2006年【COP/MOP2】 第2回 京都議定書締約国会議
2006/11/06
2006年11月6日から17日まで、ケニアのナイロビで、第2回「京都議定書」締約国会議(COP/MOP2)および、第12回「国連気候変動枠組み条約」締約国会議(COP12)が開催されました。アフリカで初めての開催となる今回の会議では、先進国に温室効果ガスの削減が義務付けられた、京都議定書の第一期約束期間が終了する2013年以降、国際社会が温暖化防止に向け、どのような行動を取るか、その意志が問われる会議となりました。
COP/MOP2について
2006年11月6日より、ケニアのナイロビにおいて、国連気候変動枠組み条約第12回締約国会議(COP12)および、京都議定書第2回締約国会議(COP/MOP2)が17日までの予定で始まりました。
2005年、カナダのモントリオールで開かれたCOP11およびCOP/MOP1では、「モントリオール行動計画」が採択され、京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)以降の取り組みについて話し合う場が3つ設けられました。
- 国連気候変動枠組み条約に基づく「対話」ワークショップ
- 京都議定書第3条9項に基づくアドホック・ワーキング・グループ
- 京都議定書第9条に基づく、京都議定書および条約のレビュー
1と2はすでに第1回目の会合が、2006年5月、ボンにおいて開かれたので、今回が第2回目の会合となります。 3は、9月に各国から提出された意見に基づき、レビューのプロセスが話し合われます。
第一約束期間の開始を2年後の2008年に控えた今回の会合は、国際社会が2013年以降の取り組みへの道筋をつける上で、とても重要な会合です。2013年以降の取り組みに関しては、第一約束期間の始まる2008年には合意している必要があるからです。
そのため、今回の会合では、取り組みのあらゆる形、オプションを話し合い、分析し、来年開かれるCOP13およびCOP/MOP3で、先進国がどのような削減目標値を掲げるのか、排出の多い途上国はどのような取り組みを行なうのかについて、本格的な交渉を行なう場としなければなりません。
COP12およびCOP/MOP2は、次年の会合のゆくえをも決める、重要な会合といえるでしょう。
WWFポジションペーパー
ナイロビ会議での優先事項 「2013年以降の次期枠組みへの道筋をつける」
第12回国連気候変動枠組条約締約国会議 及び 第2回京都議定書締約国会議に対する WWFのポジションペーパー
アフリカで初となる会議に寄せて
国連のこの気候変動の会議において、各国政府は地球の新しい歴史の一ページを開くことができる。ナイロビに到着して直面する課題は、危険な気候変動を防ぐた めにどの道をとるかである。各締約国がどのようにこの問いに答えるかによって、彼らが今までの不毛な議論は止め、モントリオールで始まった作業をスピード アップさせて、今後の方向性を示す意志があるかが示される。
わたしたちに残された時間は限られている。最新の科学的知見によると、危険な温 暖化を防ぐには、今後10年から15年の間に排出のピークを迎え、そのあとは安全なレベルまで下げていかなければならない。今すぐ行動を起こさなければな らないという温暖化防止行動の緊急性とは何を意味するかという長年にわたる疑問は晴れた。最近発表された気候変動の経済を分析したスターン・レビューは、 世界中の経済学者を巻き込んだ包括的な研究成果だが、あらためて今すぐ温暖化防止行動に取り組まなければならない必要性を浮き彫りにした。ニコラス・ス ターン卿は、今温暖化防止行動が行われなければ、気候変動のもたらす被害によるGDPのロスは大変なものになると警告している。それに対して温暖化防止行 動に費やされるコストは手の届く範囲である。彼の研究はさらに気候変動の悪影響は、思っているよりもはるかに深刻であることを示した。しかしもっとも重要 なメッセージは、心強いものである。それは、危険な気候変動を防ぐための活動―つまり産業革命前に比べて地球の平均気温上昇を2度未満に押さえるには、 GDPの1%強ですむというものである。レビューは、今私たちが温暖化防止行動をとらないと、毎年少なくともGDPの5%ずつ失っていく恐れがあるとして いる。行動をお起こすのが遅れると、開発への努力を無駄にし、人々の生活を危うくさせる。
気候変動の悪影響は、すでに北極から、東アフリカ のさんご礁、アマゾンの熱帯雨林からヒマラヤの氷河にいたるまで、現れている。もはや経済的リスクであり、安全保障の危機ですらあるかもしれない。目的は はっきりしている。人々は、政府、ビジネス界、NGOから積極的な行動を起こすリーダーシップを期待している。今、締約国は気候変動というこの挑戦にこた えるだろうか?
ナイロビにおける優先事項
以下がWWFの考えるナイロビにおける優先事項である。
大 臣と各国政府代表団は、2013年以降の枠組みへの道筋をつけるはっきりした意思表示を示さなければならない。2013年以降の次期枠組みが、緊急性にこ たえるもので、きっちりとしたタイムラインが決められ、危険な気候変動を防ぐために必要な世界レベルで取られるべき行動の規模を決めるよう共通の「京都プ ラス」レジーム(政治統治体制)のビジョンが形成されなければならない。
したがって大臣によるハイ・レベル交渉においては、危険な気候変動 を防ぐための国際的な枠組みに関わるための、それぞれの国の機会と可能性に焦点を絞り、各自が率直な態度で2013年以降の次期枠組みで、どんなことがや れるのかについて話し合うべきである。WWFは、各国政府が、自分たちがもっとも重要と考えるアイディアを示し、2013年以降のレジームにおいてどのよ うな形の約束や自主的な貢献ができるかを詳細に探求することを期待しており、またそのようにして欲しいと願っている。
各国大臣たちは、以下の事項について作業プログラムを優先して合意を得る必要がある。
- CDMプロジェクトにおいて、アフリカ・サハラ以南の地域、小島嶼国,そして他の後発発展途上国において公平性が保たれる方法
- 適応基金を公平に効果的に運用できるようにすること
- モントリオール行動計画で定められた2013年以降の取り組みに関して議論する3つのトラックを整理統合して前へ進めること
- 「9条」を使い、その議論は最新の科学を基に行うこと
- 「3条9項」の特別作業部会にインターセッショナルな会合を設け、また「対話」から出てくる、持続的発展のための政策・措置(SD-PAMS)や、他のポジティブ・インセンティブを与えるアプローチのワークプランを作り、交渉を活発化すること
- COPMOP3では、本格的な交渉をはじめることに同意すること
- 第一約束期間と第二約束期間に間があかないようにするためには、2013年以降の次期枠組みについての交渉を2008年までに終えることを明言すること
1.温暖化の悪影響と適応について
アフリカ・サハラ以南の地域や小島嶼国などもっとも温暖化の悪影響を受けやすく、発展が遅れている国々が持続的発展をとげ、気候変動に適応できるように支援すること。つまり以下の事を行うべきである。
a: 最悪の影響を防ぐために、2013年以降のレジームの交渉は、もっとも優先して緊急に行う。
b: 貧しく脆弱な地域がすでに受けている悪影響に対応できるように、適応基金を含め、適応プロジェクトのためのメカニズムと経済的支援は、運用できる状態にする。
c: WWFは、CDMプロジェクトの地域的偏在をなくして、バランスが取れるようにする努力を支持する。現在の地域的偏在をなくすために、サハラ以南の地域と 他の後発発展途上国におけるCDMプロジェクトが追加されることを誓約すること。COPはさらにCDMのプロジェクトが実施されるように追加的に能力育成 を支援する方法を議論する。
d: WWFは、CDMにおける追加性のルールを弱めることには断固反対する。最近のCOPで、CDMの運用や運用機関についてさまざまな変更が加えられた。これらは今やきちんと実行されなければならない。
WWFは、特に以下を各国政府代表団に要求する。:
(a) 悪影響と適応についての5カ年計画を決定し採択すること
評価の段階を超えて、実際に適応プロジェクトが始められるようにすることが大切である。脆弱な国々は長い分析過程を待っている余裕がない。
(b) 適応基金の機関と運用についての議論をまとめること
発展途上国のプログラムにおいて運用と資金繰りについての途上国側の優先事項を公平に取り扱う効果的なアレンジが求められている。;
(c) 永続的な専門家による適応委員会を設立すること
この委員会は、COPMOPに適応活動と資金についてアドバイスを提供する。災害予防と国連のミレニアムゴールを満たすための機関からの専門家を招いて、 他の開発の関係者と連携して政策をおこなえるようにする。委員会は、適応における科学的、技術的、資金的側面のアドバイスを議定書の関連機関に提供するこ ともできる。
(d) 2013年以降の次期枠組みに取り入れた形で適応議論をスケールアップする
適切で予測でき、持続できる資金を確保する議論は前に進めることが非常に難しいことはわかっている。ひとつの可能性は9条のレビューのなかで、条約の究極 の目的と、適応するための努力のレベル、実行可能性、そしてコスト、それに気温の上昇に伴い高まる後戻りできない危険なラインを超えるリスクとの関係の分 析を完結させることが考えられる。:
- 長期的に安定的な資金獲得メカニズムのレビュー;CDMにおける課徴金を、他のすべての柔軟性メカニズムに広げるなど;
- 適応にかかるコストが、人為的な気候変動によるものであることを測る、実際的な方法論をレビューする;
- これらはこの分野においてすでにある作業プログラムの上に積み重ねられるべきである。
2.モントリオール行動計画で定められた2013年以降の枠組みを話し合う3つのトラックを固めて前進させること
イ ンダバで開催された南アフリカ主催の大臣級非公式会議においては、すべてのトラックについて触れられ、これらを前進させる興味深い方法が提示された。イン ダバにおけるアイデアと勢いは、2013年以降の次期枠組みのアジェンダを動かすのに役に立つもので、考慮に入れられるべきである。
1.タイミング:
ナイロビからインターセッショナル会合を通し2007年のCOPMOP3において正式な交渉を始められるようにし、2008年のCOPMOP4において、2013年以降の「京都プラス」レジームについての交渉を終えること。
a: 第一約束期間と第二約束期間に間をあけないためには、2013年以降の次期枠組みの正式な交渉を2008年までに終えなければならない。したがって各国政 府は、COPMOP3において明瞭な「京都プラス」レジームについて議論できるようにするために、「2013年以降に関する交渉マンデート」に十分な形で 合意しなければならない。
b: ナイロビにおいてモントリオール行動計画のすべてのトラックをリンクさせる形で進展させるべき。2007年に上で述べたようなマンデートに合意できるようにする。
c: したがって、UNFCCCと各国政府は、2007年にインターセッショナル会合を開けるように資金を出す必要がある。
2.ナイロビにおける2013年以降の取り組みの議論に関する4つのトラックでの作業について
d: 附属書I国が新たにより大きな絶対量の削減約束を持つよう、3条9項のもとの特別作業部会において、より野心的な作業計画を立てること。附属書I国は、世 界の排出のピークが10年から15年で迎えられるために必要となるグローバルな排出削減への道筋に沿った形で、それぞれの国の目標数値を2007年には提 案できるようにするべきである。したがって、今回の第二セッションでは、それぞれの国の事情と排出削減の可能性も考慮しつつ、危険な気候変動を防ぐため の、世界の排出削減への道筋に必要な議論をするべき。
e: 9条における議定書の見直し作業は、分析プロセスを一年で終える予定で始めるべきである。9条の見直しの結果は、特別作業部会と対話のプロセスに報告をす ることになっている。それは、条約の究極の目標を達成するため、2013年以降のレジームに関連するすべての課題を包括的に分析することを目的とするべき である。
f: 第二回目の対話のセッションは、(自主的に参加したくなるような)ポジティブ・インセンティブと、非附属書I国をサポートする革新的な方法について意見交 換するべきである。それには非附属書I国の持続可能な発展、緩和、および適応の努力、それに持続可能な開発のための政策・措置(SDPAMS)、セクター 別アプローチ、そして他にも可能性のある市場メカニズムを使用した方法などがある。
g: 熱帯雨林の減少問題については研究とレビューを含んだ包括的な作業計画を補助機関会合(SBSTA)で決定するべきである。その際にさまざまな明らかな問 題点について話し合い、COPMOP3で「2013年以降の交渉マンデート」に貢献できるよう、どのようにしたら話を前進させられるかについて合意すべき である。
特にWWFは各国政府代表団に、以下のことを求める。
a. 附属書I国による将来の削減目標のためのアドホック・ワーキング・グループ(AWG)(京都議定書)
3条9項に関する交渉をこの第2回目の会合でより具体化させる。
- 世界全体の排出量の(将来に渡る)道筋、危険な気候変動を防止するための長期および短期の目標、先進国の排出量削減に関する責任に関する議論が必要である。 自身の「2℃」目標に基づき、EUおよびEU理事会は2020年までに(15~)30%の削減が必要であるとする結論を持って、先進国をリードすべきであ る。附属書B国各国は、附属書B国の異なる国内環境、排出傾向、そして各国の排出削減のポテンシャルについて、意見を述べ、議論を行い、発表を行なうべき である。
- 外部からのインプットを行うIPCCは、「2℃未満」に特に焦点を当てつつ、究極の目的達成のための温室効果ガス排出量安定化シナリオ、現在のデータ、そして、今後の更なる潜在的な削減可能性について発表をすべきである。
- 3 条9項に関する第2回目のAWGは、既存のAWG会合の数(年2回)に対して追加的な会合開催(インターセッショナルの開催)やサブ・グループの設置を含 む詳細で体系的な作業計画、そして更なる意見提出の機会が結論を導き出すためには必要であることを示す決定を行うべきである。
- AWGは交渉を2008年までに完結させるべきである。2007年の前半には、附属書I国は具体的な排出削減目標(数値化された排出抑制削減目標(QELROs)の形で)を議論できるように準備する必要がある。
b. 長期的協力に関する「対話」の第2回ワークショップ(気候変動枠組条約)
- WWF は、「対話」はUNFCCCの枠外においてのみ議論されているいくつかの概念に関する準公式な議論の場として機能する可能性があると考えている。「京都プ ラス」レジームの新しい仕組みに関するクリエイティブなアイディアが議論されるべきである。それは、たとえば、排出の大きな非附属書I国が関わり、持続可 能な開発へのニーズを満たしつつ、新規で拡大されたカーボンマーケットを創り出すポジティブ・インセンティブを提供するようなもの(持続可能な開発に関す る政策と措置(SD-PAMs)、セクター別アプローチ)などである。今回の第2回ワークショップではまさにこうしたことを議題にすべきである。締約国は このような議論やプレゼンテーションを奨励し、外部専門家を招くのも有効である。
- フォローアップのための追加会合が必要 となる。WWFは、UNFCCC事務局が作業計画をまとめる仕事を付託され、インフォーマルな「ノン・グループ」会合が2007年に引き続き意見交換の場 として開かれることを提案する。これらの会合の結果は、COP/MOP3で合意されるべき「2013年以降に関する交渉マンデート」の結果として生じる作 業計画の中に取り込まれていくべきである。
- 「対話」は、附属書I締約国による削減約束のタイプについて議論する場ではない。<
c. 9条 -京都議定書および条約のレビュー(京都議定書)
WWF は、京都議定書第9条の下での一年間の包括的レビューが、条約の下でのレビューと連携し、今回の会合から開始され、後々も定期的なレビューが開催されるこ とを強く支持する。WWFは、CANによる9条に関する提出意見を支持する。CANの提出意見は以下のことを述べている。
- 9条は、条約3条9項と同等の地位を持つ独立したプロセスとなるべきであること。
- そのプロセスは、一年間で2013年以降のプロセスのための必要な科学的な分析を行い、進行中の3条9項AWGおよび条約の下での対話にも情報を提供すべき こと。(これらの会合の)橋渡しとしての役割も果たす(CANの提出意見に書かれているカバーされるべき争点のリストを参照)。
- やがては、COP/MOP3において発足されるべき広範かつ整合性のある2013年以降に関する交渉プロセスへ向けて、他のプロセスと統合されるべきこと。
- インターセッショナル会合の開催が必要であること。
d. 熱帯雨林減少(SBSTA議題項目)
パ プアニューギニアによってリードされている熱帯雨林同盟(Rainforest Coalition)の諸政府によるイニシアティブを通じて、国際気候レジームを通じて熱帯雨林減少問題に取り組む方法についての議論がSBSTAの議題 項目として挙げられている。2006年8月にローマにてワークショップが開催されており、また、2007年4月に第2回の開催の可能性もあり、 SBSTA25やSBSTA26での更なる議論が予定されている。WWFは、2013年以降のレジームにおいて森林減少や他の土地からの排出源からの排出 を削減する効果的な手段やメカニズムを探すための努力を歓迎する。このトピックは、政策的なアプローチや仕組みとともに、技術的なレベルでも、大量の調査 および分析を必要とする。ワークショップの結果は、これらの問題にとり掛かる端緒であるが、条約の枠外で行われている研究者、政府、NGOによる作業を考 慮に入れた形での、より入念な作業計画や調査計画が必要となる。SBSTA25会合は、次のステップおよび議論のきっちりしたタイトなスケジュールについ て決定すべきである。それは、全体的な2013年以降に関する議論の予定(2008年に終了する)と整合し、COP/MOP3における「2013年以降に 関する交渉マンデート」に取り込んでいけるものとならなければならない。
WWFは、2006年3月にSB24へ向けて出されたCANの提出意見を支持する。
http://unfccc.int/essential_background/library/items/3599.php?rec=j&priref=500003425
3. 京都議定書の附属書Bの改正 -ロシア「提案」(京都議定書)
ロシア代表による要請に基づき、COP/MOP1は、COP議長に対して、もし締約国が自主的に削減約束を負うことを希望した場合、附属書B国のリストに 新たな国を追加することを認めるための手続きという争点についてどのように議論するかを締約国と議論するインフォーマルな協議を持つことを命じた。COP 議長は、COP/MOP2の場において、その協議の結果を報告することになっている。
WWFは、COP議長によるそれらの協議の結果に関する報告を待っているが、意思決定についての透明性を要求する。この議題は、より広範な2013年以降の議論の中に取り込まれるべき争点として取り扱われるべきである。
4. 明示的な進展(demonstrable progress)(京都議定書)
附属書B締約国は、それぞれの目標達成に関する進捗状況報告を提出する予定であったが、いくつかの国々が報告を提出していないため、適切な議論が不可能であ ると判断された。WWFは、全ての附属書I締約国に対して、約束を予定通りに果たし、もしまだ提出していないのであれば、報告を提出することを要求する。 この明示的な進展に関する分析結果は、AWGや9条のレビューの審議に情報を提供しなければならない。
5. 技術移転(京都議定書および条約)
UNFCCC および京都議定書の下での過去10年に渡る技術移転に関する議論は、大きな結果を生み出していない。同時に、既存の低炭素技術、技術革新、技術移転および 資金枠組みの役割は政治的なアジェンダの中での重要性を上げてきている。我々にとっての目下の問題は、2013年以降の議論の文脈の中で、この争点に関し て特に何ができるかということであり、また、技術移転専門家グループ(EGTT)はより広いマンデートを与えられるべきであるかどうかということである。 加えて、インバダ閣僚会議は、「特定のセクターにおける技術移転に関する集中的なプログラム」や多国間技術獲得ファンド(Multilateral Technology Acquisition Fund)といった興味深いアイディアを議論した。
WWFとしては、技術開発および移転は9条の下で、2013年以降のパッケージの一部として議論され、技術、技術移転、そして資金的枠組みの役割が「京都プラス」の緩和・適応の枠組みの中に完全に埋め込まれることを担保することが必要であると考える。
6. バンカー燃料
航 空や船舶からの排出量の急激な増加の事実から、WWFは、バンカー燃料をSBSTA議題項目および2013年以降に関する交渉として検討する際は、中心的 な議題であると考える。SBSTA議題項目の下で行われるべき方法論上の作業に加え、バンカー燃料に関する議論は9条レビューの中で議論されるべき議題と しての扱いが適当である。
我々は、2週間の生産的な会合に期待を寄せている。ナイロビはモントリオールからの勢いを保ち、今後の道筋を描き だし、しっかりとした作業計画の確立と実施をすることで果たすべき全体のプロセスの中での重要な役割を持っている。行動の必要性がこれほどまでに高まった ときは無かった。我々は、各国政府が発言と行動を通じて、我々の前に立ちはだかる壮大な課題に対する解決策を遅れることなく見つけ出すことへの堅い決意を 示すことを期待している。そして、その解決策は、公平かつ衡平で、真に持続可能な形での発展への道筋を開くものでなければならない。
関連情報
現地レポート:開幕 2006年11月6日
第12回気候変動枠組み条約締約国会議、および第2回京都議定書締約国会議(COPMOP2)が、11月6日からケニア・ナイロビで始まった。
会議は、ホスト国ケニアのアーサー・ムーディー・アウォリ副大統領のオープニングスピーチではじまった。アウォリ副大統領は、世界でもっとも温暖化の悪影響を受けやすいアフリカ・サハラ地域以南を例にあげて、2013年以降の次期枠組みに、公正でグローバルな戦略の必要性を訴えた。
COPMOP2の議長に選ばれたケニアのキブサ・キブワナ環境大臣は、今回の会議でハイライトすべき5つのポイントとして、悪影響を緩和する手段を講じる「適応」を真っ先にあげた。2番目はCDMの進展で、なかでも現在一部の国々(中国、インド、ブラジルなど)に集中しているCDMの地域的偏在を変え、アフリカでも多くのCDMプロジェクトが行われるためのキャパシティビルディングを訴えた。3番目には技術移転が挙がり、途上国側の優先課題が色濃く出ているという意味において、はじめてアフリカで行われるCOPMOPを印象づけたものとなった。
続いて、「この会議にとってもっとも大切」なポイントとして、「モントリオール行動計画」に基づいた議論の進展、そして最後に議定書9条のレビューをあげた。
気候変動はアフリカの発展を阻害している
記者発表資料 2006年11月6日
【スイス、グラン/ケニア、ナイロビ発】各国政府が京都議定書の第2回目の会合のためにナイロビに集うこの機会に際し、WWFは、気候変動がアフリカの一般の人々の生活水準の向上を損ない、場合によっては台無しにしてしまうことを警告する。
WWFの報告書『東アフリカにおける気候変動ー科学の現状』は、過去一世紀の間にアフリカ大陸では平均気温が0.7℃上昇したことが報告されている。来世紀については、10年間に0.2℃~0.5℃の平均気温上昇が予想されており、こうした気温上昇は東アフリカの地方の地域社会全体に深刻な影響を与えると、WWFは警告している。
「気候変動は私たちの国に影響を及ぼし始めており、最初の影響の兆候を極めて明確に東アフリカに見ることができる。最も貧しい人々が、先進国の排出した温室効果ガスによる悪影響を受けるので、加害者である先進国が、わたしたちアフリカの人々が気候変動に対する備えができるようにアフリカに対して援助の手立てを提供するのが衡平というものである」とWWF東アフリカ地域プログラムオフィスのコンサベーション・ディレクターであるタイヤ・テフェリは述べている。
東アフリカにおける最も深刻な気候変動による影響の1つは、降水の頻度、強さが変化し、またその予報をしにくくなることである。雨が降るパターンが変わることは、地域によっては水不足に陥ることを意味しており、農産物の収穫が激減する。これは食料不足を招き、地域紛争を巻き起こす可能性すらある。
気温が上昇すると、伝染病の蔓延をより頻繁に招く可能性もある。特にアフリカ東部においては、気温が高く、雨の量が増えると、マラリアの流行を引き起こすおそれが高まる。
これらの悪影響に加えて、気温が上がると、よりひんぱんに激しい異常気象がおきることが予測されている。また、海水面の上昇が沿岸部に及ぼす影響ははかりしれない。沿岸部は、多くの人口を抱え、農業や観光、産業や漁業などの経済活動が行われているところだからである。
「世界の平均気温の上昇が、産業革命前に比べ2度を超えると、気候変動は人類の手に負えなくなる」とWWFのグローバル気候変動プログラムのディレクターであるハンス・ベロームは述べている。「まだこのような危険な気候変動は防ぐことができるが、しかし、そのための機会はどんどん失われていっている」
「わたしたちの行方をさえぎっているのは、危険な気候変動を防ぐ技術的な解決方法がないためではない。ナイロビに集まる各国政府の大臣たちは、より大きな排出削減に向けての道筋を描きださなければならない。私たちは、皆で手を取り合い、安全でクリーンなエネルギー効率のより良い社会を作り上げていかなければならない。」
EDITORS'NOTES:参考文献
1. WWF報告書(『東アフリカにおける気候変動ー科学の現状(Climate Change Impacts on East Africa)』は、こちらからダウンロードできます(英文:PDF形式、88KB)
2. COP/MOP2およびCOP12に関するWWFメディアアドバイザリーは、他の関連文書と一緒にhttp://panda.org/presspack/climate(WWFインターナショナルのサイト)からダウンロードできます。
3. COP/MOP2およびCOP12に関する詳しい情報については、国連気候変動枠組条約(http://unfccc.int/)を参照。
4. WWFグローバル気候変動プログラムのより詳しい情報については、WWFグローバル気候変動プログラムのウェブサイト(http://www.panda.org/climate)参照。
アフリカを脅かす気候変動 ~ナイロビ会議始まる 2006年11月7日
ケニアのナイロビで11月6日から始まった、第2回「京都議定書」締約国会議(COP/MOP2)の開催に先立ち、WWFは地球温暖化がアフリカに及ぼす影響についてまとめた新しい報告書を発表しました。この報告書の中で、WWFは、気候変動がアフリカの人々の生活をさらに悪化させるおそれがあることについて警告を発しました。
ついにアフリカが舞台に
11月6日から17日まで、ケニアのナイロビで、第2回目となる「京都議定書」締約国会議(COP/MOP2)および、第12回「国連気候変動枠組み条約」締約国会議(COP12)が開催されます。
アフリカで初めての開催となる今回の会議では、先進国に温室効果ガスの削減が義務付けられた、京都議定書の第一期約束期間が終了する2013年以降、国際社会が温暖化防止に向け、どのような行動を取るか、その意志が問われることになります。
WWFでは、この会議の開催に際し、特にアフリカ地域で懸念される、地球温暖化の脅威について、新しい報告書『東アフリカにおける気候変動~科学の現状』を発表しました。
WWFはこの報告書の中で、過去100年の間に、アフリカ大陸では平均気温が0.7度上昇したこと、また、今後10年間に平均気温が0.2~0.5度上昇する予想について指摘。多くの人口を抱え、農業や観光、漁業をはじめ、さまざまな経済活動が行なわれている沿岸部が、海水面の上昇や異常気象による大きな被害を受ける可能性や、東アフリカにおける降水パターンの変化、それに伴う農業への打撃や深刻な干ばつ、また地域的な雨の増加によるマラリアの流行などの危険性が高まることを訴えました。
問われる国際社会の姿勢
また、温暖化が引き起こすであろうさまざまな問題は、資源や食料を巡る紛争に発展する恐れもはらんでいます。WWFは、気候変動がアフリカの人々の生活水準を悪化させ、場合によっては台無しにしてしまうおそれがあることについても警告しました。
WWF東アフリカ地域プログラムオフィスのタイヤ・テフェリは言います。
「気候変動は私たちの国に影響を及ぼし始めています。その最初の明らかな兆候が見られるのは、東アフリカです。最も貧しい人々が、先進国の排出した温室効果ガスによる悪影響を受けようとしている。その原因を作った先進国は、私たちアフリカの人々が気候変動に対する備えができるような、援助の手立てを公平に提供すべきです」。
しかし、これまでの経緯を振り返っても、地球温暖化防止に向けた、国際社会の姿勢と取り組みは、決して楽観が許されるものではありません。
「世界の平均気温の上昇が、産業革命前に比べ2度を超えた場合、気候変動は人類の手に負えなくなってしまいます。今はまだ、このような危険な気候変動を防ぐことができるはずだが、そのための機会はどんどん失われている」。そう、WWFの気候変動プログラムのディレクター、ハンス・ベロームは述べています。
今回のナイロビ会議が、その機会を捉え、活かすための場になるかどうか。WWFは、会議に集まる各国の政府首脳に対し、より大幅な二酸化炭素などの温室効果ガス排出削減に向け、行動に踏み切るよう、強く求めてゆきます。
現地レポート:特別作業部会(AWG)始まる 2006年11月7日
さて3条9項の特別作業部会(AWG)は、初日にアジェンダを採択したあと、2日には、午前中、午後にわたって部会内でのワークショップが開かれた。午前中は次期約束を決定するための科学的根拠と温室効果ガスを安定化させるシナリオについて、午後は附属書I国の排出削減の可能性について、プレゼンテーションが行われた。
IPCCのプレゼンテーションは、2007年に出される第4次報告書の中身には触れられず、第3次報告書に基づいたものであった。EUの議長国であるフィンランドは、EUが主張している「危険な気候変動を防ぐためには平均気温の上昇を産業革命前に比べ、2度未満に抑えるべき」という科学的根拠を示すプレゼンを行った。
ノルウェーに続いて日本は、「日本は必ず約束を守る。約束を守るためにあらゆる方法を取り入れる。一方、条約の究極の目標である危険な気候変動を抑えるという目的にのっとって次期枠組みを考えると、現状の京都議定書締約国だけの約束でその目的が果たせないことは確実である。誰が参加するのかわからないまま、現状の附属書I国だけの約束を話し合うのはおかしい。」とする従来の主張を繰り返した。また「従来の数値目標に加えて、セクター別アプローチや原単位目標など、さまざまな方法を取り入れていくべき」とし、かなり強い言葉で「枠組みを罰則でしばるべきではない。罰則が入ると向上心をしぼませる。」と話を展開した。
最後にブラジルは、排出の歴史的責任について語り、「排出で見ると非附属書I国の責任は25%となるが、気温の上昇への寄与度で見ると12%にすぎない」と先進国の責任を強調した。また熱帯雨林の伐採について、「伐採による排出が、世界の排出量の20%を占めるというのは違う、ブラジルの調査では9%である」とし、「熱帯雨林の伐採などに優先的に目を向けてしまうと、本当に大切な排出を削減するという努力がおろそかになる」と懸念を表明した。
午後には、ニュージーランドが農業からの排出について発表を行った後、日本が再び登場、日本の誇るエネルギー効率について熱弁を振るった。そして削減ポテンシャルについて語り、「乾いたタオルからの最後の一滴を絞る日本に対して、世界にはぼとぼとに濡れたタオルの山が転がっている。公平ということを考えるべき」とした。また「産業界との協力が大切」とし、ノルウェーからは、「EUで行われているような排出量取引は取り入れるつもりはないのか?」と質問を受け、「来年の京都議定書目標達成計画の見直しに向けてあらゆるオプションを考慮している」と答えた。
EUからは、EUETS(ヨーロッパの排出量取引制度)において、CCSを第二約束期間から入れるなど時期の入ったプランの説明があった。
現地レポート:AWG続く 2006年11月8日
3日目に行われた特別作業部会は、附属書1国の次期約束と期間についてと、今後のセッションの作業計画とスケジュールについて議論が繰り広げられた。
途上国側からはいっせいに、先進国がより深い約束を、早くコミットするようにと発言が繰り返され、G77と中国を代表する南アフリカをはじめ、他のアフリカ諸国、南太平洋諸国など数カ国のすべてが、2008年までに約束の話し合いを終わらせるようにと主張した。
それに対し、日本はタイムラインに強く反対、また3条9項の元では附属書Bの改正だけを話し合うべきであり、その他カーボン市場へのシグナルなど他のことを話し合う場ではないとした。
日本の2008年タイムラインへの強い反対発言で、日本は後ろ向きと取られ、翌9日のCANの化石賞でトップになってしまった。
ノルウェーだけが第一約束期間と第二約束期間に間があかないようにということで、いつまでという締め切りはいらないとしたが、EUはタイムラインにはまったく言及しなかった。
現地レポート:森林減少(デフォレステーション)2006年11月9日
4日目の9日、午前11時30分からデフォレステーションのコンタクトグループが行われた。これまでのSBSTA(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice:科学および技術の助言に関する補助機関)での経過は、PNG(パプア・ニュー・ギニア)とブラジルが対立し、EUがそのどちらの案にもいい顔をしないという構図であり、日本をはじめとするその他のグループは静観しているという状態であった。アメリカ、カナダは、科学的なアセスメントを優先して行うべきという至極もっともらしい発言で、会議の進展を遅らせようとしている。
この日は、議長の最初のドラフトが出て、それに対し各局政府代表団から意見が出された。その内容は8月30日にローマでワークショップが行われたことを受けて、SBSTAが来年、5月のSBSTA26の前にもう一回ワークショップを開催することを要求するというものであり、そのワークショップで、これまでに出された熱帯雨林伐採をストップするさまざまな案を検討することを定めようとしている。その検討の内容については、政策とポジティブインセンティブについては全員が賛成したが、そこに技術的方法論的考慮を入れるかどうかで、各国の意見が分かれた。ブラジルなどはもう技術的な検討はいいから早く案を検討したいと主張、EUや日本は技術的な問題や方法論は重要な問題だと述べた。SBSTAは、そのワークショップに備えて2007年の1月25日までにサブミッションを出すことを要求している。その内容についても、新しいアプローチの提案と能力育成、技術的な協力には全員が賛成したが、以前に提出されたサブミッションについて各国の意見を言うかどうかで、再び各国の意見が割れた。
しかし2013年以降の枠組みが決まらないと、このデフォレステーションの話だけで先へは進めないので、それぞれ意見を密接に交換していくという点では、各国の思惑は一致しているようだ。日本をはじめとするいくつかの国が特に大切であると強調したのは、ドラフトの中にある「附属書I国以外の締約国が、2月23日のワークショップのために提出する、各国の最新の国別報告書に基づく排出量や、その傾向、その理由や、考えうる政策についてのデータの報告と、それに対応したバックグラウンドぺーパーを、5月のSBSTA26にまとめて見られるようにすること」で、2007年には、2月のワークショップ、5月のSBSTA26、12月のSBSTA27と3回、会合が開催されることが決まりそうだ。
AWG第2回会合
9日の午後3時からは、AWGの2回目のコンタクトグループがはじまり、各国は以下の「3つの論点」で意見を出すように提示された。
- 作業計画、その内容とインプット、タイムテーブル
- 量的な話:附属書1国の削減目標の数値、排出削減の道筋(Emission pathway)、長期的な目標の数値
- 質的な話:削減ポテンシャル、削減を達成する手段、達成する制度の組み合わせ(枠組みの作り方)
各国は、それぞれ国内の事情と政策を説明しながら、大体昨日と同じ主張を繰り返した。日本は、柔軟性措置を含めて検討すると話し、きのうの「3.9は数値だけを話す場で、あとはすべて9条のもとで」といったことと違うニュアンスになっていた。また「日本は高いエネルギー効率で絞りきった雑巾で削減余地が狭い。しかるべきときに必ずコミットメントは明らかにするつもりだが、他の大切なファクターがわからないまま、数値だけを言うことは早すぎる」と主張した。
9条レビュー
続いて9日の午後5時から、はじめての9条のCOP/MOPが始まった。この中で、南アフリカは、アフリカ諸国を代表して、初日のケニアの環境大臣がスピーチの中で軽く触れた「Two Step Approach」を展開した。それは、2006年に短くレビューをして、(その内容は一番大切である適応とCDMについて)2,3年後に今度は包括的なレビューを行うというもの。それに対し、EU、日本、カナダは、包括的なレビューを主張、3.9条と関連させて、条約、議定書すべての内容をレビューするプロセスを立ち上げるべきだと主張した。中国、インド、アルジェリア、サウジアラビア、イランなどは、レビューは2006年に附属書1国の責任と適応、技術移転などについてのみ話し合って、この場で終わらせるべきだと主張し、非附属書1国のコミットメントには触れるべきではないと強く主張した。その中で、アルゼンチンが、非常に短い発言ながら、「AWGとリンクするべきだ」と発言したのが、印象的だった。西村大使が「聞き間違いかと思い、あとでアルゼンチンに聞きに行ったら本当だった」と喜んでいたくらいだ。
すべての各国の意見が出された後、NGOからの意見を言う場が議長の判断で与えられた。CANは、提出した9条のサブミッションに沿った内容で、3.9条、対話、そして9条のレビューと3つのトラックを融合させて、包括的に議論ができるようにして、2013年以降の枠組みを作り上げていくプロセスを立ち上げるべきと演説し、終わった後に、拍手を浴びた。
現地レポート:森林破壊防止活動 2006年11月14日
11月13日、SBSTA(第25回補助機関会合)におけるDeforestation森林破壊防止活動のコンタクトグループで、締約国は、最終ドラフトに合意した。
森林破壊防止活動とは、途上国における違法伐採や、現地の住民の焼畑農業などによる森林破壊や森林減少がとどまることなく、その破壊されることによる排出量が、現在世界の排出量の20%から25%に及んでいることからきている。途上国側は、その森林破壊を防止する活動を、気候変動条約のもとでの排出量削減対策として扱うよう求めているのが、この背景にある。
10月31日に発表された気候変動の経済リポート「スターン・レビュー」は、気候変動対策をしなければいずれ世界のGDPの20%に達するような額の負担がかかるとしているが、その中でも、この森林破壊防止活動は4つの大きなポイントの一つとしてあげられており、関連する途上国の関心は非常に大きい。2013年以降の枠組みを考える上で、途上国の何らかの形の参加を促す起爆剤としても注目を浴びており、欠かせない論点となっている。
今回のCOP12での議論は、8月にローマで開催された第一回目のワークショップでの報告を受けてスタートした。論点は3つである。
- 科学的、社会的、方法論的、技術的観点。広大な面積の森林破壊のデータをどうやって把握し、モニターするのか、炭素サイクルにおける森林破壊の科学的な役割、森林破壊や、森林退廃の定義などについて。
- どのような政策やポジティブインセンティブが考えられるのか、
- 1つ目の科学的論点と、二つ目の政策的論点をどのように関連付けるか。
2点目の対策については、大きく分けて、政策で行うのか、市場メカニズム(排出権)で行うのか、に分かれた。
Rain Forest Coalition(熱帯雨林連合)を代表して出されているパプアニューギニア(PNG)の提案は、「インセンティブの柔軟なバスケット」である。これはODAや、二国間や多国間の資金に基づく自主的な国内対策、新たなプロトコル、そして市場メカニズムを使ったものなどさまざまなオプションを含んだ対策のバスケットということを意味する。市場メカニズムを使ったものは、暫定的な破壊率を出して、そこから破壊を防ぐことができた分をクレジットとして、国際カーボン取引市場で売れるようにする提案である。まだあいまいなところが多い提案であるが、次第に支持国を増やしている。
次にブラジルは、パプアニューギニアのクレジットを使ったアプローチや、CDMなどに入れることには反対で、国レベルで破壊を防止して、破壊率から防ぐことができた分に対し、国際社会から何らかの形でcompensation(補償)を受けるということを提案している。
そのほかは、アフリカ諸国のコンゴ台地にある6カ国からの提案など、大きく分けて3つの案が出された。基本的には、パプアニューギニアとブラジルが対立し、EUはそのどちらの案にもいい顔をしないが、森林破壊防止活動は前向きに考慮するという態度を取っている。日本をはじめとするその他のグループは静観している状態である。アメリカ、カナダは、科学的なアセスメントを優先して行うべきという至極もっともらしい発言で、会議の進展を遅らせようとしている状態と見られる。
そして13日に、この問題を話し合うプロセスを以下のように決めることで合意に達した。
- 2回目のワークショップを、2007年5月のSBSTA26(第26回補助機関会合)の前に開催する
- それに先立って、2007年2月23日までに各国はサブミッション(意見提出)を行うこと
- 5月のSBSTA26で、12月のSBSTA27(第27回補助機関会合)の前に、第3回の集まり(ワークショップか専門家会合かインフォーマルなコンサルテーションか)を開催するかどうか検討すること
- 12月のSBSTA27(第27回補助機関会合)に報告すること
このプロセスで話し合われる論点は、各国が今主張しているあらゆる論点が入る形で盛り込まれた。すなわち、上で述べた3点に加えて、森林に関連する国際機関との協調を考えること、それに最新のデータに基づく報告をすることである。
2013年以降の枠組みが決まらないと、この森林破壊防止活動だけの話で先へは進めないので、それぞれ意見を密接に交換し、次期枠組みへ向けて準備を進めるというラインで、各国の思惑は一致したといえる。
進む温暖化が招く、鳥たちの危機 2006年11月14日
新しいレポートを発表~ナイロビ会議に寄せて
現在、ケニアのナイロビでは、「第12回気候変動枠組み条約締約国会議(COP12)」および「第2回京都議定書締約国会議(COP/MOP2)」が開催されています。WWFは、この場で、気候変動により世界の鳥類が多大な危機にさらされていることを発表しました。
この根拠となったレポート『BirdSpeciesandClimateChange:TheGlobalStatusReport(鳥類と気候変動:世界的な現状レポート』を発表したのは、クライメート・リスク株式会社(ClimateRiskPty.Ltd.)。WWFは、気候変動が野生生物に及ぼす影響についての専門家として、本書の作成に協力しています。
鳥類に及ぶ多大な影響
200件以上の鳥類に関する学術論文を再編したレポートにより明らかになったのは、渡り鳥、山岳や島嶼に生息する鳥類、水禽類、北極および南極に生息する鳥類、そして海鳥たちが、気候変動によって特に大きな影響を受けるという事実です。
翼を持ち、比較的簡単に、新しい環境へ生息地を移すことができる鳥類は、それほど大きな影響を受けないと考えられています。しかし、現在、世界に約3000羽しか生息していない絶滅危惧種の渡り鳥ソデグロヅルの場合、その繁殖地である北極圏のツンドラで温暖化が進むと、南の森林が拡大してツンドラが失われるため、個体数の70%が減少すると予想されています。
現在、産業革命の頃より世界の平均気温はすでに0.8度上昇しました。温暖化がさらに進み、これが2度を超えた場合、ヨーロッパで38%、オーストラリア北部地域では72%の鳥類が絶滅する可能性があるとレポートでは指摘しています。
世界各地を移動しながら暮らす渡り鳥は、繁殖場所のみならず、旅の途中で翼を休める中継地や、越冬する場所の環境が悪化したり消失しても、それがそのまま種の危機に直結することになります。また、鳥たちに及ぶ危機は、地球環境に広く温暖化の影響が及ぶことを示す一つの実例といえるでしょう。
温暖化による脅威をこれ以上増やさないためには、気候変動を招く温室効果ガスの排出量を、早急かつ大幅に削減しなければならないと、WWFは警告しています。
▼レポートのダウンロードはこちら(英文:PDF形式)
気候変動によって追いつめられる世界の鳥類
記者発表資料 2006年11月15日
【ケニア・ナイロビ発】WWF(世界自然保護基金)は、ナイロビで開催されている温暖化防止のための国際会議の場において、気候変動による鳥類への影響が世界中で拡大しており、将来的に大規模な鳥類の絶滅を引き起こす可能性があることを発表した。
根拠となっているのは『Bird Species and Climate Change: The Global Status Report(鳥類と気候変動:世界的な現状レポート』である。気候変動よる影響の世界的傾向を見るために、全ての大陸から集めた200件以上の鳥類に関する学術論文を再編したもので、発行元はクライメート・リスク株式会社(Climate Risk Pty.Ltd.)。WWFは、気候変動が野生生物に及ぼす影響についての専門家として、本書の作成に協力している。
クライメート・リスク株式会社のカール・マローン博士(Dr. Karl Mallon)は「気候変動が鳥類の行動に影響を与えつつあるという確固たる科学的証拠が示されたといえます。渡り鳥が渡りに失敗する例が観測されていますし、気候変動によって、生態系とうまく同調できない鳥たちが増える傾向にあります」と訴えている。
特に気候変動によって大きな影響を受けるとされたのは、渡り鳥、山岳や島嶼に生息する鳥類、水禽類、北極および南極に生息する鳥類、そして海鳥である。比較的簡単に、新しい環境へ生息地を移すことができる鳥類は、それほど大きな影響を受けないと考えられる一方、もともと生息地が限られている鳥類は、減少していくか、あるいは外来種に駆逐されていくと見られている。
すでにいくつかの個体群では、最大90%の減少が起き、また他の種については、これまで観測されたことのない規模での繁殖の失敗が観察されている。
レポートでは、鳥類の絶滅も含め、将来、顕在化する可能性のある影響の分析も行われている。その結果、もし産業革命前に比べて地球の平均気温が2℃上昇した場合(現在は0.8℃上昇)、鳥類の絶滅の比率はヨーロッパで38%、オーストラリア北部で72%に達する可能性があることがわかった。
WWFの気候変動プログラム代表のハンス・ヴェロームは「鳥類は長い間、環境変化の指標生物でした。このレポートは、鳥たちが気候変動に対する究極の「炭坑のカナリア」であることを示しています。海鳥や渡り鳥の一部は、現在起きているレベルの気候変動に、早くも敏感に反応しています。鳥類の大規模な絶滅は、予測よりずっと早く起きる可能性があります」と話す。
現在、鳥類の多様性が高い地域に焦点を当てて実施されている保全活動は、このままでは失敗に終わりかねない。なぜなら気候変動が、鳥たちを、保全されていない別の地域へと強制的に移動させてしまう可能性があるからだ。
鳥類の絶滅の割合をこれ以上増加させないためには、温室効果ガスの排出量を、早急かつ大幅に削減しなければならない、とWWFは警告を発している。
添付資料「気候変動が鳥類に与える影響の例」
イギリス:
海鳥が特に気候変動の影響を受けやすいことを顕著に表しているのが、2004年にイギリスの北海沿岸で起きた、空前の繁殖失敗である。シェトランド諸島とオークニー諸島のウミガラス(Uria lomvia)、クロトウゾクカモメ(Stercorarius pomarinus)、オオトウゾクカモメ(Catharacta skua)、ミツユビカモメ(Rissa tridactyla)、キョクアジサシ(Sterna paradisaea)ほかの海鳥のコロニーで起きた繁殖の失敗は、その直接の原因は、海鳥たちの主要な栄養源であるイカナゴの不足であった。イカナゴが大規模に減少した背景には、海水温の上昇が起こり、海の食物連鎖を支える生物種の分布が大きく変化したことが関係していると見られている。
その結果起きたことの一例をあげると、シェトランド諸島で繁殖する約7000つがいのオオトウゾクカモメには、この年ほんのわずかしかヒナが生まれず、飢えた親鳥がヒナを食べるという場面さえあった。シェトランド諸島フェア島にあるウミガラスのコロニーでは、ほぼ完全に繁殖に失敗した。イカナゴを求めて数十キロも飛び、100メートル以上も潜れるウミガラスが、食べ物を充分得られずに繁殖に失敗したことが研究者たちを驚かせている。
アメリカ:
カリフォルニア南部沿岸の乾燥地に生息する鳥類を襲った、ほぼ全滅に近い繁殖の失敗は、異常気象が鳥類に及ぼす非常に大きな影響を示している。2002年に起きた干ばつは、4種の鳥類;ズアカスズメモドキ(Aimophila ruficeps)、ミソサザイモドキ(Chamaea fasciata)、2種のトウヒチョウ属(Pipilo)の繁殖率を97%も引き下げる結果となった。2001年(通常年)には、巣立ち雛の割合が一つがいあたり2.37羽であったのに対し、2002年には0.07羽に落ち込んだ。この年は、150年間の気象観測史上、最も乾燥した年であった。この地域の降水量は気候変動によって減少し、変動も激しくなると予測されている。もともと乾燥した環境であるため、わずかでも乾燥化が進めば、この地域に生息するこれらの鳥類は、危機的状況から絶滅へと向かうだろう。
アジア:
ソデグロヅルは、現在、世界に約3000羽しか生息していない絶滅危惧種の渡り鳥である。ロシア北極圏とシベリアで繁殖し、主に中国の揚子江中流域から下流域で越冬する。ソデグロヅルが北極圏において繁殖地としているツンドラは、温暖化が進めば、森林の進出によって70%が減少すると予測されている。中国では、降水量の減少と集中豪雨の増加の両方が起き、ソデグロヅルに悪影響を与えている。気温上昇によって干ばつが頻繁に起きるようになることは、インドのケオラデオ国立公園で越冬しているソデグロヅルの個体群が、国立公園の外へ出ていかざるを得ない状況を生む一つの要因となると考えられる。それは、ソデグロヅルの一つの地域個体群が絶滅する可能性を示している。
ヨーロッパ/アフリカ:
気候変動によって、マダラヒタキなどの鳥類に、季節に応じた行動のタイミングが変わってしまうという事態が起きている。しかし、この鳥と関係の深い植物や動物が、同じように変化するわけではないことが、鳥たちにとって問題となっている。ヨーロッパで、春に昆虫が発生するピークが早まると、アフリカからの長い距離を渡ってくるマダラヒタキが到着し、抱卵して雛を育てる時期と、彼らの食べ物が最も豊富な時期(=昆虫が発生するピーク)がずれてしまうことになる。過去20年間に、いくつかのマダラヒタキの個体群で、90%もの個体数の減少が起きたのは、気候変動によるこうした時期のずれと関係が深いと見られている。
オーストラリア:
将来、平均気温が3℃上昇し、降水量が10%減少した場合、オウゴンニワシドリ(Prionofura newtoniana)の生息地が97.5%も失われるとの予測は、山岳に生息する鳥類が気候変動に対して脆弱であることを表している。この鳥は、オーストラリアの湿潤熱帯地域にある円錐形の山の上に広がる寒冷な環境に適応している。周囲は温暖な低地である。気温が上昇すれば、彼らの生息に適した環境は縮小し、3℃以上の平均気温上昇が起きた場合には完全に失われてしまう。
南極:
アデリー海岸におけるコウテイペンギンの個体数は、1970年代後半から減り始め、現在は当時の50%にまで減少している。この現象は、1970年代の後半から続く高温と、冬季の激しい気温変動のもとで起きている。気候の異変がコウテイペンギンの食べ物の不足を招き、その結果として繁殖に成功するつがいが減っているのである。暖冬で海氷が少なくなれば、海氷の下に発生する植物プランクトンを食べて繁殖するオキアミが減少する。オキアミはコウテイペンギンの主要な栄養源である。このことから、コウテイペンギンが気候変動に対して非常に脆弱であることがわかる。
現地レポート:AWG(特別作業部会)決着する 2006年11月15日
11月14日に、京都議定書第1約束期間後の2013年以降の枠組みにおける先進国の更なる削減義務についての特別作業部会における議論は合意に達し、15日からは各国の大臣がそろって、閣僚級のハイレベルセグメントが始まり、同時に条約における「対話」も始まりました。
特別作業部会(AWG)における議論は、クタヤール議長のドラフト案をめぐって激論が戦わされましたが、14日に最終合意に達しました。
いつまでに議論を終えるという締め切りこそ入らなかったものの、条約と議定書の原則に基づいた究極の目標を達成するという共通のビジョンの元に、ワークプランが決められ、またカーボンマーケットが継続されることが言明され、マーケットへの明確なシグナルを与えるものとなりました。
そのワークプランの主な内容は、先進国の削減ポテンシャルを分析すること、緩和の目的達成のための方法を分析すること、そして先進国の新たな数値目標を含む約束、および期間などの目標を検討することです。また来年発表されるIPCC(気候変動政府間パネル)の第4次報告書や、国際機関、研究機関に、さらにNGOからのインプットを求めることも明記されました。そして2007年9月か10月に、対話の第4回ワークショップが開かれる際に、同時にこのAWGのワークショップも開催されることが決まり、2007年には、5月のSB25、12月のCOP/MOP3とあわせて3回開催されることも決まりました。つまり、WWFなどが求めていた、インターセッショナル(COPと5月の補助機関会合以外に開くもの)会合を開くことが認められたことになります。
いつまでに議論を終えるかというタイムラインは、日本などをはじめとする先進国の強い反対で入らなかったものの、第1約束期間と第2約束期間にギャップ(間)があかないように、AWGの作業を終えることも明言されました。
最後に、温暖化の深刻な影響にもっとも脆弱な途上国の人々に言及し、マーケットメカニズムや京都メカニズムを可能な限り使って、温暖化を緩和できるように、国際的な努力が2013年以降も継続することを明言、カーボンマーケットが続くことへのマーケット・アクターに対する強いメッセージを送るものとなっています。
現地レポート:9条レビュー 2006年11月17日
最終日、17日の午後9時に、この会議の一番の鍵であった「条約および京都議定書を第2回議定書会議でレビューする」という京都議定書第9条がやっと合意に達し、採択された。
モントリオール行動計画で、次期枠組みについて話し合う場として、AWG,対話、そして9条レビューと、三つのトラックが決まった中でも、最も次期枠組みにつながるものとして重要視されていた9条のレビューは、三つをすべてリンクさせたい日本をはじめとする先進国側と、レビューは最低限ですませて途上国にあらたな義務が課されることを断固として拒否する途上国側との間で、激しい交渉が繰り広げられた。
大量排出途上国の次期枠組みへの何らかの形の参加を強く主張する日本、強硬に反対する途上国、それに間にたつEUという構図で、議論が長引いた。
最後は、レビューを2008年に行うことに反対する中国が、2012年にレビューすればよいと主張して対立したが、17日夕方に折れて、最終ドラフトがまとまった。
主な内容は、
- 2回目のレビューが2008年に行われること
- 2回目のレビューは、締約国によって決定される行動をあらかじめ判断するものではないこと、またどの締約国にも新たな義務を課すことにつながらないこと
- レビューに基づいて、締約国がしかるべき行動をとること
- 2007年8月17日までに、2回目のレビューの範囲と内容、それに必要とされる準備についての意見を提出すること
第2点目は、当初次期枠組みにおいても途上国に新たな義務を課さないととれる文面だったので、日本が強硬に反対したが、最終的には、レビューは現状の見直しで、現状は新たな義務をすべての締約国に課さないという解釈で、通ることになった。つまりレビューはレビューだけであり、そのレビューに基づいて、あらたな枠組みを考える(レビューに基づいて、締約国がしかるべき行動をとる)という結論になった。
今回のCOP/MOP2では、具体的なレビューは行われなかったが、とりあえずレビューが2008年に行われ、それにむけてのプロセスが合意できた点が一番大きな成果である。
ナイロビ会議、京都議定書にとってほんの小さな一歩前進
記者発表資料 2006年11月17日
【ナイロビ、ケニア発】ナイロビ会議は、京都議定書以降のCO2排出削減に関する公式な交渉を2007年に始める、というプロセスを維持することにより、小さな一歩前進で終わった。
国連気候変動会議に集まった閣僚たちの議論は、地球をより安全で、低炭素の未来への方向へわずかながら推し進めた。しかし、閣僚たちは、2013年以降におけるより大幅な削減のために今必要な明確な決定を行う機会を逃した。
「ナイロビ会議では、小さな前進は見られたが、政策決定者たちは、科学的な根拠および世論が、実際にはナイロビで合意されたこと以上のものを求めていることを認識するべきだ。ナイロビ会議は、確かに今後の議論のために十分な基盤を提供したが、WWFは引き続き、ここでの議論が気候変動という、人々や地球にとっての挑戦に見合うものになっていくように強く訴えていく。」とWWF気候変動プログラム・ディレクターのハンス・ベロームは述べている。
「閣僚たちは、来年のインドネシアでの会合が、大幅な削減のための本当の交渉を開始し、地球の平均気温の上昇幅を産業革命前から比べ2℃以下に抑えるための最後の機会になる、という明確なメッセージを本国に持ち帰らなければならない。」
WWFは、ナイロビにおける適応基金の合意を歓迎はするものの、その資金規模は、途上国における社会、環境上の問題に対応するのに必要な額にはるかに及ばないレベルである。
京都議定書の第一約束期間が終了する2013年以降にCO2を削減するためのタイムテーブル(計画表)はまだない。2008年までにこの議論を終了させ、活発なカーボン市場を保証するためには、今合意が必要である。
ハンス・ベロームは語る、「道はまだ遠く、残された時間はわずかしかない。世界中に広がっている温暖化の破壊的な悪影響は、無視できるものではなく、金持ちの国々が次のステップに歩みだすリードを取らなくてはならない。鍵となる途上国の中からは、将来にわたる京都議定書のプロセスを前に進めるような前向きなアイデアも出されたが、彼らももっとこのプロセスに関わらなくてはならない。」
「気候変動は、アフリカが何年もかかってやっと成し遂げてきた脆弱な経済体勢を崩してしまい、巨大なスケールで自然を破壊している。ナイロビにおける国際交渉は、前向きなモメンタムが多少はあったものの、地球が直面している挑戦に比べれば、明らかに野心に欠けたものであった。」
現地入りしていた、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーは次のようなコメントを寄せている。「厳しい交渉の中にも、南北の信頼醸成のためのプロセスの萌芽を見ることができた。CDMの決定のように、問題はありつつも、すでに制度として育てていくことを前提として行われている決定もある。気候変動の現状を考えると、今回以上に交渉のスピードアップが求められるが、少なくともその道筋は今回確保できたと思う。」(山岸尚之)
「表面上は先進国と途上国の対立は深いが、その中にも大量排出をしている発展途上の国々は、何らかのコミットメントをしなければならないときが近づいており、その準備をしていると感じられ、前進を感じさせられるCOPMOP2であった。」(小西雅子)
COP/MOP2終了 ナイロビ会合は小さな「一歩前進」 2006年11月21日
ナイロビで開催されていた、第2回「京都議定書」締約国会議(COP/MOP2)が終了しました。今回の会議は、「京都議定書」の二酸化炭素の排出削減が約束期限を迎えた後、2013年以降の排出削減について、2007年に公式な交渉を開始する、というプロセスを維持するに止まる結果で終わりました。
ナイロビの「小さな一歩」
11月6日からアフリカ・ケニアのナイロビで開催されていた、第2回「京都議定書」締約国会議(COP/MOP2)が、17日、終了しました。
今回の会議は、「京都議定書」で先進各国に二酸化炭素の排出削減義務が課された、第一約束期間が終了後(2013年以降)の排出削減について、2007年に公式な交渉を開始する、ということが確認されるにとどまり、いわば「小さな一歩前進」を見た会議となりました。
これは、決して後退ではないものの、各国政府の代表がこの会議で、大幅な温暖化防止のために今必要とされる決断を下す機会を逃したことを意味しています。
ナイロビ会議では新たに、温暖化の被害を受けた途上国を支援する「適応基金」について合意があったほか、世界の二酸化炭素排出量の20%を占めるといわれる、森林破壊の防止活動を、排出削減の取り組みとして検討するなどの試みが認められました。
しかし、京都議定書の第一約束期間が終了する2013年以降、国際社会が二酸化炭素の排出を削減するための「計画表」はまだ作られていません。2008年までにこの議論を終了させ、未来を考えた行動を起こすためには、すぐにも世界が積極的な温暖化の防止に向け、合意することが必要です。
会議の終了に際し、WWFの気候変動プログラム・ディレクターのハンス・ベロームは次のように述べています。
「ナイロビ会議では、小さな前進が見られました。しかし、世界の政策決定者たちは、科学的な根拠や各国の世論が、ナイロビで合意されたこと以上のものを求めていることを認識するべきです」。
2007年には、インドネシアで第3回会議(COP/MOP3)開かれます。WWFは各国の政府代表団が、この会議までに、温暖化の影響が深刻化するぎりぎりの線である、地球の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べ2度以下に抑えることの必要性を訴えるメッセージを本国に持ち帰り、大幅な二酸化炭素削減のための「本当の交渉」を開始することを働きかけてゆきます。