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COP27・脱炭素化のさらなる深化に向けて

この記事のポイント
ほぼ全ての国が参加して脱炭素化に取り組むことを約束したパリ協定。2015年の採択から7年が経ち、この国際的な約束を各国が着実に実行しているかが問われるフェーズに入りました。2022年11月6日〜11月18日にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催される国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は、排出量削減対策の強化はもちろんのこと、気候変動影響への適応、「損失と損害」への対応、資金の流れの創出といったパリ協定のあらゆる側面での進展が求められる会議となります。
目次

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パリ協定の「ルール形成」から「実施」へ

2015年のパリ協定採択以降、2020年からのパリ協定の本格実施に向けて、世界の国々はパリ協定の「実施指針(通称「ルールブック」)」と呼ばれる、詳細ルールを交渉してきました。
複雑な論点が絡み合う難しい交渉でしたが、2018年12月にポーランド・カトヴィツェで開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)において、そのパリ協定の「ルールブック」に大筋の合意が得られたことで、パリ協定実施の準備はひとまず整いました。加えて、2021年10〜11月にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26で、積み残された最後の大きなルールであった、国家間での排出量取引を扱う「6条」関連ルールが合意されたことで、パリ協定の「ルールブック」策定作業はひとまず完了しました。
これと並行して、各国はパリ協定で自分たちが約束した削減目標や国内対策の実施を進めていますが、気候危機はますます顕在化しています。2021年〜2022年にまたぐ形で順次発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書は、気候変動が人為的活動を原因とすることには疑いがないこと、世界全体の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、もはや一刻の猶予もなく対策の強化が必要であることが、改めて強調されました。
このような中、2022年11月6日~11月18日にエジプトのシャルム・エル・シェイクにおいて開催されるCOP27には、以下のように大きく分けて3つの期待があります。

問われる本気度

1つ目は、パリ協定が目指す目標、つまり、世界の気温上昇を「2℃より充分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」ことに向けて、明らかに足りていない各国の取組み強化を引き続き促していけるかどうかです。
パリ協定の下で国々は、温室効果ガス排出量削減目標を中心とする気候変動への取り組みを、NDC(Nationally Determined Contributions)と呼ばれる文書として国連に提出することが求められています。多くの国がNDCの中で2030年を目標年とした削減目標を約束しています。
そして、2015年にパリ協定が採択された時のCOP決定で、各国は前回のCOP26までに、削減目標をもう一度検討および再提出することになっていました。他の多くの国とともに、日本も2021年4月に目標を改定し、従来2013年比26%削減であった目標を、同46%削減とし、さらに「50%への高みに向けて」挑戦すると宣言しました。しかしそれでも、COP26前に発表された国連の報告書では世界の削減目標量がパリ協定の目標実現には足りないことが示されたため、COP26では各国に対して、更なる削減量の積み増しを要請したのでした。
COP27を目前に控えた2022年10月26日に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が発表した報告書によると、COP26以降、目標を改定した国は24カ国にのぼりました。しかし、提出し直された各国の排出量削減目標が実施されたとしても、世界は、2.1〜2.9℃の気温上昇を経験することになると予測されています。
こうした現実があるため、今回のCOP27でも更なる削減量の積み増しに向けたメッセージを出すかが議論になります。加えて、前回のCOP26の決定によって、今回のCOP27では、各国の取組みを強化していくための「緩和作業計画」の策定が求められています。この作業計画がどのような内容になるべきかについての各国の意見の差異は大きいため、予断を許しませんが、いずれにしても、足りない削減量を埋めていくような実質的な効果が期待できるようなものになっていくかが鍵です。

今のNDCでは、世界は2.7℃上昇へ  ©UNFCCC事務局報告書よりWWFジャパン作成

適応、「損失と損害」、資金

2つ目は、パリ協定における排出量削減以外の部分での取り組みを、さらに拡大させていく合意に向けて、進展を見せられるかどうかです。
たとえば、気候変動の影響が顕在化する中で、その影響に対する「適応」対策についての世界的目標を作成すること、影響に対応しきれなかった際に発生する「損失と損害」を救済する仕組みを作ること、そして、排出量削減対策や適応対策に必要な「資金」の流れについて、2025年以降の目標に合意することなどです。
いずれも、今回のCOP27で決着がつく予定ではありませんが、交渉が進展するかどうかが注目されています。
特に、今回は気候変動の影響が顕著に表れているアフリカでの開催ということで、適応対策や「損失と損害」の救済に関する仕組みについて、何らかの進展があるべきだという気運が高まっています。「損失と損害」は、先進国の立場からすれば、ともすれば気候変動で発生した被害に対する補償責任につながるため、できる限り専門的な知見の面での支援だけに限りたいと考えている一方で、途上国の側は、具体的な救済措置を資金面でも得たいという希望があり、相当に難しい交渉になることが予想されています。
これらの他にも、COP26で大枠が合意された「6条」に関する詳細ルール交渉は続く他、2023年が本番を迎えるグローバル・ストックテイク(世界的な取組みの進捗点検)の準備作業などでも、進展が期待されています。

交渉「外」でのイニシアティブ/パートナーシップ等の発表

3つ目は、昨年に引き続き、交渉の「外」で発表されるイニシアティブやパートナーシップの発信です。
近年のCOPでは、国連会議としての正式な合意とは別に、会期中に自主的に有志で発表される様々なイニシアティブやパートナーシップ等の発表も重要な要素となってきています。それは、各国政府だけでなく、非国家アクターと呼ばれる企業、自治体、市民団体、消費者団体、労働組合など、様々な主体が互いに連携して発表されるケースが増えています。
前回のCOP26の際にも、140カ国のリーダーが集まって発表された森林減少を2030年までにゼロにして回復へと反転させる宣言や、議長国イギリスが主導して各国政府や政府機関で連携して発表した石炭火発廃止方針や海外の化石燃料施設への支援停止宣言、ネットゼロを目指す世界の金融機関が集まって発表したGFANZ (Glasgow Financial Alliance for Net Zero ) など、様々なイニシアティブ・宣言・パートナーシップが注目を集めました。もはや、COPの成果を語る際には、正式な合意をみるだけでは把握しきれない状況となっています。
COP27では、準備期間が長かったCOP26ほどには多くのイニシアティブ等の発表があるとは期待されていないものの、昨年発表されたイニシアティブでの進展発表も含め、交渉「外」での動きも活発にありそうです。
また、COP27の直後の12月には、生物多様性条約のCOP15がカナダ・モントリオールで開催され、ポスト2020生物多様性枠組(Global Biodiversity Framework)が合意予定であることから、気候危機と生物多様性減少という2つの世界的危機を同時解決する重要性を訴えるイニシアティブが出ることも期待されています。

WWFが求めること

WWFネットワークは今回のCOP27では以下の点を重視しています。

  • 全ての国々が、特に最も責任と能力もある国々が率先して、気候変動対策を強化し、足りない削減量のギャップを埋めていくことを、首脳・大臣レベルで約束すること
  • 前回のCOP26での化石燃料に関する決定をふまえ、世界的なエネルギー危機の状況下にあっても、化石燃料から、再生可能エネルギー主体の効率的なエネルギーシステムへの公正な移行を加速すること
  • 気候変動影響の最前線にいる人々を救済するために、損失と損害に関するファシリティ(基金)を設立すること
  • 国連気候変動枠組条約とパリ協定で約束された資金支援の約束と削減目標の実施を共に、着実に実施していくこと
  • 全ての国々、および非締約国ステークホルダー、市民社会、先住民、女性、ユース、最も気候変動影響に脆弱なコミュニティの代表などが、意思決定プロセスに実効的に関与できるようになること
  • 気候変動対策が、生態系の保護・持続可能な管理・回復に貢献し、かつ、生態系による気候変動緩和・適応対策への貢献ポテンシャルを強化するようになる方向性を作ること

日本について言えば、今回のCOP27での上記の3つの分野それぞれにおいて建設的な貢献をすること、世界の脱炭素化潮流を受け止め、国内対策の議論に反映させていくこと、特に、カーボン・プライシング施策の導入や石炭火発のフェーズアウトが加速されることを期待しています。

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