2005年【COP/MOP1】第1回 京都議定書締約国会議


2005年11月28日から12月10日まで、カナダのモントリオールで開かれていた第1回目となる「京都議定書締約国会議(COP/MOP1)」が終了しました。予定日の翌日までかかったこの会議では、京都議定書の効力が及ぶ期限が終了する2013年以降に、世界がどのような枠組みで、ひきつづき温暖化問題に取り組んでいくべきかが、大きな焦点となりました。

COP/MOP1について

温暖化防止のための国際会議はじまる

2005年11月28日から、カナダのモントリオールで、気候変動(地球温暖化)を防止するための国際会議が開催されました。毎年開かれ、2005年で11回目を迎える「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP11)」に加えて、「第1回京都議定書締約国会議(COP/MOP1)」も同時に開催され、12月10日まで各国政府による交渉が続けられました。

議定書とは、条約の効果を高めるために結ばれる国際的な取り決めのことです。2005年2月16日に、京都議定書が発効(実際に効力を発揮するようになること)したので、COP11に加えて、京都議定書を締結した国による会議(COP/MOP1)も開催されることとなりました。

締約国とは、その条約や議定書を守ることを正式に承認した国をいいます。従って、気候変動枠組条約の締約国でありながら、京都議定書を認めていないアメリカやオーストラリアは、COP11では正式なメンバーですが、COP/MOP1はオブザーバーという立場での出席となり、議事には参加できません。

議定書運用ルールの決定を採択すべき

京都議定書は、先進諸国に2008年から2012年までの間に削減すべき温室効果ガスの割合を義務づけています。日本は、1990年の排出量に比べて6%削減することが求められています。

こうした削減目標を達成できなかった場合にどのような罰則を適用するかなど、京都議定書を実際に運用するときのルールは、2001年にモロッコのマラケシュで開かれた第7回締約国会議(COP7)で決定されたのですが(マラケシュ合意)、COP/MOP1で正式に採択しないと運用できないことになっているのです。

WWFは、今回の会議で、京都議定書の運用ルールの決定をすべてきちんと採択するよう、各国政府に求めています。

2013年以降について話し合う時が来た!

さらにWWFでは、今回の会議において、京都議定書で定められた第1約束期間(2008年から2012年)の後に各国が温暖化問題の解決にどう取り組むか、その枠組みについての交渉を始めることを求めています。

京都議定書には、2013年以降についての話し合いを2005年に始めることという規定があります。しかし、アメリカを始め、先進諸国や産油国の中には、2013年以降について、京都議定書のような取り決めをすることに対して消極的な国がみられます。

京都議定書は、先進諸国に実質的な温室効果ガスの削減目標を義務づけたという点で画期的なものでした。しかし、2013年以降、京都議定書の枠組みが継続され、さらに積極的な目標が決まらないと、温暖化問題は事実上、後戻りすることになってしまいます。

しかし問題は複雑です。経済的にも、環境面でも異なった事情を抱えた世界の国々が参加でき、なおかつ温暖化防止に効果を発揮するような枠組みを決めるには、確実に今年から交渉を始め、その交渉は2008年までに終えなくてはならないとWWFは訴えています。

「2℃未満」に向けて

2013年以降の取り組みについて、今年から議論を始めることがいかに重要かは、温暖化がすでに、世界にどのような影響を及ぼしはじめているかを見れば明らかです。世界の平均気温は、産業革命前からすでに0.6℃上昇しています。その0.6℃の範囲の中で、すでに実際の被害を受けている人々がいます。このまま行くと、さらに0.6℃の上昇は避けられないといわれている状況にある今、これ以上取り返しのつかない被害を避けるには、地球の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃未満に抑える必要があります。

WWFは、各国政府が長期的な目標として「2℃未満」を掲げ、それに向かって現実的で積極的な対策をとる道を選ぶべきであることを、モントリオールの会議場でもアピールしていきます。


WWFポジションペーパー「無駄にしている時間はない」

第11回国連気候変動枠組条約締約国会議及び第1回京都議定書締約国会議に対する WWFのポジションペーパー

この問題はかつてないほど急を要している

気候変動はすべての国や部門の枠を越えて、あらゆるレベルの社会と統治機関に影響を与える問題である。すでに気候変動は単なる環境問題ではなく、世界中の水、農業、エネルギー、そして外交問題にとり、鍵となる問題としてとらえられている。国が発展し安定した経済活動を保つ能力へ基本的に影響を及ぼす気候変動は、いまやすべての政府のトップレベルが、社会と自然に悲惨な成り行きが待ち受けないように真剣に取り組まなければならない問題である。気候変動に関するモントリオール会議は、この論議のきわめて重要な岐路となるときに、開かれる。京都議定書が発効してからはじめての会合であり、世界中から数千人の人々が集まるモントリオール会議は、世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるために必要な大幅な排出削減を達成する弾みをつける場とならなければならない。各国政府は、この会議を通して、世界中の人々、産業界、経済市場、政策立案者たちに、たった今行動を起こさなければ、気候の不安定さというのはすぐそこに待ち構えている極めて厳しい現実であるということを認識させて、それぞれが公平な負担をする必要があるということを示さなければならない。

モントリオール会議は、各国政府が、京都議定書が発効したことを祝い、さらに2013年以降の取り組みについての交渉をはじめることを宣言するときである。京都議定書と気候変動条約を基盤にした公式な交渉を立ち上げることによってのみ、各国政府は気候変動に対して真剣に取り組み、2013年以降にどう対応するか交渉をはじめる用意があるという意思を示すことができる。このプロセスをはじめるという決定は、それぞれの国が何をするかではなく、どのように公平で透明な方法で議論をすることができるかを焦点にするものである。京都議定書の第3条9項では、その話し合いを2005年にはじめると規定されている。世界中ですでに実際に気候変動が起きていることを立証するような事象がたくさん起きている。大臣たちは、議定書と条約によってまもなく行われるレビューとあわせて、明確な期限を設けた議論をはじめるという決定には、一刻の猶予も許されないことを確かにするべきである。

2013年以降:話し合うときが来た!

2013年以降の枠組みを決めるプロセスをはじめるという決定には、衡平さと「共通だが差異ある責任」の原則にのっとったいくつかの鍵となる要素を含んでいなければならない。またこのプロセスは今年モントリオールで開始されて、2008年に終わらなければならない。明確な期限はプロセスを前へ進めるために不可欠である。そして3年間というのは、複雑な交渉が行われるのに十分な時間といえる。モントリオールの決議には交渉の中身をまとめるための委任事項が含まれなければならない。これらには、緩和の面では、なにがそれぞれの国にとって公平な分担であるかを決める衡平な緩和責任、3つの柔軟性メカニズム、遵守、土地利用の変化と林業、技術移転と、それにもちろん適応とその資金という欠かせない事項が含まれていなければならない。

プロセスにおける議定書と条約の役割について

議定書と条約はそれぞれ別の強みがあるということと、先進国がリードし続けなければならないことを考えると、WWFは二つの機関において議論される中味は、明確に区分されていなければならないと考える。

京都議定書は、修正を加えるという形で、状況に合わせていかようにも変えられることができる、生きている条約である。例えば、今後、第二約束期間に途上国が関わってくるとしても、その関わり方は、先進国とははっきりと違う形になるであろう。だれも途上国に拘束力のある絶対量削減目標を持つことは期待しないであろう。「共通だが差異ある責任」を果たすために、途上国は第1約束期間で果たした役割よりも多くの役割を果たさなければならないが、その中味はあくまでも今後の交渉により、決められるものである。CAN(ClimateActionNetwork-気候行動ネットワーク)は、衡平さ、歴史的責任、支払能力と行動能力の原則と、段階的アプローチに基づいた基準を含んだ制度の提案をしている。

京都議定書の構造は、途上国の取り組みについて差異を認めている。様々なタイプの約束内容によっていろいろな種類の付属書を付け加えることができる。そのあと国々は、透明な基準と交渉によっていずれかの付属書に位置付けられる。また、遵守システムそのものも改めて見直されなくてはならない。途上国にとって約束を果たすのにもう少し時間をとったり、不遵守の際の帰結が約束のタイプや国のタイプによって決められるようにするのである。つまり、途上国はそれぞれの国の事情を考慮に入れて、段階的に京都議定書の緩和システムに入れるようにするのである。これは様々な種類の政策や措置であったり、違うタイプの約束でありうる。京都議定書はこうした多様性を許容できる。

多くの国は、もし交渉が京都議定書のもとで行われたら、すべての国が現在の先進国タイプの約束を負い、先進国タイプの現存の遵守システムに組み込まれるという間違った認識を、持っているようである。これは全くそうではない。先進国は絶対的削減約束を負い続けるべきで、他の国々はそれを守らせるようにするべきだが、他の国々の約束の形がどのように展開してくるかは全くオープンであり、交渉から生まれるべきものである。その後に議定書が改定され、新しいニーズにこたえる違ったタイプの約束が標準となるような制度にすればよいのである。

それと同時に、気候変動条約の方は、適応や、資金メカニズム、技術移転などより広い範囲の決議の基礎とこれまでの歴史的経過を持っている。これらの事項も2013年以降の交渉に含まれなければならず、条約を強化することによってか、あるいは各国の関わりをより強化する必要がある適応、資金と技術移転を考慮するよう、議定書を改定するか、によって実現されうる。

デュアル・トラック(二つの道筋)?

幾つかの国はいわゆるデュアル・トラック(二つの道筋)を検討しているようである。この言葉の定義は、京都議定書の第3条9項を評価する決議が取られるが、同時に2013年以降の約束についての話し合いは気候変動条約のもとではじめられるということのようである。WWFはこれを非常に危険な選択肢と見ている。上記に述べたように、緩和の約束は、京都議定書の元で交渉されるべきである。京都議定書にはすでに先進国の削減約束を強化し、それと同時に、途上国のための様々なタイプの関わり方のために付属書を付け加え議定書を改定するという形の枠組みが存在するからである。

デュアル・トラックの危険性は、先進国の約束を強化するのではなく、いくつかの先進国が条約のもとで、よりゆるやかな約束をするように試みることにある。先進国に条約の下で約束のタイプやレベルを勝手に定義したり、好きな約束のタイプを選んだりできるようにすることは破壊的な結果をもたらし、何があっても避けなければならない。これは実際あらゆる明晰な多国間アプローチの終焉を示すものである。気候変動の問題に真剣な国々はこのような結果が確実に起こらないようにしなければならない。

WWFはデュアル・トラックを次のように定義する:気候変動条約のもとでは、適応、資金メカニズム、技術移転を話し合い、その他すべては京都議定書のもとで交渉するというものである。これが真剣なデュアル・トラックである。他のすべての定義は捨てられなければならない。

将来像を明確にすること-先進国によるリーダーシップ

モントリオール会議はそれぞれの国がどのような約束を2013年以降に採用するのかを話し合う会議ではもちろんないが、先進国が第一約束期間に絶対的排出量に上限を課すというアプローチへの約束を再確認する場であることは明らかである。大臣たちはその声明の中で、そして代表団は交渉の中で、先進国がその環境的、経済的利益のためにこのアプローチに責任をもっており、先進国はその強い削減約束から逃げはしないことを語り、発展途上国にリーダーシップを示さなければならない。これらの声明は世界の排出量取引市場に、キャップアンドトレード型システムが2013年以降もずっと続くことをはっきりと示すことになる。

先進国はその他以下の点をはっきりさせなければならない。

  • それぞれの国は京都ターゲットを責任を持って果たすことを確実にして、そのために必要なら新しい施策を取り入れることを宣言する
  • 適応に資金供与することを約束した国々はそれを今行わなければならない
  • すべての先進国は重要な適応の問題を解決し、資金供与の約束が含まれている意味ある適応5か年計画作業プランに関わる用意が整っているべきだ
  • すべての先進国は、知的財産権の議題を含む真の技術移転の可能性を探ることに対して、新たな意欲を示す必要がある
  • CDM(クリーン開発メカニズム)は環境と持続的発展の両方の利点を提供するものでありつづけなければならない。そして炭素クレジットの交換は行われるものの、実質的な効果が見られないようなところまで弱められてはいけない。追加性はCDM制度の核心部分であり続けなければならない。

すべての国は大臣の声明の中で、気候を守るために自分たちの公平な分担を担う用意があることを明確に示し、したがって何が自国にとって公平な分担であるかの交渉がモントリオールで開始されるのだと信念を持つべきである。

どの国もたった一国の行動や立場によって、交渉を前進させることを阻止されないようにしなければならない。京都議定書を批准していない国を含めるすべての国による前進の決議が可能ではなかったとしても、京都締約国は、議論を進めるべきである。京都議定書非批准国が適切な約束を果たすことを示した場合に、直ちに交渉に加わることのできるメカニズムを作りながら。

マラケシュ合意は採択されるべき

マラケシュ合意のすべての決定は、そのままで採択されるべきである。すべての決定は過去数年間に徹底的に交渉され合意を得られたものであるから、これらの決定に関する議論を再開するような疑問はあげられてはならない。これはCDMに関する決定と並んで、特に土地利用変化と林業に関する決定にとって大切である。

遵守の決定もモントリオールで採択されるべきである。京都議定書の持つ約束の拘束性は決定によって強められる。この場合改定は必要ない。遵守委員会を立ち上げ、早く機能できるようにするためには、今、議論を蒸し返している時間はない。サウジの改定案は、本気な提案ではないので、そのように扱われるべきである。

CDMは、その十全性を保つべきだ

CDMは、持続的発展とCO2削減の両方をもたらす重要なメカニズムである。WWFはゴールドスタンダードを開発とその普及を通じて、世界中でCDMを実効性のあるメカニズムにしようと努力している。

しかしCDMを"能率化"する意図で、様々な提案が非公式に議論されている。CDMをスムーズに運用できるようにするためのものもあるが、明らかにCDMの追加性の条件を弱めようという目的のものも多い。WWFはCDMを能率化することが追加性の条件を弱め、したがってCDMをその二つの目的を満たすことから遠ざけることを深刻に憂慮している。

追加性がなければ、CDMは結果として世界の排出量を増やすことになってしまう。したがって追加性の基準は厳格でなければならず、またその実施は効果的でなければならない。WWFはCDMの第16回理事会で採択された「追加性の実証と評価のツール」が、追加性を守ることを保証すると信じている。このツールは変えてはならない。

追加性の追求はしばしばホスト国の長期的な持続的発展のための政策改革への意欲をそぐ。なぜなら国内政策を導入することがCDMプロジェクトの追加性を否定する可能性があるからだ。CDMはそれのみで持続的発展の手段とすることは意図されていないが、しかしCDMを使用することが、途上国が持続的発展のためによい国内政策を作ることを妨げないことを確実にしなくてはならない。CDM理事会に対し、CDMのフリーライダーを含まず、厳格な追加性の基準を維持しながら、よい国内政策を作ることを奨励するガイドラインを整備するように、求めるべきである。

ビジネスと産業界、それに政府機関は、CDMプロジェクトサイクルが複雑すぎて費用がかかりすぎるため、CDMプロジェクトの数が制限されていると批判している。現在議論になっている重要な議題は、追加性が、プロジェクトの承認と登録プロセスを遅らせているという投資家による主張である。途上国内でCDMを使いたいという期待の大きさに比べて、CDMの管理業務への拠出金が非常に少ないので、それが障害となっていることは驚きに値しない。問題の根は、膨大な作業量を抱えて能率があがらない組織問題ではなく、十分な資金が全体的に欠けている事にある。先進国は、CDMが効率的に目的にかなった方法で主要な目標をかなえられるように、CDMの管理業務に十分で安定した資金を確保するべきだ。

WWFは、CDMがまだ初歩的な段階にあるとしても、運営事務をプロフェッショナルにするときが来たと認識している。CDMには、数多くの機会と大きな期待がかかっている。プロフェッショナルで効率的な管理が最優先であるという強いメッセージを送ることで、その期待に答える必要がある。産業界に、いっそう気候変動緩和と持続的発展に寄与してもらうため、管理構造が明らかで効率的でプロフェッショナルでなければならない。WWFは、プロフェッショナルなチームを投入し、日々の運営に責任を持つCEO(最高運営責任者)をおくことが、現行のCDM機関を能率化するのにふさわしい手段であると信じる。

WWFは、CDMの運営事務局の、効率と能力を向上させるために能率化する努力が、決して追加性を弱めることになってはならないことを強調する。

結論

産業革命前に比べて世界平均気温上昇を2度未満に抑えるためには、2013年以降の取り組みについて決定するプロセスをはじめることが絶対に必要であることは明らかだ。この問題について明言を避けることは、主な地球システムを危険に陥れるだけではなく、ビジネス界にとって将来の計画と投資を考えるときに必要な確実性を与えないことになる。締約国はどういう約束にするか、ましてやそれぞれの国の公平な負担がどれだけかについて、今決める必要はない。しかし、これらの事柄についての交渉ははじめなければならない。この決定は、各国政府が最新の科学的知見に耳を傾け、多国間アプローチを責任を持って進める準備があることを、一般の人々と投資市場にはっきりと示すことになる。京都議定書は2013年以降の交渉の中心であり、あらゆる約束の議論の基盤とならなければならない。と同時に、発展途上国が求めている適応手段への資金供与や技術サポートをすることにも十分答えなければ、交渉の進展は望めないことは明らかである。

モントリオールは、気候物語のマイルストーンとなるべきである。各国政府はそれを確実にしなければならない。


関連情報

ついに京都議定書が動き出す!(2005年11月28日)

京都議定書が発効してはじめての会合(COP/MOP1)が、カナダのモントリオールでいよいよ始まりました。ポスト京都を決める大事な会合ということで、注目が高く、189カ国の政府代表団、国連関係者、報道関係者、NGOなどのオブザーバーなど、合わせて一万人が参加する大規模な会合となりました。

会議場に出入りするときのセキュリティチェックも厳重です。まるで空港みたいに、いちいち持ち物、コート、ポケットの中のものをすべてエックス線でチェック。人間も、セキュリティのゲートを通らされます。ノートパソコンを出せと言われるのはいいのですが、電源を入れてみせろとまで言われるのには驚きました。当然、長い列ができてしまいます。

やっと中に入ると、体育館が5個くらい入るような大きな会議場が2つ、それにグループ会合やイベントに使われるための会議場が数十箇所ある巨大な会場で、人がひしめき、さまざまな国の言葉が飛び交っています。

その大きな会議場で、本会議が毎日行なわれます。今回のCOP/MOP1会合の第一目的は、マラケシュ合意(*)の採択、そして、2008年から2012年までの温室効果ガス削減目標を定めた京都議定書の次、2013年以降について話し合う枠組みがスタートするかどうかです。

本会議のほかにも、毎日20件以上のイベントが、国連、NGO,研究団体などの主催で行なわれます。「京都メカニズムについての研究報告」といったようなお堅いものから、ホッキョクグマのパレードなどユーモラスなものまで、内容はさまざまです。

はじめは、どれに行こうかなと呑気に構えていた私ですが、すぐにまったく時間が無いことに気づきました。とにかくやることが多くて・・・。NGOってこんなに忙しいのね、というのが、初日を終えた私の感想です。

毎日朝7時半からWWFのチームミーティングがはじまり、すぐに本会議、その合間にWWFの主催するイベントがあり、自分が追いかけたい議題の情報交換もしなければなりません。お昼ごはんを食べる暇もなく、会場から会場へと走り、それでも間に合わない。あまりにも覚えることが多すぎて、何から質問してもいいかわからないと途方にくれてしまいました。

はじめて見る国際交渉の現場は、理論と駆け引きが渦巻いていて、その巨大な渦の中で、多くの国の欲と、そして真摯に明日の地球を考えようとする人の善意とがまざりあっています。

そしていよいよ最初の山場、マラケシュ合意を採択する日がやってきました。この日、遵守制度(京都議定書を守らせるためのしくみ)を除いて、マラケシュ合意が満場一致で拍手で採択されました。これでいよいよ名実ともに京都議定書が動き出したことになります。

ただひとつの懸念は、遵守がサウジアラビアの提案で採択できなかったこと。遵守についてはコンタクトグループというものが形成され、話し合いが続けられることになり、どうも決着は来週ぎりぎりまでもつれこみそうです。

しかし、とにもかくにも、ドイツのベルリンで開催された第1回気候変動枠組条約締約国会議から実に10年以上かかってやっと京都議定書が本格的に動き出した記念すべき日となったことだけは確かです。

あとは、無事に遵守制度が採択されて、議定書のさまざまなメカニズムがつつがなく機能すること、そして何より、2013年以降について話し合う枠組みが立ち上がることが一番肝心なところです。

*マラケシュ合意:4年前にモロッコのマラケシュで開かれた第7回気候変動枠組条約締約国会議(COP7)で決定された京都議定書の運用ルールのこと


「京都議定書」発効後はじめての締約国会議、モントリオールで始まる 2013年以降についての議論は今年から始めるべき

記者発表資料(2005年11月28日)

京都議定書発行後はじめてとなる締約国会議に集まる各国政府は、2013年以降に地球温暖化ガスの排出をさらに減少させる約束を話し合う交渉を始めるべきだと、WWF(世界自然保護基金)は訴える。

WWFは、気候変動はすでに各地に悪影響を及ぼしているが、その交渉には時間がかかると警告している。京都議定書のプロセスのひとつとして、交渉は今始められるべきであり、2008年にはこの交渉は終わっていなければならない。

「京都議定書には実際に交渉を今年始めることが規定されている。」とWWFの気候変動プログラム代表ーのジェニファー・モーガンは言う。「気候変動による人類と自然への最悪の影響を防ぐため、将来に向けてさらなる削減の約束や、行動を起こす交渉を始めるという公式な決定が必要だ」。

モントリオールでは、先進国はもっと大幅に排出量を削減するという強い意志を示し、そして経済発展著しい一部の発展途上国も将来に向けて公平な負担を負うという気持ちを表すことが大切だ。何が「公平な負担」であるかは、モントリオールで始め、2008年までに終了する交渉で議論されるべきことである。

気候変動枠組条約の第11回締約国会議及び京都議定書の第1回締約国会議(11月28日から12月9日までモントリオールで開催)に参加する各国政府代表団は、「排出量取引市場」は現在すでに実現しているビジネスであることを認識し、さらに将来にわたって継続するということを確実にしなければならない。

企業、銀行、ビジネス界はすでに排出量取引に取り組んでいるが、現在の削減目標は、2012年で終わってしまう。WWFは、これでは短すぎて投資決定の意欲をそぐと警告している。

「産業界が汚れた化石燃料からクリーンエネルギーに変換しようとするなら、2013年以降もCO2排出量がコストであるということが確実である必要がある。」とWWFヨーロピアンオフィスの気候変動政策部長、ステファン・シンガーは言う。「ビジネス界と市場にとっては、将来どうなるかわからないというのが最も避けたいことだ。現在の将来に対する曖昧さは、誰にとってもいいことはない。」

WWFは、モントリオールに集まる各国政府は、すべての決定が採択されて京都議定書が機能すること、そしてすでに発生している気候変動の影響に適応するための資金を発展途上国に供与することを確実にするべきだと主張する。

京都議定書を機能させる決定はすべて交渉済みだが、モントリオールの京都議定書第1回締約国会合で正式に採択されなければならない。加えて、すでに発生している悪影響に適応し将来に備えるために、発展途上国へ資金援助すると約束した先進国は、それを実行するべきである。

「各国政府は気候変動に最も脆弱な発展途上国に対して資金援助の約束を果たすべきだ。」とジェニファー・モーガンは言う。「約束が果たされてはじめて先進国は、鍵となる発展途上国の信用を得ることができる。」


温暖化に関する「世界の最先端」が集まる 2005年12月5日

COP/MOP1には、温暖化に関連する仕事をしている人が、世界中から約1万人も集まって来ています。その人たちが、会議と会議の間には、会場内をうろうろしているわけですから、環境をテーマにしている企業や団体にとっては、自分たちの活動や主張についてアピールする絶好のチャンスでもあるのです。

そのため、会場には、さまざまな環境関連の国際機関、環境技術を売る企業、金融機関などが、たくさんの展示ブースを出しています。また、それぞれがいろいろなイベントを開催しています。これらは、本会議とは別に行われるものとして、「サイドイベント」と総称されています。

こうしたサイドイベントは、「排出量取引」「気候変動と早期予報システム」「世界銀行の環境ファイナンス」など非常に専門的なものだけでも、一日に20件以上も開催されます。それに加えて、政府やNGOが行う記者会見が10件くらいあります。さらに、主にNGOが行う、たとえば「北極クマによるパーフォマンス」などのイベントを合わせると、その数、一日に40件以上!

自分が担当している問題にかかわりのあるサイドイベントには、なるべく参加するようにしているのですが、それ以外にも魅力的なものがいっぱい!毎朝、その日のスケジュールが配られるのですが、なんとそこには15ページにもわたってぎっしりと、さまざまなイベントや会議の予定が並んでいます。

COP/MOPの会場は、温暖化の世界に興味を持つ人にとっては、最高の場所といえるでしょう!でも残念ながら、サイドイベントに参加している時間が、なかなかとれないのです。これが国際会議の最中でなければ絶対に行くのに~~!!!と悔しい思いをしながら、あきらめてばかりです。

とにかく、温暖化の国際交渉の真っ只中にいる、ということはもちろん、温暖化に関連する世界最先端の技術、研究、ビジネス、金融に触れられるというのも、COP/MOP会議のすごさのひとつなんですね・・・・などとカッコいいことを言っていますが、わがWWFでは、今日は「ホッキョクグマが温暖化のせいで、ホッケーができなくなって困っている!」というパフォーマンスを披露して、マスコミの注目を集めました。ホッケーは、会議が開かれているカナダの人気スポーツ。これに、カナダにすむホッキョクグマの個体群が、すでに温暖化の影響を受け始めていることを引っかけたシナリオです。

ホッキョクグマの着ぐるみを着て、パフォーマンスするのは、もちろん世界から集まったWWFスタッフです。普段は、温暖化に関係する科学的な調査研究をして論文を書いていたり、温暖化防止のためにどんな政策をとるべきか、政府の担当者に提言したりしている人たちです。そんな彼らが、パフォーマンス前日に、真剣にホッキョクグマの動きのリハーサルをしている様子は、なんとなくほのぼのとしていてユーモラスです。私もそのうち、ホッキョクグマかパンダになって、活躍したいものです。

パフォーマンスが終われば、再び会議場でこみいった議題を追いかけ、政府関係者にWWFの見解を伝えようと奮闘。どうやらNGOというのは、一方で専門的な知識を身につけて政府関係者相手にロビー活動をしながら、一方で着ぐるみを着て楽しいパフォーマンスを演じてみせる、という二刀流が求められる職場なのね・・・・と、おぼろげながらわかりかけてきた私です。


「本日の化石賞」! 2005年12月6日

会議もいよいよ中盤を迎え、舞台は本会議から、コンタクトグループ(条約交渉上の争点について重点的に話し合う問題別の分科会)や、非公式協議に移りました。つまり、全体的な話から、各論に入ってきたわけです。

たとえば、発展途上国から熱い期待を集めているCDM(先進国が、途上国で温室効果ガス削減プロジェクトを行う)など「京都メカニズム」のルールづくり。あるいは、京都議定書を守るようにするためのしくみである遵守制度について。さらに「ポスト京都」、つまり2013年以降の目標をどう決めるかに関する会合などで、激しい議論が繰り広げられています。

そんな中、自国の利益を強硬に主張するあまり、本来の目的である温室効果ガスの排出量削減へ向けた国際交渉を妨げてしまう国も出てきます。こうした国に対して、NGOは、さまざまな形で働きかけを行います。もちろん、NGO側の主張や、それを裏付ける資料などを手渡したり、メディアに向けて発表したりという正攻法が多いのですが、ときには、パフォーマンス的な手法を使うこともあります。その一つが「本日の化石賞を授与する」というものです。

これは、会議中、毎日行われているものです。世界各国のNGOが集まって、その日、いちばん"悪い"行いをした国を投票で決め、一位、二位、三位を表彰するのです。

会議3日目にして、日本は、「本日の化石賞」の第3位に輝いてしまいました。議定書3条9項という、2013年以降の取り組みを話す議論の中で、「すべての先進国が取り組むのであれば、削減の努力を惜しまない」と発言したことがポイント(!?)となりました。つまり、それは暗にアメリカが参加しないと努力しないということか!と判断されたことによる受賞でした。

そして翌4日目にはなんと、みごと不名誉な一位を受賞。それは、森林吸収量(森林がCO2を吸収する分。CO2の削減量としてカウントすること)をめぐる議論に関してのことでした。

2001年の第6回締約国会議再開会合で、日本にだけ特別に過大な吸収量が与えられたのですが、その報告方法について、この日、日本が行なった提案が、すべての国に適用できるような最低限の基準だったためです。

もし、これが適用されると、すべての国が日本のような特別待遇の吸収量を報告できるようになります。これでは、何のために日本に特別待遇を与えたのか、わからなくなってしまいますし、実際の吸収量よりも、ずっと多くの吸収量が報告されるようになってしまいます。

毎日6時に、会場の一角で、たくさんのジャーナリストや観客が見つめる中、おもしろおかしく趣向をこらして、NGOのメンバーが「本日の化石賞」を発表します。これから、各国の首相や大臣など、閣僚級の人々が集まる2週目に入ると、会議場の中も人がさらに増えてきます。この化石賞の発表も、日を追うごとに観客が増えています。

毎日さまざまな交渉や駆け引きが行なわれる中、情報を求めてNGOは走り回ります。また、会場のあちこちで、グループごとに声をひそめて打ち合わせする姿が見られます。情報は絶対に秘密とされ、少しでも違うメンバーが近づいてくると、さっと追い払います。そんなとき、"グループ"に属している嬉しさを妙に感じたりして。

もちろん真剣勝負の国際交渉の舞台裏なのですが、どこか学生時代の趣味のサークルのような気もしてしまう私です。趣味を同じくする仲間が大勢集まって、身内ならではの情報交換をして、戦術を練って、それぞれの部隊に散っていく。非常に特殊な知識を高度に持ったものが、新人を教えながら一緒に戦っていく。

結局、ハイレベルな国際交渉から、趣味のサークルまで、人間が集まるところ、結局は同じことが行なわれているのかもしれません。いや、サル山でも一緒かな?


CDM(クリーン開発メカニズム)に関する、本日までの動き 2005年12月6日

CDMは、京都議定書目標達成に使える3つの柔軟性メカニズムの一つで、途上国において排出削減プロジェクトを行い、削減量をクレジットとして、先進国の排出量に当てることができる、という制度である。目的としては、(1)ホスト国の持続可能な発展に寄与する(2)先進国の削減目標を助ける、の二つがある。

途上国は削減目標を持っていないので、CDMのプロジェクトとして認められる(=そのプロジェクトからクレジットが得られる)ためには、CDMがなければそのプロジェクトは成立し得ないと言う厳格な追加性の証明をしなければならない。これはそもそもCDMが、削減目標のないところで行われるプロジェクトから出てくるクレジットを、先進国の排出に当てるため、うまくいっても、排出量はプラスマイナスゼロ、であり、少しでも追加性がなければ、先進国の排出を許すクレジットが大量に出回り、地球全体として、排出量が増えてしまうことになるからである。そのために厳しいルールが設けられている。

しかし、CDMの現状については、様々な不満が出てきている。カナダや日本など、CDMからのクレジットを大量に、京都議定書目標達成に使うことを当てにしている国々やその企業は、このままでは十分にCDMからのクレジットを獲得できないという不満がある。また、アフリカ諸国などは、多くのプロジェクトが特定の国々に集中しており、地理的な意味での衡平性が保たれていないという不満がある。ラテン・アメリカ諸国は、自分たちが期待を寄せている運輸部門でのプロジェクトの進展が少ないことにも不満を抱いている。また、一部の先進国や途上国は、CDM理事会によるプロジェクト承認の審査のプロセスに時間やコストがかかりすぎることに不満を持っている。
そのためCDMの「改革」は、今回のCOP11・COP/MOP1の一つの大きな議題となっている。

交渉の流れ

COP/MOPの全体会議で、理事会からの報告がなされたのち、コンタクト・グループが結成された(CG)。CGの最初の会合は木曜日に開かれたが、それ以降は月曜の晩まで非公式会合という形で、密室の中で交渉は進められた。

月曜日の晩に再びオープンな形で開かれたコンタクト・グループでは、共同議長が用意したCOP/MOP決定のドラフト文書が提示されたが、多くの箇所がいまだ括弧(=合意できていない)付きであった。本日、再び開催されている非公式会合の中で決着を目指している。

▼問題と各国の立場

最初のCG会合において、5つの問題のグループが議題として挙げられ、それぞれのグループの中に含まれる争点の数は約25にものぼった。5つのグループとは、CDM一般に関する争点(2013年以降に関する確実性など)、CDMのガバナンス(理事会や理事会をサポートする機構)、方法論(統合方法論の扱いなど)、幅広い参加(プロジェクトの地理的分布の不平等の問題なと)、理事会の運営上の資金(プロジェクトの「利益の一部」(shareofproceeds))である。

その後の非公式会合の中でこれらについての議論がされ、月曜日にはさらに5つのサブ・グループ(ただし区分けは上記とは違う)に分かれての議論がされた。

月曜日の晩に開かれた公開のCG会合では、共同議長によるCOP/MOP決定に関するドラフトが示された。既に述べたように、このドラフトもいまだ括弧が多く、合意には至っていない。

主な国々・グループの主張について見てみると、まず、カナダは、当初は追加性が自動的に証明されているとみる技術のリストについての提案を考えていたが、あまり各国からの受けがよくなかったために、今現在ではそれほど強く押していない。また、今回1つの争点となっているCarbonCaptureStorage(炭素回収貯留技術)に関するプロジェクトをCDMとして認めるかどうかという点については、比較的前向きな姿勢を見せている。さらに、政策/プログラムに基づいたCDMを認めるかどうかという点については、政策については今回は扱わず、プログラムについては認めるという方向で進めたいようである。

日本は、「いかなる技術も故意に差別すべきではない」という立場から、CCSの技術についても、方法論ベースで議論をすべきであり、技術そのものの是非をここで決めるべきではないとしている。

中南米諸国の中でも特にチリやメキシコなどは、「プログラム」として進めるものもCDMとして認められるべきであると主張した。CCSについては、排出「削減」技術ではなく、「除去」(removal)技術であり、現行のCDMの中では認められるべきではないと主張している。

アフリカ諸国は、CDMのプロジェクトが特定の途上国に集中しており、アフリカ諸国はほとんどその恩恵を受けていないということで、地理的なプロジェクトの分布の不平等性や、それを改善するためのキャパシティ・ビルディングの必要性を主張した。

数ある争点の中でも、NGOの観点から1つの鍵となる争点の1つに「追加性」があるが、現在、この問題に関しては追加性を証明するための「ツール」の扱いが問題になっている。このツールは、追加性証明を助けるためにCDM理事会が準備したものであり、使用の有無は自由だが、このツールを使ったプロジェクトの方が通りやすいことから、使用義務があるかのように見えていることに対する不満が、追加性を緩めたいと願っている国・団体からはあがっている。

現在は、このツールの簡素化、または代替案の提出を可能にするためのプロセス作りが提案されている。

しかし、NGOの観点からすれば、CDMに関して問題があるとすれば、追加性に問題があるわけではない。理事会およびその下部機関の作業の効率化やそれを可能にするための資金の不足にあり、また、まだ制度として効率的に機能するまでには実施を通じて学習をしていかなければならないこともある。したがって、追加性を「問題」視し、ここに「改善」の議論を集中させるのは現状の改善にはつながらないと考えられる。

資金については、現に、2005年が終わろうとするつい最近まで、CDM理事会は2005年分の資金すら確保できずにいた。CDM理事会のための予算というのは、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)全体の予算から割り当てられるものの他には、各国政府からの自主的な拠出による部分が大部分を占める。そして、日本を含む一部の先進国はこれまで資金を拠出してこなかった。

プロジェクトからのCERの「利益の一部」(ShareofProceeds)によって、2008年以降は資金が賄われるかもしれないという予測もあるが、少なくともそれまでは引き続き各国からの拠出に頼らなければならないため、本当に「改革」が必要であれば、十分な資金を提供していかなければならない。
現在行われている非公式会合で決着がつけば、COP/MOPの会議での採択になる。

今回の会議では、もう1つ、別の議題の下で、HCFC22の新規工場においてHFC23破壊プロジェクトを実施するのをCDMとして認めるかどうかということも話し合われた。

HCFC22は、オゾン層破壊物質であり、途上国では2016年に2015年のレベルでその使用が凍結される予定となっている。しかし、逆に言えば、それまでは生産は増やすことはできる。そのHCFC22の副産物として、HFC23があるが、こちらはオゾン層は破壊しないものの、強力な温室効果ガスであり、京都議定書の下での削減対象となっている。

したがって、これを破壊するプロジェクトは、CDMのプロジェクトして成り立つのだが、問題はそのクレジットの売却益が大きいため、HCFC22の生産をあえて増やすというインセンティブが生じる。こうした歪みがあるため、この議題に関する議論の中では、ラテン・アメリカ諸国などは、こうしたプロジェクトは認められるべきではないと主張をしていた。これに対し、中国は、そうした歪みには国内的に対応し、基本的には認める方向で、カナダ・日本・EUは、そうした歪んだインセンティブを防ぐことができれば、認めてもよいのではないかということで、条件についての議論をしていた。

しかし、今回の会議では決着はつかず、次回のCOP/MOP2まで持ち越されることに決まった。

温室効果ガスを減らすためのプロジェクトをやることによって、オゾン層破壊物質が増えるような自体は避けられなければならず、本来的にはそのようなプロジェクトが認められるのはおかしい。そのため、ひとまず今回、認められなかったこと自体は評価できるが、来年またこの議題については話し合われることになる。


国際政治が動くとき 2005年12月7日

感動しました!!!2005年12月7日、ついに京都議定書が、8年の歳月を経て、名実ともに立ち上がったのです。それは、ずーっともめ続けてきていた「遵守制度」、つまり、京都議定書の削減義務に法的拘束力を持たせるかどうか、というしくみに、ようやく決着がついたことで訪れた瞬間でした。

京都議定書の内容は、2001年にモロッコのマラケシュで開かれた第7回締約国会議で決定されました。そのため、「マラケシュ合意」と呼ばれています。今回の会議3日目に、そのマラケシュ合意の採択が行われたのですが、このとき、「遵守」については採択が出来ず、積み残しとなっていました。実はこの「遵守」、マラケシュでも日本が法的拘束力を持たせることに強硬に反対したため、モントリオールまで先延ばしされていたのです。
その「遵守」が、いろいろすったもんだの末、すべての締約国によって無事「オーケーサイン」が出て、これでとうとう京都議定書の19のすべての議題が採択され、京都議定書が正式に動き始めることになったわけです!

日本のNGOメンバーも、10人くらいモントリオールに来ているのですが、手をとりあって喜んでしまいました。うーっ、これが国際政治が動く瞬間なのね~~~。つい2週間前までは、「ジュンシュって何?」って状態だった私も、こちらに来てから徹夜状態で、必死に勉強しつつ、刻々と動く交渉を、毎日やきもきして追っかけているうちに、すっかりはまり込んでしまいました。

遵守をめぐる交渉には、ほんとうに私たちも振り回されました。法的拘束力は、あったほうがいいに決まっています。そのほうが先進国の削減義務が強まるわけですから。でも、そこには、ひとつ問題がありました。
実は、京都議定書の中には、法的拘束力を持たせるには、議定書の改訂が必要という項目があるのです。これは、日本などの主張で入ってしまったもの。議定書の改定!もし、その手続きをするとなると、京都議定書の締約国の4分の3が賛成するまで延々議論をして、それからもう一度、改訂された議定書を批准して・・・・なんて、途方もない時間がかかってしまうのは明らかです。

それでは、せっかくの京都議定書が、いつまでたっても動き出せなくなってしまう。それなら今回は、改訂を経てまで法的拘束力にこだわらずに、拘束力のない遵守制度を採択するという形でいいじゃないか、とにかく京都議定書を動き出せるようにすることを優先しよう。NGOだけでなく、日本政府やEUの政府代表なども、そうした立場をとりました。
今までの国際的な環境条約は、そうした採択の形で十分に機能しているし、京都議定書には、他にも、結果的に遵守せざるを得なくなる条項があるので、このままでも効果はある。そういう意見が大勢だったのです。
ところがここで、またまた大問題発生!サウジアラビアが、「先進国の削減義務をもっと強めるため、法的拘束力を持たせるべく、京都議定書を改訂しよう」という申し入れを、きちっと国連の規則にのっとって、会議の始まる6ヵ月前に提出していたのです。

ちなみにサウジアラビアは、発展途上国のカテゴリーに入っているので、温室効果ガスの削減義務は課せられていません。しかも、サウジは以前から、先進国で温暖化対策が進むと石油が売れなくなることを嫌って、再三にわたって、条約交渉をブロックしてきた経緯があります。
つまり今回の提案も、一見、正論に見えますが、単に「京都議定書を遅らせてやるぞ、いやならこれこれと引き換えにどうだ?」という駆け引き材料以外の、なにものでもなかったのでした。

サウジ政府は、京都議定書の改訂を強硬に主張。そこに今度は日本政府が、改訂は絶対にだめだとかみつき、議論が紛糾しはじめたのです。
サウジがわざと交渉をブロックしていることは、みんなわかっているものの、そこは国同士の駆け引き。それぞれの国が、自国の利益をかけて、さまざまな主張を繰り広げます。
特に途上国側は、先進国の削減義務を強めたいので、法的拘束力にこだわりたい意向がある反面、京都議定書が動き出せば、先進国による途上国への技術供与などが始まるので、それを早めたいとの思いもあり、複雑な思惑で態度をころころ変え、私たちNGOもはらはらさせられました。
WWFなどNGOでは、例の「本日の化石賞」をサウジアラビアに贈ったり、いろいろとロビー活動を繰り広げました。

結局、遵守については、議長の提案で、とても政治的な決着をみました。京都議定書の「改訂」に大反対の日本に対しては、「まず採択をしよう。「改訂」の話し合いも始めるけれど、それは改訂することを前提とするのではなく、改訂するかどうかを2007年の第3回京都議定書締約国会合までに話し合うというのでどうだ?」といい、そしてサウジアラビアや途上国には、「すぐに京都議定書を動かすためにはまず採択、それから改訂の話し合いを、ちゃんと期限を決めて始めるということで納得できないか?」という形をとったのです。なんてクレバー。(早い話が、単に改訂の議論を先送りしただけですけどね。)

この提案に、サウジを除いたすべての国は納得。サウジだけは最後まで抵抗して、採択という言葉を、英語で「adopt the decision」ではなく「approve」にしろ、なんて漫画みたいな主張を繰り返し、真夜中まで考えるなんて駄々をこねていましたが、これも結局、議長提案で、「adopt and approve」なんていう、わけのわからん解決法でやっと納得しました。
そして7日の午後4時半、議長が「これで異議あるものはいないですね?」と正式に槌を振り下ろして、めでたく決着となったわけです。はあ~~~。

こうして決着がついてからふり返ると、まるで漫画みたいだったな~と思う場面もありました。でもよかった。よかった。まだポスト京都、つまり、京都議定書が対象としている2008年~2012年以降をどうするか、の大切な話し合いが残っているけど、ひとつ懸案だった遵守制度は、これで決着したのです。あー、なんか感動!


"ストップ温暖化"へ、雰囲気を盛り上げる! 2005年12月8日

会議中には、地元の若者やNGOによる様々なパフォーマンスが繰り広げられていました。もちろんこれは会議関係者、特に政府代表団に向けてのアピール行動。会議場には、いつもホッキョクグマが歩いていましたし、若者たちによるシュプレヒコールが響いていました。

今回の最大のイベントは、会期中の12月3日にモントリオール市内で行われたパレード。イギリス、オーストラリアなど世界各国で同時に行われたこのパレード、会議の開かれているお膝元のモントリオールでは、4万人もの人が参加して、手に手に「温暖化をとめよう」「今すぐ行動するべき」などと書かれたプラカードをかかげて、市内の繁華街を練り歩きました。

幸いに快晴に恵まれましたが、寒いのなんのって、氷点下16度の世界。WWFでは、各国から参加している気候変動担当スタッフにボランティアが加わって、パンダ2頭、ホッキョクグマ7頭が出動! "No more hot air.Save the Arctic. Save the world."とかかれた大きな垂れ幕の前で、ひとしきりアピールをしました。この中には、とうとうシロクマ姿になった私もいます。

ロンドンでは10万人、オーストラリアでは15万人が参加したパレード。モントリオールでは、会議の行われている会場の前に特設ステージが設けられ、地元アーティストのコンサートや、NGO代表者による演説が行われました。

われらがWWFの温暖化対策チームのリーダー、ジェニファー・モーガンも登場、ステージの後ろでホッキョクグマたちがクマダンスを披露する中、(私も訓練のかいあって(?)うまくなったんだよ!)集まった人に温暖化対策を今すぐ始めることの大切さを訴えました。最後には、会議場にいる各国政府代表団に届くようにと、パレードに集まった全員で大きな声をあげ、全員の吐くまっ白い息がひとつにあわさるとともに、人々の気持ちがまとまった感動的な瞬間となりました。

パレードには、若者の姿が目立ちましたが、赤ちゃん連れの家族、お年を召したご夫婦なども数多く参加していて、温暖化に関する世界の関心の高さを感じるひとときでもありました。

さてそのほかに印象に残ったイベントとしては、日本の"美"環境大臣、小池百合子さんの京都メーター挑戦がありました。会議2週目、各国の大臣が会議場に乗り込んでくる山場に、WWFでは、それぞれの大臣がどれだけ京都議定書に取り組む意欲があるかを測るというアトラクション「京都メーター」を用意しました。

小池環境相は、麗しいスーツ姿で、あくまでも優雅にハンマーを振り下ろしましたが、メーターは見事、上まで上がり、日本の貢献度への期待は、否応なく盛り上がったのでした! 各国大臣のほとんどが挑戦してくれたこの京都メーター、同じく女性の、ノルゥエーの環境大臣は、その場でジャケットを脱いでWWFのTシャツを着てみせるなどノリノリで、険しい会議の合間に、取材するマスコミや関係者の間に楽しい笑いが巻き起こっていました。

WWFがこうしたイベントを繰り広げるのは、温暖化防止の国際会議が開かれていることをわかりやすく人々にアピールして、「世界が協力して温暖化防止に取り組もう!」というメッセージを送るためです。また各国の利害がぶつかり合う険悪なムードを和らげ、少しでも積極的に環境のことを考える方向に向かってほしいという願いも、こめられています。 

こうしたWWFの思いを知ってか知らずか、このあと会議は、(ほぼ毎回のお約束となりつつある)地獄の徹夜交渉へと、突入していったのです・・・・。


最大の焦点、2013年以降の取り組みの話を始められるか 2005年12月8日

12月7日、各国の大臣クラスが集まる閣僚級会談が始まり、会議はいよいよ山場に差し掛かってきた。そもそも今回の会議の最大の焦点は、京都議定書で定められている、第一約束期間(2008-2012年)以降の取り組みの話を始められるかどうかにある。

議定書3条9項は、第一約束期間の終わる7年前にその話し合いを始めるよう定めている。また9条においては、京都議定書や気候変動枠組条約全体のレビューを行うよう、定めており、これは、京都議定書を批准していないアメリカ、京都議定書で削減約束をしていない途上国の参加方法を議論する入り口であるため、重要である。そこでWWFは、当会議の目的として、話し合いのベースは3条9項におき、9条にも言及することを求めていた。さらに、3条9項の中では、「話し合いを始めるプロセスの合意」「話し合いを終える期限」、が含まれていることを、必須としてきた。

実際に始まった交渉は、当初は、条約の下と、京都議定書の下のツー・トラックで行われていたが、12月8日時点で、条約、3条9項、9条と3つに分けて行われ始めた。というのも、3条9項は、先進国の取り組みの見直しとみなされ、そこに9条への言及を入れることに、インド、サウジアラビアなどの途上国が強く反対したからだ。そこで、9条については、別のテキストを作ることになったのである。

条約のテキストには、気候変動に対する長期的な取り組みについての議論を始めることが書かれ、その内容としては、持続的な方法による開発目標を進める、適応策、技術の可能性を実現する、市場の可能性を実現する、の4点があげられた。しかし、アメリカが反対し、会議に出てこない場面すらある。その他、インドは「議論」の中味を決めるべきだと言い、その他途上国は、「新しいコミットメント(約束)はない」という文を入れることを主張している。

3条9項については、話し合いを始めるプロセスとして「アドホック・グループ」を結成し、話し合いの期限については、「第一約束期間と第2約束期間の間にギャップを生じさせないようにすること」、という形になった。しかし新たなグループを結成し、プロセスを動かすための費用をどうするのか、という費用問題で、議論が紛糾したり、それよりも通常開かれる補助機関会合の中にワーキンググループを作ったほうがいいのではないか、などの議論がある。また、「ギャップ」を生じさせない、などというあいまいな言い方ではなく、きちんとした期限の年を入れるべきではないか、という議論もある。期限については、日本は強硬に反対している。

9条については、レビューを始める年が2006年と定められているので、今回の会議で決めることはない、と途上国が強行に反対している。しかし実際には、レビューをするための準備期間が必要なので、今回の会議で、何らかの決定を見なくてはならない。
これら3つのテキストをめぐり、夜を徹した交渉が行われそうである。WWFチームは、ナイトシフトを決め、終夜を通して、交渉を見張ることになった。

気候変動枠組条約の締約国会議は、いつも最後は徹夜になる。あーあ。どうしてもっと簡単に議論をまとめられないのだろうか。世界の合意を取り付けるというのは、かくも大変な作業だということを毎回痛感させられる。しかも、代表団が疲れきって思考能力が停止したころにやっと合意が可能になるという極めて人間らしい世界でもあるのだ。


ついに歴史的な合意が成立! 2005年12月11日

徹夜の交渉が2晩続いたあと、12月10日の朝、6時ごろ、ようやくすべての問題に決着がつき、会議の閉会が宣言された。

最後までもめたのは、3条9項に関するテキストであった。9日の深夜、つまり10日の朝2時半に全体会議がようやく始まった。しかし再びロシアが、議題にそぐわない提案を行い始め、会議が紛糾した。3条9項のテキストの中に、自主的な取り組みに関する言及がないので、受け入れられないと言い出したのだ。G77(途上国)を代表するジャマイカは、すぐに、3条9項は、付属書B国の、削減義務についての条項なので、自主的取り組みについてここで言及するのは、そぐわない。この件についてはすでに長い議論を行い、括弧に入っていた文書もすべて妥協と言う形で合意したはずだ。ここで皆で合意をして、世界に我々が、気候変動への取り組みの実施に真剣であることを示そうではないか、と発言した。その後、EU、メキシコ、ドイツ、スイス、ツバルなどが次々とこの発言を支持し、ロシアに妥協を求め、このプロセスを止めないで欲しい、と頼んだ。日本の小池大臣も、ロシアが京都議定書を批准して発効するのに貢献したように、今回も、議長提案を受け入れて欲しい、と発言した。フランスも、これは3条9項で話すべきことではなく、9条で扱うべき問題である、と主張し、ここで合意ができないなら、一般の人々、ビジネス界、企業、などをがっかりさせることになるので、それは避けたい、と述べた。

それでもロシアは引き下がらず、議長に自主的取り組みの提案を検討する義務を課す決定を行うべきだと求めたため、ついにサウジアラビアが発言し、議長が、新たな文書を入れるとしても、今までの議長提案の線に沿ったものでないと受け入れられない。ロシアの提案は受け入れられない、と強硬な態度を表明した。私たちは危機感をいっそう募らせた。

議長はここでいったん休憩を宣言し、議論は再び、非公式会合に入った。その後1時間ほどたってから、全体会合が再開され、ロシアの提案は、COP/MOP2で検討する、と言う文言を入れることで妥協が成立し、めでたく、閉会となったのであった。

その他、重要な9条は、来年のCOPMOP2で行われるレビューのためのプロセスを始めることとなり、9月1日までに情報提供する。また条約の方のテキストにも、長期的アクションのためのダイアログを始める、ということでアメリカも妥協し、決着を見た。

会場にいた、大勢の人たちは立ち上がって拍手をし、抱き合って喜んだ。ここモントリオールで、気候変動に対する歴史的な合意が成り立ったのだ。会場には、感動の渦が巻き起こった。この合意は、マラケシュに続き、再び、世界の国々は、アメリカが参加しなくても、京都議定書の下で気候変動対策を前に進めたいと考えているという意思表明をしたのである。それは京都議定書のルールがすべて、採択され、いよいよ全面的に動き出せることになった、という大きな成果とともに、その先の話もきちんと行うのだ、ということが示されたことで、いっそう強固なものとなった。

モントリオールでの合意は、「モントリオール・アクション・プラン(MAP)」と呼ばれ、「3つの'I'」(Implementation=京都議定書の実施、Improvement=CDMなど京都議定書の改革、Innovation=将来への取り組みの道を開く)に基づき前進することが保証された。これは、2013年以降の枠組みは京都議定書がベースになって行われることを示唆し、それはつまり、京都議定書が運用されることによって起こされる炭素市場(CDM、JI、排出量取引など)が長期的に続くというシグナルを、ビジネス界、投資市場へ向けて発信されたことを意味する。また、将来は、アメリカや途上国を含め、より広い国々が削減目標を掲げる参加の道を切り開いたことをも意味する。これで、ようやくグローバルな長期的取り組みへの道筋が見えてきた。これは、気候変動交渉の中では、歴史的な足跡となるだろう。

この大きな成果を生み出せたことは、世界各国の強い意思もさることながら、この会議で成果を生むことに強い意欲を持って取り組んだ、会議開催国のカナダ政府・国民の力も大きかったといえよう。会議を誘致することを決めた後、カナダ政府は、積極的に各国を訪問し、この会議に各国はどう臨もうとしているのか、何を成果と考えているのかをヒアリングして協議してきた。その際には、政府だけでなく、各国のNGOとの会合も必ずセットで行ってきた。また事前に閣僚級会合を開いたり、早くから「3つの'I'」という目標を自ら掲げ、それに対する協力を求めてきた。こうした地道な努力が、今回の大きな成果を生んだといえる。

日本政府は、前半に3回も「化石賞」をもらい、さらに、3条9項の議論に期限をつけることに強硬に反対したり、と最後までハラハラさせられたが、アメリカが交渉の場から突然席を立って退出してしまった後も、そのことによって、京都議定書の交渉を進める、という日本の立場が揺らぐことはなかった。また小池大臣のスピーチのなかで、今まで繰り返してきた「すべての国の参加」という言い方を、少し具体的に、「先進国はすぐに行動を行い」「途上国は徐々にできることから始める」と分けた言い方に変えたことは、途上国にとっても、良いメッセージとなったと思われる。さらに、最後の全体会議の中で、ロシアの提案に対し、各国が反対し、ロシアに合意を求めたときも、そうした線に沿った発言を、小池大臣がきちんと行ったことは評価に値する。

今回のモントリオール会議の結果が、日本国内における「将来枠組み」の話を、京都議定書をベースとした長期的な取り組みの方向への議論へと促すものとなることを期待する。また、日本国として、そうした方向性をここモントリオールの現場で、示せたことで、この議論に関する基盤が日本国内にでき、これからの話はここモントリオールの合意の上に積み重ねていくことによって、国際社会におけるリーダーシップを発揮させられる可能性が出てきたのではないかと思える。私たちは、日本政府の今後の動きに期待しながら、注視していくつもりである。


温暖化防止への新たな話し合いが、世界に希望の灯をともす

記者発表資料 2005年12月12日

モントリオールで行われていた気候変動枠組条約第11回締約国会合(COP1)と京都議定書第一回締約国会合(COP/MOP1)は、京都議定書の運用ルールを決めるマラケシュ合意をすべて採択することに成功し、あわせて、2013年以降の削減目標への確固とした足固めを整える合意に達したと、世界自然保護基金(WWF)は発表した。

「最後は、二酸化炭素の将来の削減について、今話し合いをはじめなければならないという"常識"が勝った。」とWWFの気候変動プログラムのディレクター、ジェニファー・モーガンは言う。「京都議定書こそ気候変動に取り組む唯一の方法であり、モントリオールでの会合は、そのプロセスを大きく前進させることに成功した。」

モントリオールの気候変動会議に参加した大臣たちは、12月10日の朝までもつれこんだ話し合いで、WWFが推進してきたより大きな削減を目指す合意に達した。また将来に向けてより広い発展途上国の参加を促す道筋も開いた。

今回のモントリオール会議は、世界中から気候変動への取り組みの支持が集まった。これは今回の会議が、今までの中で最大級の一万人の参加者を集めたことでも明らかだ。世界中から市長など地方自治体、青年組織、ビジネス界、それに議員たちが大挙して押し寄せ、会議の行方を見守った。会議の終盤で展開されたアメリカ、そしてロシアによる合意への妨害行動は、日本、カナダ、EUなど主だった先進国の連合で乗り切ることができた。

ジェニファー・モーガンは次のように述べた。「最初はアメリカ政権から、そして後半にはロシアからの大きな圧力がかかったにもかかわらず、地球温暖化の進行をくいとめることに、地球は明らかに勝利した。気候変動は現実であり、解決策はそこにある。今こそ世界が結束した行動をとるべきときだ。」

また、WWFカナダ・地球規模での危機に関するプログラムの代表であるジュリア・ラングラーは次のように述べた。「温暖化会議のホストを成功裡に務め終えた今、カナダは、このモントリオールでの勢いが地球の気候に対して現実の結果をもたらすように、京都プロセスを維持するものとしての多大な努力を続けていかなければならない。」

京都議定書締約国は、目標達成へ向けての努力をさらに倍増させなければならない。157ヶ国が議定書に批准をしたことをうけ、カーボン市場は現実のものとなった。

「より多くの企業が本当の意味での気候変動防止への取組へ貢献しはじめており、世界が進む方向に遅れ組を巻き込む圧力が高まっている。モントリオールにおける前進の決定は、今現在炭素排出を減らすべく行動をしている国々、企業、アメリカの都市の努力を力づける」とジェニファー・モーガンは述べている。


CDM(クリーン開発メカニズム)「改革」の顛末 2006年2月3日

2005年12月、カナダで開かれたCOP/MOP1(京都議定書第1回締約国会合)では、CDM(クリーン開発メカニズム)が重要なテーマの一つに挙げられていました。WWFは、CDMが実際の温暖化防止に役立つものになるよう、また、先進国のCO2排出削減の「抜け道」にならないように、COP/MOP1の会議で問題点の指摘や提言を行ない、今回その詳細をまとめ発表しました。

COP/MOPの重要課題

2005年11月28日~12月10日、カナダのモントリオールで、COP/MOP1(京都議定書第1回締約国会合)が開催されました。
この会議で話し合われた重要なテーマの一つに、CDM(クリーン開発メカニズム)がありました。CDMとは、京都議定書で取り決められたルールの一つで、先進国が途上国で風力発電所を建設したり、先端の省エネ技術を移転する、といった事業を行なうというものです。これによって、途上国は二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないエネルギー開発の技術を手に入れることができ、一方の先進国は、事業を実施したことで削減された途上国からのCO2の排出分を、自国の削減義務から引くことができます。

これはたとえば、日本のように6%の削減義務を負った先進国の企業が、有効なCDMをたくさん行なうことで、途上国からの排出削減に貢献すると、事実上、その国の6%の削減義務が5%や4%に下がる、ということを意味しています。

CDMの問題点

しかし、適切に実施されなければ、これは先進国が積極的に国内で排出削減の義務を果たさなくてもよい、という結果につながりかねません。すでに予定されていたODAのような途上国支援や民間事業に、CDMという言葉をかぶせ、新しく行なうように見せかける、というような事が起きる可能性もあります。

すでにCDMは、モロッコのマラケシュで開かれた会議(COP7)での合意により、2001年から事実上スタートしていますが、実施されるプロジェクトのタイプや地域が集中してしまっている、といった問題が起き始めていました。
また、CDMプロジェクトは、CDM理事会(CDMを運営する機関)によって認証されなければ、CDMとして認められませんが、この認証にも時間がかかりすぎる、といった点も指摘されています。

検討の詳細を報告

こうした背景を受け、今回の会議ではCDMの「改革」が話題になっていました。
WWFも、CDMが実際の温暖化防止に役立つものになるよう、また、先進国のCO2排出削減の「抜け道」にならないように、COP/MOP1の会議で問題点の指摘や提言を行ない、今回その詳細をまとめ発表しました。
DMについては今後も、京都議定書が義務付けるCO2削減の第二期以降、すなわち2013 年以降に温暖化防止に向けた国際的な取り組みの中で、その制度の位置付けを含め、検討が重ねられてゆく予定です。


モントリオール行動計画の初会合はじまる 2006年5月16日

温暖化防止のための国際会議が、5月15日、ドイツ・ボンで始まりました。WWFは2005年12月にカナダで開かれたモントリオール会議での機運が、今後の地球温暖化防止につながるよう、具体的な国際交渉が行なわれることを求めるポジションペーパーを発表しました。

ポスト京都議定書の行方を問う

温暖化防止のための国際会議が、2006年5月15日、ドイツ・ボンで始まりました。これは2005年の12月に、カナダのモントリオールで開かれたCOP/MOP1(第11回気候変動枠組条約及び第1回京都議定書会議)で採択された、モントリオール行動計画に基づく初めての会合であり、第24回補助機関会合とあわせて、ポスト京都議定書に向けた重要な会議です。

今回の会議は、アメリカを含む気候変動枠組み条約の締約国が、将来に向けての対話をするダイアローグ(15、16日)と、京都議定書締約国がポスト京都の約束について話し合うアドホックワーキンググループ(17~25日)、さらに、排出量取引などのメカニズム、温暖化による影響や被害対策などを話し合う補助機関会合の3会合(18~26日)に分かれて行なわれます。

WWFでは現地にスタッフを派遣すると共に、モントリオールでの機運が、今後の地球温暖化防止につながるよう、具体的な国際交渉が行なわれることを求めるポジションペーパーを発表しました。

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