2012年【COP18/CMP8】国連気候変動ドーハ会議
2012/11/22
2012年11月26日~12月7日の期間で、国連気候変動会議(COP18・COP/MOP8)がカタール・ドーハで開催されます。2011年の南アフリカ・ダーバンにおいて、ダーバン・プラットフォームが合意され、「2015年までに、2020年からの新しい国際枠組みに合意する」ことが決定されました。今回の会議では、2015年合意へ向けての順調なスタートを切ることができるかどうかが焦点です。
- 【WWF Expectations for COP18 in Doha】
Doha must lay the basis for a fair, ambitious and binding agreement by 2015 - 【WWF Expectations for COP18 in Doha】summary
ダーバンからドーハへ
2011年の南アフリカ・ダーバンでのCOP17・COP/MOP7では、「2015年までに、2020年からの新しい国際枠組みに合意する」ことが決定されました。これと同時に、京都議定書について第2約束期間が設定されることも決定され、緩和・適応・資金・技術といった分野でも、2020年までの取組みに関する重要な合意がされました。
2012年のCOP18・COP/MOP8も、こうしたダーバンでの諸決定を踏まえて交渉が進められます。論点は多岐に渡りますが、あえて単純化すると、以下の4点くらいに集約できます。
- 2015年までに、2020年からの新しい国際枠組みに合意することへ向けて、作業計画を作ること
- 現状、各国が誓約している削減量と、地球の平均気温上昇を「2℃未満」もしくは「1.5℃未満」におさえるために削減量の間に大きな差(ギャップ)がある問題に対して、いかにして全体の削減量を引き上げるか(=「野心のレベルを引き上げる)を議論すること
- 2020年までの緩和・適応・資金・技術分野での国際的取組みについて、ダーバンで議論を詰め切れなかった論点の議論を終了すること
- 京都議定書の第2約束期間の詳細を決定し、2013年から開始できるように準備を整えること
今回の会議は、公式には以下の7つの会議が開催され、上記論点のうち、1と2はADPが担当し、3はAWG LCAが、そして、4はAWG KPが担当することになります。
- COP18(国連気候変動枠組条約の第18回締約国会議)
- COP/MOP8(京都議定書の第8回締約国会議)
- AWG LCA17(枠組条約の特別作業部会17回会合)
- AWG KP15(議定書の特別作業部会第15回会合)
- ADP1(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)
- SBI37(実施に関する補助機関第37回会合)
- SBSTA37(科学および技術の助言に関する補助機関第37回会合)
進展は得られるのか?
会議の見通しは決して楽観視できるものではありません。
ADPについては、2015年までの作業計画が、どこまで詳細に合意できるか不明です。議論の過程では、先進国と途上国の間で、どのように排出削減量を分担するべきかなど、「衡平性」に関する意見の違いもあり、困難が予想されます。また、日本も含めて、各国とも経済の状況がよくない中、いかにして「野心のレベルを引き上げるか」は難しい議論になりそうです。
AWG LCAにおいては、2011年から繰り越された議題の1つとして、資金「源」の議論がありますが、こちらも、先進国はそれぞれに難しい経済状況を抱えており、議論に消極的です。
本来、このAWG LCAやAWG KPは、今回でその役目を終えて終了する予定ですが、この資金支援や技術支援等の分野において何らかの合意を得ずに、終了をすることは難しそうであり、かといって、現状では先進国から積極的な声は出てきていないので、困難が予想されます。
AWG KPについては、京都議定書の改正案の中に書き込む具体的な数値や期間の長さなどが問題となります。EUや、先頃参加を発表したオーストラリアと、途上国との間での議論が中心となると予想されます。こちらも決して簡単ではありませんが、先進国・途上国ともに、今回で合意を得ること自体は強く望んでいるので、最終的には合意が得られるものと予想できます。
日本は?
日本に関連しては、4つ大事なポイントがあります。
その1:排出削減目標
第1は、現在、国内でエネルギー政策と共に見直しが進んでいる2020年へ向けての温室効果ガス排出量削減目標です。
日本は、2009年に出した条件付きの目標、つまり、「2020年までに1990年比で25%の温室効果ガス排出量を削減する」を公式には引き下げていません。また、現状、国内でのこの目標見直し議論が進展していないので、今回のドーハ会議では、新しい目標の発表はできないとしています。
しかし、国内の議論は目標を引き下げる方向で議論が進んでいます。国際的には、上述の通り、むしろ「野心のレベルの引き上げ」を議論しているので、(公式発表はないまでも)この日本の国内動向が国際社会の目にどう映るのかが課題です。
その2:資金支援
第2は、途上国が重視する「資金支援」の分野についての姿勢です。2011年のCOP17における合意で、グリーン気候基金(GCF)の設立は決まりましたが、まだそこへの資金「源」の議論は決着を見ていません。
また、短期資金と呼ばれる資金支援は2012年を持って終了してしまいます。2013年以降、どのような資金支援がありえるのかについての日本の姿勢にも注目が集まります。
その3:二国間オフセット・クレジットメカニズム
第3は、日本が推進する「二国間オフセット・クレジットメカニズム」(BOCM)が国際的に認められるか否かです。上述のAWG LCAの議論の一部として、日本のBOCMのように、個別の国や地域で作られる独自メカニズムが国際的にどのような扱いとなるかが議論されています。
ここで、日本のBOCMのように、国連の外で基本的なルールを作るものが認められるのかどうかも論点です。これについては、途上国や環境NGOからも、環境面が弱くなるのではないかとの懸念の声が挙がっています。
その4:京都議定書の下での柔軟性メカニズム
第4は、日本がクリーン開発メカニズム(CDM)など、京都議定書の下での柔軟性メカニズムを(第2約束期間に参加しないのに)使用できるかどうかという論点です。この論点については、途上国は否定的な見解を持つ国々が多く、どういう扱いになっていくかが注目されています。
WWFが期待すること
WWFは、今回の会議全般に対しては、2015年の合意が、公平で、野心的で、拘束力のある合意とことに向けた基礎がきちんとできあがることを目指しています。
それは、2015年へ向けた着実な作業計画をもちろん含みますが、「野心のレベルの引き上げ」について、具体的なステップが合意されることも大事です。
日本については、こうした合意へ向けて、「守り」の姿勢だけではなく、ぜひとも「積極的な」貢献をして欲しいと考えます。「野心のレベルの引き上げ」に関連しては、目標の引き下げ議論が国内で進行しているため、非常に厳しい状況が続きますが、目標外の議論で貢献をすることも可能なはずです。また、資金についてきちんと方針を打ち出すことが必要です。
また、2015年へ向けてのスタートが切られることも大事ですが、同時に、2020年までの取組みが着実に行われることも大変重要です。危険な気候変動を防ぐためには、世界全体の排出量を、2015年までにピークさせる(減少に転じさせる)ことが必要で、どんなに遅くとも2020年までにはピークさせることが不可欠だからです。
その意味で、今回の合意は、各国での取組みを加速させるものとなることも必要であり、そうした各国の取り組みの「実施」をサポートするための資金・技術支援の分野での日本の役割を重要と言えます。
「2015年」や「2020年」は決して遠い将来のことではありません。きちんとした合意を得るためには、今回、きちんとしたスタートを切れるかが重要です。
関連情報
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温暖化の国際交渉基礎編
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スクール・ダーバン
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