2010年【COP16/CMP6】国連気候変動カンクン会議
2010/11/26
2010年11月29日から12月10日までメキシコのカンクンにおいて、第16回気候変動枠組み条約締約国会議および第6回京都議定書締約国会合(COP16/CMP6)が開催されます。これは、地球温暖化を防ぐために国際社会が交わした約束「京都議定書」が最初の期限を迎える2012年以降の、新たな協定を話し合うための、世界最高峰の国連の会議です。
COP16/CMP6について
ポスト京都議定書のゆくえ
地球温暖化対策のための、初めての国際協定である「京都議定書」の第1約束期間は2012年まで。
2013年以降については、どのような協定を結び、温暖化防止を進めていくのか、今まさに国際交渉が行なわれているところです。
しかし、2012年までには、もう時間がありません。
本来は2009年末にデンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15(第15回気候変動枠組み条約締約国会議)で、京都議定書の次の国際協定に、各国は合意するはずでした。
しかし、この協定の合意は実現しませんでした。
温暖化の防止に必要なCO2の排出削減は、経済活動に直結します。従って、各国ともに、温暖化防止には賛成、でも、自分の国がより多く排出削減を行なうのは反対、ということになり、合意に至らなかったのです。
温暖化対策のための国際交渉は、こうして常に困難な形で、熾烈に行なわれています。
コペンハーゲン合意
この2013年以降の協定(議定書)についての国際交渉は、実は4年にわたって続けられてきました。
そして、2009年のコペンハーゲンCOP15では、あまりの問題の大きさに、各国の交渉団レベルでは話がまとまらず、とうとう各国の首脳が登場。アメリカオバマ大統領をはじめ中国、インド、日本を含む100カ国以上の首脳が会議に参加し、決裂寸前であった会議をなんとかまとめて、「コペンハーゲン合意」という「政治合意」にこぎつけました。
これは、期待されていた議定書のような法的拘束力のある約束ではありませんが、はじめて世界が「気温の上昇を2度未満に抑えること」を明記したこと(それ以上の上昇は地球の環境に深刻な影響を及ぼすと予想されている)や、またアメリカを含む先進国や、中国などの主要な途上国も、はじめて国際的に削減目標や削減行動を表明する内容になりました。
また、先進国から途上国に2012年までに300億ドル、2020年には1000億ドル動員して、温暖化防止のための資金援助をすることも、合意に組み込まれました。
この内容に、会議に参加する194か国中約140カ国が賛同し、かろうじて政治合意はなされたのです。
COP16の役割
ところが、2010年に入って継続されている国際交渉では、せっかく決まりかけたコペンハーゲン合意の内容についてまで、交渉が蒸し返されてしまいました。
2010年のメキシコのカンクンでのCOP16において、コペンハーゲン合意をより強化し、法的拘束力のある合意が交わされることが期待されますが、交渉の混乱によって、まずカンクンCOP16での議定書合意は無理な状況になっています。
せめて、2011年末に、南アフリカで行なわれるCOP17において、2013年以降の約束を定めた次の協定に合意できるように、なんとかこのメキシコCOP16で、交渉を少しでも前へ進めておかなければならないわけです。
ではCOP16で何が期待されているのでしょうか。
世界のほとんどの国が言っていることは、バランスのあるパッケージ合意です。
途上国と先進国の思惑
「バランスのある」これが何を意味するかは、先進国、途上国において大きな違いがあります。
先進国が思っている「バランス」とは、主要な途上国が、高い削減目標を持って国際的に見える形で削減行動をとっていくことと引き換えに、途上国への資金や技術援助を行なう、というバランス。
一方途上国の考えるバランスとは、歴史的に排出責任がある先進国が、アメリカも含め十分に高い削減目標を掲げること、そして途上国の低炭素型の発展を支援する資金と技術協力を十分に行なうことと引き換えに、途上国も削減行動を行なっていく、というものです。
似て非なるバランスを双方が想定しているわけですから、無論のこと、合意は簡単ではありません。
WWFでは、今回のCOP16に求められる結果として、次の内容を挙げています。
それは、すでに合意に近づいている論点、たとえば森林減少防止の仕組みや、途上国への温暖化防止のための技術移転などの項目を合意に仕上げ、2012年の南アフリカCOP17で、次の法的拘束力のある協定を決める道筋を、今回のCOP16で合意することです。
京都議定書の延長について
しかし、合意に向けた筋道には、さまざまな困難も存在し続けています。
その一つが、「京都議定書の延長」についての議論です。
これは「京都議定書の延長」、つまり、2012年までの第1約束期間に続く第2約束期間を定める、というもので、議定書が定められた当初から可能性が想定されていた展開の一つです。
これを求めているのは、主に途上国の国々です。
そもそも京都議定書は、先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた協定。
いくら主要な途上国が排出を急増させているといっても、国の総排出量を国民一人当たりで割ると、中国はまだ日本の半分以下。アメリカの4分の1にも達しません。インドに至っては、日本の10分の1です。
また、現時点で起きている地球温暖化は、産業革命以降CO2を排出し、発展してきた先進国が引き起こしている事態です。
このため、まだまだ開発を優先する権利を主張する途上国は、先進国側に先に排出を減らすように、つまり「京都議定書」の延長を強く求めているのです。
会議の行方を握る「京都議定書」の扱い
もちろん、次の国際協定においては、必ず京都議定書に入っていないアメリカも、また急速に排出を増加させている中国やブラジルなどの主要な途上国も、削減行動をとらなければなりません。
しかし、合意に向けた進展が困難を極めている今の国際交渉の現状を考えると、いきなりこうした新たな一つの議定書に合意することは容易ではありません。
たとえば、京都議定書(第2約束期間)に加えて別の枠組み合意を結び、前者でカバーされないアメリカや中国などを後者でカバーし、結果として先進国、途上国それぞれが取り組むべき、温暖化防止の約束を交わす方法も、視野に入れる必要があります。
COP16を前にEUも、途上国との衝突で、暗礁に乗り上げている国際交渉を前に進めることを意図し、「一つの議定書が理想的ではあるが、すべての主要国が参加する枠組みを含む広い成果の一部として、京都議定書の第2約束期間について検討する意思」があると表明。
オーストラリア、ニュージーランドも、交渉姿勢を同じ方向に切り替えました。
しかし、日本とロシア、それに京都議定書の義務を投げ出したカナダの3国だけは、京都議定書の継続を拒否する姿勢を見せています。
これを捉えて途上国は「先進国は強い削減義務から逃れたいのだ」とし、強い拒否反応を示しています。
これは、会議全体の進展を遅らせることにつながってしまいます。
問われる日本の姿勢
メキシコでの今回のCOP16においても、日本が京都議定書の第2約束期間について強く反対する立場を主張し続ければ、交渉そのものを決裂させてしまうおそれもあります。
今国会に提出されている温暖化対策基本法には、「すべての主要な排出国が参加すること」を前提に日本が25%削減目標を持つ、という記述が入っていますが、その目的は「すべての主要な排出国」が、きちんと意味ある形で参加した温暖化防止の枠組みを作ることであり、京都議定書の延長を阻止することではないはずです。
今、日本では、国連の多国間の交渉によるCDMなどの仕組みが煩雑であるという理由で、二国間で削減プロジェクトを行ない、二国間でルールを決めてクレジットを発行して、日本の目標達成に活用するという「二国間クレジット制度」というものが、盛んに取り沙汰されています。
いったい国連で国際交渉が行なわれている中、多国間によるルール作りではなく、二国間だけのルール作りに日本が走る意義が、どこにあるのか。世界から問われています。
もちろん、交渉の進展を待つだけではなく、できることから進めて、いずれ国連の交渉の場に貢献したい、ということならば歓迎すべきことですが、京都議定書の第2約束期間には絶対反対し、そして二国間ではルール作りにいそしむ、というのでは、世界の理解は得られません。
今、世界が真剣に取り組んでいる国際交渉の妨げないように、日本は配慮する必要があるでしょう。
メキシコのカンクンで開かれるCOP16。
その目的は、ただ一つの世界共通の目的、地球温暖化を防止し、環境と未来への深刻な影響を食い止めることです。
WWFは世界から地球温暖化専門のスタッフ約50人が参加し、各国からの知見とネットワークを最大限活用しながら努力していきます。世界が協力し、なんとかCOP16で成果が上がってほしいと願っています。
温暖化防止「カンクン会議」COP16、始まる
(2010年11月26日)
2010年11月29日からメキシコの町カンクンで、国連の温暖化防止条約会議COP16が開催されます。すでに、今回の会議での、京都議定書に続く新たな議定書の合意は困難と見なされていますが、たとえその合意が翌年に持ち越されるとしても、その道筋にあたるCOP16には、きわめて重要な役割が課されることになります。WWFでは現地にスタッフを送り、会議の行方を追いつつ、各国政府への働きかけを行なっています。
温暖化防止のための、新たな世界の約束に向けて
2010年11月29日から12月10日まで、メキシコの町カンクンで、いよいよ気候変動枠組条約第16回締約国会議および第6回京都議定書会議(COP16/CMP6)が開催されます。
2009年末にデンマークのコペンハーゲンで開かれた会議(COP15)の混乱から1年。
その間も、京都議定書の第一約束期間(2012年まで)に続く、新たな温暖化防止のための世界の約束、すなわち次期(2013年以降)枠組みの議論が続けられてきました。
しかし、その状況は芳しくなく、今回のCOP16でも合意達成は困難と見られており、焦点はすでに、2011年に開かれる、南アフリカでのCOP17に移っています。
それでも、今回のCOP16会議には、大きな意味があります。
何より、京都議定書の第一約束期間が終わるまで、もう時間がありません。新たな協定への最終的な合意がCOP17に持ち越されるとしても、今回のCOP16でどれだけ各国が歩み寄り、合意に寄与できるかが、カギとなっているのです。
利害がからむ疑心暗鬼の中で世界の国々が知恵を絞る、温暖化防止のための国際会議。
その目的はただ一つ、世界共通の目的である、地球温暖化を防止し、環境と未来への深刻な影響を食い止めることです。
会議を成功に導くため、WWFも世界各国から地球温暖化専門のスタッフを現地に送り込みました。
世界が協力し、なんとかCOP16で成果が上がるように、会議の行方を追います。
メキシコ・カンクン会議(COP16・COP/MOP6) 第1週目報告
(2010年12月6日)
2010年11月29日からメキシコのカンクンで始まった、第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16・CMP6)。第1週目の交渉を終えました。どのように議論が進んでいるのか。決して順調ではありませんが、「いつも通り」難航しつつも、交渉は淡々と進められています。現地から、第一週目の終了に際しての報告を送ります。
会議全般の様子
今回の会議では、公式には6つの会議が並行して開催されており(下表を参照)、最初の3日間は、それぞれの総会が開催される傍ら、個別議題についての議論が始められました。
- COP 国連気候変動枠組条約の締約国会議
- COP/MOP 京都議定書の締約国会議
- SBI COP及びCOP/MOPの補助機関。制度・組織に関わる議題を主に扱う。
- SBSTA COP及びCOP/MOPの補助機関。技術や科学に関わる議題を主に扱う。
- 条約AWG(AWG LCA) COPの下に作られた作業部会。
- 議定書AWG(AWG KP) COP/MOPの下に作られた作業部会。
3日目以降は、徐々に個別議題での議論にシフトしています。
個別議題での議論は、「コンタクト・グループ」「インフォーマル」「ドラフティング・グループ」「スピンオフ・グループ」など、様々な名前で呼ばれるいわば分科会のような場で並行して進められています。これらの場には、各国からそれぞれの個別議題の担当者が参加して交渉をします。
たとえば、金曜日の午前中には、温暖化の影響にどう対応するかという「適応」に関する「コンタクト・グループ」と並行して、別の部屋では、「森林吸収源」によるCO2吸収をどう算定するのかというルールに関する「インフォーマル」が開催されていました。3〜4つの交渉が同時並行で進められるということもよくあり、会場内では書類を抱えた各国政府代表が足早に駆け抜けていく光景も見られます。
上で挙げた4つの形式の場のうち、「コンタクト・グループ」はNGOや研究機関のような「オブザーバー」と呼ばれる団体が傍聴をできるオープンな会合ですが、それ以外は、NGOなどのオブザーバーは傍聴することができません。交渉は、現在、ほとんどが傍聴不可の交渉の中で行われているため、状況は断片的にしか分かりません。
そのため、NGOは、交渉から出てきた政府代表を捕まえて聞いた情報や、別途公式に政府代表団との会合を設定して得た情報を元に意見を作成し、今度は逆に政府代表たちに働きかけを行なっています。
日本の非建設的な発言が議論に暗雲をもたらす
初日の議定書AWGにおいて、日本政府は京都議定書の第2約束期間について「2020年目標はコペンハーゲン合意の下で掲げた目標であり、京都議定書の下で掲げたものではない。いかなる条件下でも京都議定書の中に目標を書き込むことはない。京都議定書は地球的な解決策につながらない。条約AWGのみがこれをできる」と述べました。
この発言、特に「いかなる条件下でも京都議定書の中に目標を書き込むことはない」という表現は、京都議定書の存続を重視する多くの途上国にとっては、交渉そのものの拒否として受け止められ、強い反発を招きました。基本的には日本と立場を同じくする先進国の代表も、日本が初日からこのように強い発言をしたことは驚きだったようです。
現在、将来の枠組みのあり方をめぐっては、基本的に2つの考えが対立しています。1つは、「2トラック・アプローチ」と呼ばれる考え方で、これは、「京都議定書の改正」と「新しい法的拘束力のある合意」を目指すというアプローチです。もう1つは、「1つの条約アプローチ」と呼ばれる考え方で、これは、京都議定書ではない新しい条約(議定書)を、国連気候変動枠組条約の下に作るという考え方です。
国によって、それぞれ微妙にニュアンスが違いますが、途上国は全般的に前者を支持しています。EUは、後者を基本的には支持しつつも、いくつかの条件が達成されるのであれば前者でも良いとする立場をとっています。オーストラリア、ニュージーランドなどは、後者を支持していますが、あえて前者を強く否定することはしません。日本、ロシア、カナダは、後者を強く支持しており、時に前者を否定します。アメリカは、そもそも京都議定書に入っていないので、どちらがどうという立場はとりません。
今回の日本の発言は、1つの条約(もしくはそれに類する法的枠組)を目指す立場を明確にし、「2トラック・アプローチ」を明確に否定したものと言えます。国連の交渉では、こうした形で交渉そのものの拒否ととられるような立場の表明をすることは、特に交渉開始の初日では稀です。それゆえ、日本が従来から「1つの条約」を好む主張を持っていることを知っている他の国々からも、「日本はそもそも交渉に臨む姿勢がないのか」という疑念と批判を招くことになりました。
日本政府はことあるごとに、「京都議定書は世界全体の排出量の約3割程度しかカバーしておらず、効果が限定的だ」ということを、京都議定書の第2約束期間の設定に反対する1つの理由として挙げてきました。また、「2つの条約でできることなら1つの条約でやった方がよい」ということも理由として挙げています。
一見、もっともな意見ですが、そうした意見だけが理由ではありません。たとえば、日本が嫌う、京都議定書の中にある「遵守」規定(守れなかった時の罰則等を定めている)が入っている仕組みからは将来は抜けたい、という意図も垣間見えます。また、原理上、「2つの条約」でやってもできないことではそもそもなく、既存の京都議定書を活かすことは当然できます。
途上国からすれば、「京都議定書の存続」は、先進国が引き続き温暖化を「引き起こした」ことに対する責任を果たすシンボルとして捉えられており、京都議定書の事実上の形骸化を招く日本の主張は、たとえその中の一部に理があったとしても、受け入れられません。
環境NGOからも、日本の発言はこの場を成功に導くつもりがないのかということで、驚きと批判を持って受け止められ、その日に最も交渉にとって後ろ向きな発言をした国に贈られる「本日の化石賞」を日本に授賞しました。
アメリカや中国が参加する国際枠組みが作られることはもちろん大事ですが、そのためにしているつもりの主張で、この交渉自体を壊してしまえば、元も子もありません。中には、そもそもそれを意図しているのではないかと疑う声すら出てきてしまう状況です。日本政府にはより慎重な対応が求められます。
各分野ごとに「通常通り」難航する交渉
各分野ごとに進められている交渉も、難航しています。
ただし、多くの国々は、今回のカンクンでの会議を成功に導くべく、なるべく建設的に望もうという姿勢を見せており、意見の相違が簡単に解決できるというわけではないものの、第1週目の交渉の状況はそれほど悪くありません。
議長国たるメキシコも、2009年のデンマークが不透明なプロセスによって大きな批判を招いたことを教訓とし、なるべく透明なプロセスを心がけ、交渉参加国に丁寧な説明と協議を続けています。去年は、交渉の最中にいきなり議長国が密に準備していたテキストが出てきたりしたり、終盤に首相を集めて行われた会議が不透明だったことに批判が集まりましたが、今回はそうしたことが無いように注意が払われています。このため、交渉参加国も、議長国たるメキシコの精神をなるべく尊重しようとする姿勢が見えます。
具体的な各分野での交渉では、たとえば、先進国から途上国への「資金」の支援に関する議題では、2020年までの「長期」の資金、2012年までの「短期」の資金、そして、新しい「基金」の設立、といった3つの論点が議論されています。資金に関する議論は、他の分野との関係も深く、他の分野の議論の進展にも響いてくる可能性が高い分野です。
また、先進国が目標達成の際に活用できる新しいメカニズム(既存の「クリーン開発メカニズム(CDM)」とは別のもの)に関する議論では、市場ベース("クレジット"を創出して売買を可とする)タイプと非市場ベース("クレジット"の創出をしない)タイプの2つを検討するプロセスを作るか作らないか、といったことを議論しています。一部の国々は「市場ベース」の仕組みを作ることに強く反対しており、ここも難航が予想されています。
こうした交渉は、各国がお互いの意見を言いあうフリーディスカッションのような形で行われている分野もあれば、具体的に合意文書の一言一句を調整する作業に突入している分野もあります。
ここに挙げたのは、議論されている論点のうちのほんの一部にしか過ぎません。この他にも、様々な論点が並行して議論されており、第2週に向けて、どのようにまとめていくのかが注目されます。
AWG会合報告:交渉のベースとなる議長テキストに合意
アメリカと中国を入れた新しい条約の議論の場である条約AWG(アドホック・ワーキング・グループ)会合では、会議の始まる直前にマーガレット・ムカハナナ・サンガルウェ(ジンバブエ)議長が、新しいテキストを用意しました。
これは議長が締約国にこのような要素で合意するのはどうかと出した提案で、正式な交渉文書になっているものではありません。それを元に1週間議論した後、2週目の大臣会合を前に、改定した議長テキストが出されました。
これは、33ページにまとまって、意見の相違を踏まえて話し合えるようになっており、交渉のベースにするにはいい文書です。産業革命前に比べて気温上昇を2度未満に抑えることや、最新の科学の情報を元に削減目標を見直す過程を立ち上げること、アメリカを対象とした削減目標の確保や、中国など主要途上国を対象とした削減行動の国際的な監視など、必要な項目は入った内容になっています。
12月3日に議長テキストを前に議論した各締約国は、なんとかこのテキストを基にしてこれから議論を進めていくことに合意しました。これまでは、どのテキストを元に交渉を進めていくかを決めるのさえも、合意できていなかったので、このことは進歩といえます。
主要な論点3つの行方に注目!
今回の条約AWG会合で注目される点は、以下の3つです。
1.先進国・途上国双方の削減目標を明らかにしていくこと
コペンハーゲン合意において、アメリカと中国を含む世界各国が国際的に発表した削減目標及び削減行動を、新しい条約、あるいは、京都議定書の中の目標として組み入る道筋をつけられるか。また、削減目標・削減行動は、各国が条件を明らかにしないまま発表しているものなので、その条件を明らかにする過程を立ち上げられるか(つまり削減目標の中に森林吸収源がいくら入っているのか、オフセットをどれくらい予定しているのかなど)
2.途上国の削減行動を確保すること=削減量の算定・報告・検証の仕組みを立ち上げていくこと
削減量は、算定・報告・検証していくことによって、確実に削減を行なっていることをお互いに認め合うことになります。そのため算定・報告・検証(MRV=Measurable Reportable Verifiable)の仕組みを立ち上げることが非常に重要なのです。しかし、途上国は、まだ削減目標を持ったとしても、果たして本当に削減しているのかを国際的に報告したり検証したりすることに強い抵抗感を示しています。というのは国際的に報告したり検証を受けたりすると、約束した削減行動を着実に行なっているかどうかを、国際社会に監視されることになります。それはつまり途上国が確実に削減行動をとるように拘束することにつながるので、先進国は強く進めようとしているわけです。一方途上国は、あくまでも途上国の削減行動は自主的なものに留めたいために、国際社会からの監視を嫌がっています。
2009年のCOP15では、削減した分については、国際的に決めたガイドラインに従って、国内で検証し、それを国際社会に報告するということが、なんとか合意されました。玉虫色ですが、直接途上国の削減量を国際的に検証することはできないものの、国際的に決められたガイドラインにしたがって自国内で検証させることになるので、結果として国際的に監視できることを確保したのです。その国際的なガイドラインを決める「国際コンサルテーションと分析(ICA=1International Consultation Analysis」の仕組みの立ち上げが合意されました。
そこで今回の注目点は、算定・報告・検証(MRV)の仕組みを立ち上げられるように議論を進めること。そして「国際コンサルテーションと分析」の内容についてつめられる過程を立ち上げていくことです。
一見するとテクニカルに見える議論ですが、要は今の温暖化交渉の一番の焦点である主要途上国の削減行動を促し、確保していく作業なのです。ちなみにMRVは、先進国についても話し合われており、京都議定書の枠外にいるアメリカの削減目標達成を実質的に確保する手法としても機能することが求められています。この点でしっかりしたものができれば、新しい枠組みの法的な形はともかく、実質的な約束をとっていくこともできるので、隠れた一番の注目点といってもいいでしょう。
この会議のキーワードは、「MRVとICA」です!
3.資金援助の形や資金源の議論を進めること
途上国の適応や技術移転を進め、森林減少を防止する論点のテキストは合意されているところが多くなっています。そのすべての鍵は、先進国から途上国への資金援助です。その資金については、どのような組織で管理するか、そして2020年に1000億ドル単位で必要となる莫大な資金を生み出す資金源を、どのように設計していくかについて議論する道筋を立ち上げることが大切です。資金源については、たとえば飛行機に乗る人に少しずつ航空税を払ってもらう、などの方法が話し合われています。これらは国連のバンキムン事務総長のリードでまとめられた専門家報告AGFを元に今後議論するプロセスが立ち上がることが期待されます。
以上ほかにも大切な論点はたくさんあるのですが、大まかに3つにまとめてみました。ぜひこの論点も注目して会議の経緯をおっていただけばと思います。2週目になって、各国大臣が続々と入ってきています。実りのある会議結果が望まれます。
COP16閉幕 「カンクン合意」が採択されました!
(2010年12月13日)
メキシコのカンクンで開催されていた、国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が、2010年12月11日未明に、「カンクン合意」を採択して閉幕しました。紛糾が常となっている温暖化防止のための国際会議にですが、今回の会議では、議長であるメキシコのエスピノーザ外務大臣の手腕により、過去5年間で最も交渉が進展した会議となりました。
成功したCOP16
前回、2009年のコペンハーゲン会議において、かろうじてなされた政治合意(コペンハーゲン合意)の惨々たる結果により、国連の下での多国間の議論を疑問視する声が上がる中、今回のメキシコでのCOP16は開催されました。
しかし、今回のCOP16には、2011年のCOP17(南アフリカ)における次期枠組み合意を確実なものとするために必要な足がかりとなる「成果」を出すことが期待されていました。
そして結果的には、議長であるメキシコのエスピノーザ外務大臣の見事なリーダーシップで、「カンクン合意」が成立。過去5年で一番、交渉が進展した会議となったといっても過言ではないでしょう。
というのは、過去5年にわたって議論を続けながら、交渉文書のドラフトすら複数乱立したままで今回の会議に臨んだのですが、なんと気候変動枠組条約、そして京都議定書の両方で、交渉文書が締約国会議(COP)の決定として採択されたのです!
南アフリカCOP17へ向けた必要なステップに
合意内容は、2011年の南アフリカCOP17へ向けての、必要なステップとなったということができます。特に、排出量削減と資金に関するMRV(測定・報告・検証)、適応、資金(新しい「グリーン気候基金」の設立)、REDD+等の分野で一定の進展が見られました。
その内容は不十分な点も多々ありますが、まずアメリカを含む先進国全体の目標と、途上国の削減行動が、決定文書の中に書き込まれました。
その数字の出所は、コペンハーゲン合意の際に発表されたものなので、削減目標を積み上げても科学が示す必要な削減量にはほど遠いのですが、目標が足りないこと自体が認識され、最新の科学にそって見直していく過程も確立されたのです。
また途上国がすぐに必要としている資金援助も、2012年までの短期資金300億ドル、2020年1000億ドルが書き込まれ、不十分ながらそこへ至るプロセスも立ち上がります。結果として、私たちWWFにとっても、期待以上の成果が得られた締約国会議となりました。
ただ2011年のCOP17で、法的拘束力のある枠組みになるかどうかは、先送りされました。このように欠けているところやあいまいな点も多いので、これからの仕事は山積みですが、とりあえず、COP17で京都議定書の次の枠組みに合意するのに、十分なスタートが切れる成果となりました。
京都議定書をめぐる会議の決裂を回避
この会議では、2週間ある会期の初日に日本が「京都議定書の第2約束期間に目標を持たない」と断定した発言をしたことで、最初から紛糾しました。
途上国側は、"歴史的に排出責任のある先進国が率先して削減する"シンボルとなっている、京都議定書の存続を否定する発言なので、当然態度を硬化させ、交渉はこの議論で持ちきりになってしまいました。
同じ先進国でもEU、オーストラリア、ニュージーランドは、他の主要排出国が応分の排出削減を行なう枠組みが立ち上がることを条件に、京都議定書の存続の議論を容認する方針を示していたので、初日に断定的に否定した日本に対し、世界の非難が集まりました。
京都議定書の存続に反対していたのは、日本とロシア、カナダだけでした。日本は孤立が際立つ中、議論はそのことに集中し、他の重要な論点の議論が妨げられてしまいました。途上国、EUや他の先進国、そして世界のNGOは、日本が頑なな態度をとり続けると、会議は決裂してしまうと説得を続けました。
2週目の最終日になって、日本は態度を軟化させ、徹夜の交渉の結果、COP決定として採択されるべきドラフトがまとまったようで、表に出てきたのです。
議長国メキシコによる透明性と信頼の回復
前回のコペンハーゲン会議では、議長国のデンマークが4年も続けている国連の交渉を無視した形で、いきなり27カ国だけで密室で作成した文書を持ち込んだので、27カ国に含まれなかった他の160カ国あまりがいっせいに反発し、結局まとまらなかった経緯があります。
その点、今回の議長国メキシコは、当初から透明性を強調し、密室での作業はないこと、この194カ国のよる国連の交渉の場以外で文書を作っていないことを、たびたび強調して、各国の信頼を勝ち得ていました。
そのため最終日に出てきたドラフトは、あくまでもこの国連の場による各国の言い分をまとめたものであることが、メキシコ議長から改めて明言され、満場の拍手を浴びていました。こうして信頼を積み上げた結果、ドラフトの合意が可能になり、採択されたといえるでしょう。
最後に本会議場でドラフト文書が採択されるときには、さらなるドラマが待ち受けていました。コペンハーゲン会議では、最後にボリビアをはじめるとする中南米諸国やアフリカ諸国の一部が激しく反対し、採択ができなかった経緯があります。
今回のメキシコでもボリビアが強く採択を拒否して、「国連はコンセンサスで決めるのだから、ボリビアが反対しているのだから採択はできない」と迫ったのです。会場は凍りつき、各国やNGOが固唾をのんで見守る中、メキシコの議長は「ボリビアの主張はしっかり記録に残す。
しかし世界がこれだけの努力をし、まとめたものを拒否することは許さない。採択する」ときっぱり言い切って、小槌をおろしたのです。会場は熱狂的な拍手に包まれ、歴史的といってもいい決定がなされました!
今回の合意内容に、WWFは、完全に満足できているわけではありません。しかし、2009年のコペンハーゲン会議での残念な結果以降、国連の下での多国間の取組みが成功するかどうか、失われつつあった「自信」と傷ついてしまった「信頼」の回復には、大きな役割を果たしたと言えます。
ビジネス界も注目!カンクン会議「COP16」報告会を開催しました
(2011年1月21日)
2011年1月13日、WWFジャパンをはじめとする、地球温暖化問題に取り組む環境NGOは、2010年末にメキシコのカンクンで開催された「COP16」の報告会を開催しました。日本国内での報道とは裏腹に、温暖化防止をめぐる国際交渉では、近年では珍しく大きな進展を見た「COP16」。交渉の行方に高い関心を寄せる企業関係者らを前に、現地入りしていた各団体のスタッフが、会議の成果と舞台裏を報告しました。
COP16の「成功」を報告
今回の報告会は、WWFジャパンを含めた環境NGOが主催したもので、2010年末にメキシコのカンクンで開催された第16回気候変動枠組条約締約国会議(COP16)、および第6回京都議定書締約国会議(COP/MOP6)の内容と成果を報告するものです。
この会では、温暖化の条約交渉を追っている環境NGOのメンバーで、COP16の際、実際に現地入りしたスタッフ4名が、会議で採択された「カンクン合意」の内容やその意義、温暖化と世界の森林保全の行方を定めるREDD+(プラス)、また日本政府が今後求められるポイントや、交渉の舞台裏などについて報告を行ないました。
会場には、企業や主要メディア、研究者や学生、関係団体より、定員を超える120名の方が詰めかけ、とりわけビジネス界が抱いている温暖化問題に対する関心の高さが伺われる報告会となりました。
日本国内での「COP16」に対する評価の相違
海外のメディアや、多くの国際環境NGOが指摘するとおり、カンクン会議は、その内容が高く評価される会議となりました。なかなか交渉が進展しないことが常態化している温暖化の国際交渉において、過去5年間でもっとも進展のあった会議となったからです。
事実、「COP16」は、2011年末に南アフリカのダーバンで開催される次期会議(COP17)への展望を拓く、重要なステップとしての役割を果たし、破綻しかけていた国際間の協調を呼び戻す大きな力となりました。
ところが、会議開催中から終了後にかけての、日本国内での報道や政治的な反応は、このような国際社会の捉え方とは異なり、その成果を認める姿勢に欠けた発言が目立っていました。
そうした中で、今回のようにNGOが独自の視点から国際会議の内容を評価し、民間の立場で行なった報告会は、国内にはなかなか伝わらない現場の雰囲気や国際社会の認識を伝える、貴重な機会を提供することになりました。
正念場となる2011年
年末にダーバンでのCOP17を控えた2011年は、地球の未来の温暖化対策の方向性を決める、国際交渉で正念場を迎えるとても重要な年です。温室効果ガスを減らし、低炭素化社会にシフトしていく意志が本当にあるのか、世界が問われる年でもあります。
日本としても、国際公約として掲げた「2020年までに25%削減」の目標達成に向け、地球温暖化対策基本法の成立や、国内排出量取引、環境税、自然エネルギー買い取り制度の導入など、国内対策をきちんと進めていかなければなりません。
そうした変化を今起こさなければ、国はあっという間に世界の潮流から取り残され、国際交渉の舞台でも、新エネルギーに軸足を置いた技術産業の世界においても、明らかに遅れをとることになります。
多くの企業が、温暖化をめぐる国際交渉に高い関心を寄せるゆえんも、まさにそこにあると言ってよいでしょう。
カンクン会議が成功を見たといっても、課題はまだ山積しています。そして、年末のCOP17ダーバン会議までの時間は多くありません。
それでも、世界のリーダーたちには、京都議定書の第一約束期間に続く、新たな温暖化の防止に向けた約束を、未来のため何としても交してもらわねばなりません。
WWFは2011年が、日本をはじめ世界の国々が、低炭素化社会の実現に向けて、大きく舵を切る一年になることを期待しています。
報告会での講演内容(概要)
イベント | カンクン会議(COP16/COPMOP6)報告会~日本のNGOはカンクンをどう見たか~ |
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開催日 | 2011 年1月13日 |
場所 | 東京ウィメンズプラザ 視聴覚室 |
主催 | WWFジャパン、FoE Japan、気候ネットワーク、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、レインフォレスト・アク ション・ネットワーク日本代表部(RAN)、グリーンピース・ジャパン、オックスファム・ジャパン |
動画中継 | Ustreamのサイトへ |
【報告1】COP17に向けたカンクン会議の成果について
WWFジャパン 小西雅子
今回のカンクン会議の成果と、2011年の11月末から12月にかけて南アフリカのダーバンで開催される次期会議(COP17)への展望について発表を行ないました。
今回の会議は、今後の交渉の基礎となる「カンクン合意」が採択されたことが大きな進展でしたが、重要な成果としては二つの点があげられます。
国際交渉の信頼回復
一つは、合意プロセスにおいて「国連の多国間交渉による合意が可能であるという信頼を回復した」こと。前回のCOP15では、ホスト国が文書を不透明な形でまとめようとしたことなどから各国の信頼が損なわれ、結果的に合意を得ることは叶いませんでした。そのプロセスの失敗により、国連のもとで合意を得る方法を疑問視する声も大きくなりましたが、今回は議長国メキシコの外務大臣、エスピノーザ議長が丁寧で透明性の高い形で会議を進行し、各国の信頼を回復して、見事に採択に至ったのです。交渉の進展を左右する議長のリーダーシップの重要性が、改めて認識された会議となりました。
進展した個別テーマの交渉
二つ目の成果は、途上国の排出量の検証や資金移転の仕組みなど「個別テーマの中身が進展したこと」です。カンクンで合意された内容はまだまだ不十分ではありますが、途上国も排出削減の目標を掲げ、達成状況を報告し、国際的な検証を受けるといったルールが作られたことや、先進国から途上国への資金援助や管理の仕組みについて具体化されるなど、大きな進展がありました。
そのほか気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えること、京都議定書の第一約束期間と次の期間との間に空白を作らないことなど、とても重要な内容が盛り込まれました。
ただし、先送りされた課題もたくさんあります。最重要課題の京都議定書の次期枠組みの内容や、途上国への莫大な支援金の資金源をどのように獲得するのかなど、ダーバンで開催されるCOP17に向けて、多くの課題が残されています。
【報告2】ギガトンギャップを埋めるには
WWFジャパン 山岸尚之
現在、各国が立てている温室効果ガスの排出削減目標(先進国)や削減行動(途上国)の数字を積み上げても、国際的な目標となりつつある「2度未満」には足りません。「ギガトンギャップ」とは、その乖離の幅=ギャップのことを言います。
2度未満の目標を達成しようとすると、2020年には温室効果ガスの排出を440億トンに抑えなければなりませんが、約束された目標が最低限達成された場合で+90億トン、きちんと達成された場合でも、+50億トンのギャップがあります。
今回の会議の中で、NGOが特に注目したものの一つが、この「ギガトンギャップ」の埋め方についてです。各国の削減目標の数値の引き上げや、長期的な取り組みを促す仕組みを整備することなど、多くの対策が必要になりますが、その中身の交渉はこれからです。現在は削減目標対象外の国際航空や船舶からの排出をどうするか、温室効果の大きい「代替フロン」をどのように削減していくかなど、問題は山積みです。
いま各国が掲げる削減目標のままでは、世界の気温は3度以上上昇するだろうと計算されています。温暖化抑止のため、ダーバン会議に向けてギャップを縮めるための更なる交渉を進展させること。我々NGOは今後も交渉の行方を追っていきます。
【報告3】REDD+で森林を救えるか?
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部 川上豊幸
「途上国の森林減少と劣化によって排出される温室効果ガスの削減(REDD)」に関する議論の中身について、報告を行ないました。
現在、世界の森、特に生物多様性の高い熱帯林は、違法伐採や無計画な開墾などにより急速に減少しています。
一方、森林減少などによって排出される二酸化炭素の排出量は、世界全体の排出量の2割弱を占めるほどになっています。
最近では、これら森林減少・劣化からの排出に加えて、途上国における森林の保存・管理・強化といった側面も含めて議論することが多く、それゆえ、「REDD+」と呼ばれることが多くなってきました。
このREDD+という分野は、温暖化の防止と森林の保全を同時に進める仕組みとして注目が集まっており、今回NGOが重視した議論の一つでもありました。
中でも特に重要だったのが、REDD+実施のためのセーフガード(負の影響への予防措置)に関する議論。森林減少、森林劣化を食い止めるための政策を実施する上では、天然林は保護し生物多様性の保全もきちんとされているか、ルールが問題なく運用されているかなど、様々な問題が想定されますが、それを事前に防ぐための措置を取ることが不可欠です。
ほかにも資金の問題、先進国の需要による森林減少の対処の仕方、またそもそも「森林」や「森林減少・劣化」という言葉の定義についてなど、多くの不確定な問題が残されています。
【報告4】日本政府の交渉と、これからの課題(枠組みは1つか2つか)
気候ネットワーク 平田仁子
今回のカンクン会議で目立ったことといえば、日本政府が会議の初日に断言した、「京都議定書の第二約束期間に目標を掲げない」という発言。日本は交渉の余地すらみせない強硬な姿勢をとり、会議は紛糾し交渉のかなりの部分がこの議論で持ち切りになりました。
日本がここまで強い態度を取った背景には、規制を設けられることへの国内産業界からの強い反発があります。また二大排出国であるアメリカと中国が入っていない議定書の延長ではなく、主要排出国も参加した1つの枠組みを作ることを強く主張。しかし、主要国を巻き込むことのない、京都議定書だけの「延長」を求めている議論は、実際のところはほとんどありません。
世界のほとんどの国は京都議定書と新しい枠組みの2つを目指しているので、日本のこの頑なな態度は交渉を足止めさせることになりました。
今後の交渉の流れは、京都議定書の第2約束期間と新しい枠組みの2つの柱のもと、どのようにアメリカと中国を巻き込んでいくのか、模索していくことが世界の主流な動きになるでしょう。
日本も、ダーバン会議までのこの一年、「1つの条約」という形式にこだわった自国の主張ばかりを掲げるのではなく、妥協しながら建設的な交渉を行ない、少しでも交渉を前に進める姿勢になることが期待されます。
会場からの反応
各講演者の報告の後、会場からの質疑が寄せられました。
ここでは、今回の日本政府の態度が、今後の国際交渉にどのような影響を与えるのか、また省庁間での温度差があったかどうか、といった質問が寄せられ、日本のとった強硬な姿勢に対する疑問の声も呈されました。
COP16/CMP6 関連資料
- Global climate deal in reach with Cancun outcome
- WWF recommendations for the Cancun Package
- WWF key country demands for Cancun
- EMERGING ECONOMIES
How the developing world is starting a new era of climate change leadership - WWF Media Release:Cancun negotiators need to play catch-up