現地レポートあり:COP25「パリ協定」本格実施へ向けた最後の詰め!
2019/11/29
- この記事のポイント
- 世界のほぼ全ての国が参加して地球温暖化に取り組むことを約束した「パリ協定」は、2020年から本格的に実施段階に入ります。2019年12月にスペイン・マドリードで開催される国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)は、その実施に向けた準備の最後の詰めを行ないつつ、迫りくる気候危機に立ち向かう各国の取り組み強化に向けた気運を醸成できるかが課題です。
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積み残されたルールの合意ができるか
2020年からのパリ協定の本格実施に向けて、世界の国々はパリ協定の「実施指針(通称「ルールブック」)」と呼ばれる、詳細ルールを交渉してきました。
複雑な論点が絡み合う難しい交渉でしたが、2018年12月にポーランド・カトヴィツェで開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)において、大筋の合意が得られたことで、パリ協定実施の準備はひとまず整いました。
2019年12月2日~13日に、スペイン・マドリードにおいて開催されるCOP25では、前回積み残された争点について、最後の詰めの交渉が行なわれる予定です。
「市場メカニズム」(第6条)のゆくえ
その中で代表的かつ最も注目を集めているのは、「市場メカニズム/非市場メカニズム」と呼ばれる論点です。
これは、パリ協定第6条に書かれている仕組みについての論点であるため、「6条」と呼ばれることもあります。
「市場メカニズム/非市場メカニズム」は、2カ国以上の国が協力して温室効果ガス排出量の削減を行なう仕組みとして、その設立自体はすでに決まっています。
しかし、特に市場メカニズムと呼ばれる仕組みは、「削減量」を国際的に移転・取引する仕組みであるため、ルール形成のやり方を誤れば、パリ協定の下での各国の削減目標に抜け穴が生じるため、WWFを含む環境NGOはそのルールが十分に厳しいものとなるかを注視しています。
その他にも、温暖化の影響が、社会の適応できる範囲を超えた時に発生してしまう「損失と被害」への対応をパリ協定の下でどう扱っていくのかという論点や、パリ協定の下での目標の期間の長さに関する論点など、重要な論点が話し合われる予定です。
国別目標(NDC)の強化へ向けて
COP25においては、実施指針の最後の詰めに注目が集まりますが、同時に重要なのは、「野心(ambition)」の強化、特に、排出削減量の深堀りに向けた気運を醸成することです。
パリ協定の下では、各国は国別目標(NDC)を策定し、実施することが求められています。
たとえば、日本は「温室効果ガス排出量を2030年までに2013年比で26%削減する」という目標を掲げています。
しかし、2018年10月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書においては、現状の各国の目標のままでは、今後、世界の平均気温は産業革命前と比較して約3℃上昇してしまうと予測されています。
つまり、世界の国々の取り組みは、パリ協定の長期的な目標に全く足りていないのです。
そこで、パリ協定と同時に採択されたCOP21決定において、各国はもう一度、目標を見直す機会を設けられています。
具体的には、2030年に向けたNDCを、2020年2月までに再度提出するか、更新して提出することが要求されています。そして、このNDCの再提出に向けては、当然、削減目標や対策の強化が、全ての国に対して期待されています。
2019年9月にアメリカ・ニューヨークで開催された国連気候行動サミットも、この「NDCの強化・再提出」へ向けた気運を醸成するためのものでした。
若者を中心とした40万人が集まったデモや、スウェーデンの16歳の活動家・グレタ・トゥンベリさんのスピーチも、こうした文脈の中で行なわれたものです。
COP25においても、交渉の内外、会場の内外において、特に非国家アクターと呼ばれる、企業、自治体・都市、NGO、ユースなどによる取り組みのアピールや取り組み強化の訴えが行われると期待されています。
各国、そして日本が、その流れを受け止め、2020年に向けて、取り組み強化のメッセージを打ち出せるかどうかも、今回のCOP25では問われています。
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