが、このCOP21では、世界各国が地球温暖化防止に関する2020年以降の「新しい国際枠組み」を合意する予定です。そのステップとなる今回のボン会議は、共同議長たちによる新しい国際枠組みの合意文書案が出されてから初となる公式会合であり、年末へ向けた交渉を加速できるかが課題です。
現在の国連気候変動交渉の流れ
2015年8月31日~9月4日、ドイツ・ボンにおいて、2015年3回目の国連気候変動会議が開催されます。
現在、国連では、気候変動(温暖化)に関する、2020年以降の新規かつ包括的な国際枠組みを作るための国際交渉が続けられています。
その枠組みとは、国際的な地球温暖化対策のルール、目標、支援の仕組み等全体を指したもので、2015年12月に、フランス・パリで開催されるCOP21・COP/MOP11(国連気候変動枠組条約締約国会議第21回会合・京都議定書締約国会議第11回会合)において合意が目指されています。
このため、その枠組みは「2015年合意」や「パリ合意」と呼ばれることもあります。
成立すれば、1997年に京都議定書が採択されて以降、最も重要な気候変動に関する国際合意となるため、国際社会の注目が集まっています。
これまでの国際社会の気候変動に対する取り組みを振り返ると、まず、2008年~2012年を対象とした京都議定書の第1約束期間がありました。
その後、それに続く国際枠組みを作ろうとしましたが、国々の間での対立が激しくうまくいかなかったため、2013年~2020年までは、各国による自主的な温室効果ガスの削減目標を基礎とした体制が中心となってきました(EU等一部の国は2013~2020年も京都議定書の第2約束期間を継続しています)。
そして現在の交渉は、2020年以降の国際的な取り組みを議論の対象としています。
その交渉の場として、2011年に南アフリカのダーバンで開催されたCOP17・COP/MOP7での合意に基づき、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)が設けられ、その場で交渉が行なわれています。
今回の会議も、そのADPの会合の第2回第10セッションとして開催されるので、ADP2.10と呼ばれます。
ADPの2つの「ワークストリーム」と交渉の流れ
2015年12月に国際社会が合意をしようとしている新しい国際枠組みの目的は、端的に言えば、「危険な気候変動(温暖化)を防ぐこと」です。
そのためには、一方では、原因である温室効果ガス排出量の削減を国際的に進め、他方では、それでも進行してしまう気候変動(温暖化)の影響に対処していくための対策をとっていくことが必要です。
現在の交渉は、そのための原則やルールといった事項を議論しています。
より詳しくは下記で説明しますが、交渉の舞台であるADPには、2つの大きな論点分野があり、それぞれ「ワークストリーム」と呼ばれています。
ワークストリーム1は、2015年12月までに合意する新しい国際枠組みの中身を詰めていく交渉を、ワークストリーム2は、2020年までの各国の取り組みの「底上げ」を議論しています。
ワークストリーム2において、なぜ「底上げ」が必要になるかといえば、現在各国が自主的に約束している取り組みでは、あきらかに、「地球温暖化による平均気温上昇を2度未満に抑える」という世界の目標に足りないためです。
2度未満に抑えるために必要な削減量と、約束されている削減量との差(ギャップ)は、2020年時点で80~120億トンにも上ると試算されており、これは、現在のアメリカ1国分の排出量より大きい数字で、国際的な課題として取り組まれています。
ワークストリーム1 | 2015年12月までに、2020年から始まる新しい国際枠組みに合意する |
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ワークストリーム2 | 2020年までの各国の取り組みを底上げする具体策を検討する |
2015年の交渉では、2月にスイス・ジュネーブで開催されたADP2.9において、各国の意見を入れ込んだ「交渉テキスト」と呼ばれる合意の下書きが準備されました。
しかし、各国の意見をそのまま書き込んだ形であり、交渉にも難しさがあったため、6月に開催されたADP2.9において、ADPの2人の共同議長に対して、選択肢等がよりわかりやすくなるように、交渉テキストを再整理する権限が与えられました。
7月下旬にその共同議長によるテキスト案が条約事務局のウェブサイトに掲載され、そのあとに、初めて公式な会合として開催されるのが、今回のADP2.10ということになります。
今回会議(ADP2.0)の焦点:共同議長案への反応
今回の会議の焦点は、前述したADPの2人の共同議長が用意した合意の共同議長テキスト案をめぐって、どのような議論が展開されるかです。
国連の気候変動交渉では、各国の意見をまとめて議長が作成した案に対し、自分の意見が適切に反映されていないと感じる国々が不満を訴え、交渉が頓挫するということが過去にもありました。
今回の議論では、まずはそこを乗り越えていけるかどうかが最初のポイントです。
そのうえで、共同議長提案の中にある様々な論点について、解決とは言わないまでも、せめて、少しずつでも選択肢を絞り込み、最終的な合意へと近づいていけるかが、今回の重要なポイントです。
重要な論点の例:中長期的な削減目標と資金支援
たとえば、国際社会全体として、2050年や2100年といった長期にどれくらい温室効果ガス排出量を削減していくのかを、目標としてパリ合意の中に書くのか書かないのかというのは、1つの大きな論点です。
6月に開催されたドイツG7では、IPCC第5次評価報告書が、「2度未満に気温上昇を抑える」ということを前提としたシナリオの数字として示した「2050年までに2010年比で40~70%削減する」という数字が宣言の中に盛り込まれました。
これをうけると、G7に参加していた先進国はおそらくこうした方針に合意はできるものとみられますが、中国やインドも含んだ途上国は、先進国との責任の差が明確にならない限りは、こうした長期目標に合意できないと主張することも予想されます。
このほか、各国が国連に提出している2025年もしくは2030年に向けた、温室効果ガス排出量の削減目標は、最終的にはどのような扱いとするのか、というのも大きな論点です。
京都議定書と同じように国際合意の中に書くのか、それとも、目標を持つことは決めつつも、国際合意の外で管理していくのか。
これには、現在のアメリカの状況では、具体的な数値目標を国際合意の中に書いた状態では、正式に合意に参加する(批准する)ことができない可能性があるという事情も背景にあります。
また、途上国が温暖化対策やその影響に対する適応に必要とする資金や技術をどう支援するのか、そのあり方についても、今後、大きな論点になってくると予想されます。2010年の時の決定で、世界全体で「2020年までに年間1000億ドルの資金を動員する」という目標が設定されています。
この「1000億ドル」には、先進国政府が公的資金で途上国を支援するものも当然含みますが、民間が途上国に直接投資するお金も含むことになっています。
このような資金支援について、新たな合意をするのかどうかということも、大きな論点です。
先進国としては、資金支援の金額を増やすことには全般的に消極的ですが、途上国に適切に温室効果ガス排出量削減を進めてもらうためには、資金支援が必要であることは確かです。
このため、今回の議長国であるフランスは、この資金支援を、重要な合意の柱の1つとして位置付けています。
ここで列記したのは、いずれも大きな論点ですが、それでも、議論されている論点のほんの一部で、その他にも多種多様な論点があり、それぞれについて国々の立場が違うため、交渉が大変に複雑化しています。
しかし、パリでの会議までは、残すところあと約3か月となり、いよいよ交渉も、最終的な着地点を見据えて、詰めていくことが必要です。
WWFの視点:日本がやるべきこと
WWFジャパンは引き続き、世界各国のWWFのオフィスと協力して、新しい国際枠組みが、気候変動による脅威を食い止めるに足る枠組みとなるように、各国政府に働き掛けていきます。
ADPでの交渉は、基本的に、2015年12月までに新しい国際枠組みの合意を目指しつつ、2020年までの取り組みの底上げを図るという流れで来ています。
その中で、各国は、いよいよ、新しい枠組みにおいてどのように排出量削減に貢献することができるのかを問われる時期となりました。
今回の会議までに、多くの国々が(日本も含めて)、次期枠組みに向けての温室効果ガス排出量削減目標を提出しています。世界の温室効果ガス排出量の6割を超える国々が、すでに2015年合意成立へ向けての強い意志を示していると言えます。
しかし、日本の「2030年までに2013年比で26%削減する」という目標は、気候変動の脅威を食い止めるという観点からは、あきらかに不十分な目標であり、日本の責任や能力から考えれば、もっと野心的な目標を掲げるべきでした。
また、アメリカ、中国、EUなど、既に目標を提出している各国の目標も、決して充分ではありません。
このため、COP21での合意では、単にこうした削減目標を登録し、実施していくための仕組みだけではなく、将来に向けて、世界各国の努力の水準を引き上げていくための仕組みも組み込んでいくこともが非常に重要です。WWFジャパンは、そのための提言活動をCOP21に向けて行なっていきます。