©WWFジャパン

カワウソ、トカゲ、フクロウ… ペット飼育の責任を考える

この記事のポイント
エキゾチックペット、という言葉をご存知でしょうか。イヌやネコなどとは異なる、珍しい野生動物をペットにしたものです。ここには、トカゲやカメなどの爬虫類や熱帯魚、そして日本で現在大人気となっているカワウソ類などが含まれます。 しかし、こうした動物を売買するため、野生の個体を乱獲したり、違法に取引する事例が多発。絶滅の危機にある野生生物を、さらに追い込む要因にもなっています。 多くのエキゾチックペットの消費、取引にかかわっている日本で、今何が必要とされているのかを考えます。
目次

コツメカワウソの受難

近年、日本で人気が高まり、イベントや商業施設でもよく姿が見られるようになったコツメカワウソ。
個人で飼育する人も多く、SNSなどで写真や動画も拡散されているほか、メディアも大きく注目し、その人気に拍車をかけてきました。
時に160万円もの値が付くこともある、高価な「エキゾチックペット」の一種です。

コツメカワウソ
©David Lawson/WWF-UK

コツメカワウソ。ペットとして、動物園の花形として人気だが…

しかし、こうした風潮と需要が今、深刻な違法取引(密輸)を呼ぶ一因になっていると考えられています。

2019年1月21日、コツメカワウソをタイから日本へ密輸しようとした日本人2名が、関税法違反の容疑で逮捕されました。この事件が起きたのは、2018年10月。飛行機の手荷物に押し込まれた5頭のコツメカワウソを、東京税関の職員が発見し、発覚したものです。

これに先立つ2018年6月にも、同じくタイから日本へコツメカワウソを密輸した疑いで日本人2名が、外為法、関税法違反の容疑で逮捕される事件が発生。
さらに、2017年には、コツメカワウソの幼獣を違法に持ち出そうとした日本人が、タイの空港で逮捕される事件が3件も続いて発生しました。

東南アジアに生息するコツメカワウソは、現地では絶滅が心配されている野生動物の一種です。本来の生息地である河川の流域や森林の自然破壊に加え、こうしたペットを目的とする需要が違法な捕獲(密猟)を呼び、危機をさらに増大させてしまうおそれがあります。
日本では特に、2017年前後からこのペット需要が急増していました。

関連情報

沸騰するエキゾチックペットの人気

「エキゾチックペット」の問題は、コツメカワウソに限られたものではありません。

2018年5月11日には、スーツケースに入れた、インドコキンメフクロウを含む12羽の鳥類と、アフリカヤマネほか6頭の哺乳類を、タイから日本へ密輸しようとした日本人の男が逮捕される事件が発生。
さらに、5月8日にも関西空港で、フロリダハコガメなど39頭を密輸しようとした日本人2名が逮捕されました。

密輸されたのは、いずれも絶滅が心配され、「ワシントン条約」で国際取引が規制されている動物です。

ワシントン条約は、こうした希少な野生生物を絶滅から守るため、その取引を規制する国際条約ですが、こうした違法行為が後を絶たないのが現状。
また国内でも、こうした違法な取引や捕獲は問題になっています。

キシノウエトカゲ
© TRAFFIC

キシノウエトカゲ。八重山諸島と宮古諸島の固有種で、最大40cmになる日本最大のトカゲ。

その一例として2018年8月、石垣島で希少種のキシノウエトカゲとヤエヤマセマルハコガメを違法に捕獲し、埼玉県の自宅で飼育していた男が書類送検されたという報道がありました。この2種はどちらも、環境省のレッドリストの絶滅危惧種。
さらに国の天然記念物であり、生息する地域の自治体の条例でも保護種に指定されている、国として守るべき対象となっている生きものです。

生きた爬虫類については、日本は世界第4位の輸入国ですが、国内においても、爬虫類のペット需要は、違法な採取、取引を誘発し、特にその地域にしか生息していない希少な固有種を脅かす深刻な原因になっています。

何より、こうした事件はいずれも、「発覚」した一部の事例にすぎません。密輸や違法に捕獲(密猟)に成功した場合は、その内容はおろか、発生したかどうかの記録さえ残らないためです。

また、ひとたび日本の国内に入ってしまった後は、国内での取引規制が不十分なため、追跡や取り締まりが難しく、問題をさらに複雑にしています。

関連情報

「動物愛護管理法」改正の課題

現在の日本では、このように動物の取引の規制や取り締まりが十分ではない現状に加え、そもそも野生動物をペットとして所有し、飼育する行為自体についても、ルールや管理の在り方が、明確にされていません。

日本の国内法で動物の飼育について定めた法律は「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」ですが、現状ではその内容にもさまざまな課題があります。

とりわけ、絶滅のおそれのある野生動物の飼育については、ほぼ規定がありません。また野生動物を不用意に飼育することによって、自然環境が損なわれたり、絶滅の危機が増大する可能性についても、言及されていないのです。

コツメカワウソ
© TRAFFIC

カワウソ・カフェのコツメカワウソ

2019年5月には、「動物愛護管理法」の改正が行なわれる予定ですが、この改正では、上記のような問題点が改善され、さらに所有や飼育の際の管理強化を実現させる必要があります。

また、その中では、ペットを取引する事業者や、「飼う人」の責任と義務についても、明確にし、国内で徹底していく必要があります。

考えよう、「飼う人」の責任

コツメカワウソは確かに人気のある、有名な動物かもしれません。
しかし一方で、この野生動物が愛玩や娯楽のために絶滅の危機にあることは、どれくらい日本の国内で理解されているでしょうか。

理解や認知がいまだ広がらない中、日本はまず、今回の動愛法の改正を通じ、特に絶滅の危機にある野生動物をペットとする行為を、厳しく規制し、問題の根源にある「需要」を抑えていかねばなりません。

また仮に、法改正が十分なものにならず、現在の問題が解消できなかったとしても、不要な取引や無責任な飼育がこれ以上拡大するようなことがあってはなりません。

そのためには何よりも、消費者の意識が重要です。

飼育や取引、愛玩、鑑賞などが、現在の法律に違反しないものであるとしても、違法行為との判別ができず、それによって野生生物の絶滅危機を増大させてしまう危険があるとしたら、消費者はどのように判断をするべきでしょうか。

違法性は無いのだから、ペットとして楽しむことについては問題ない、と考えるべきでしょうか。
それとも、他の生きものや、自然環境に対する責任として、不用意な飼育は控えるべきでしょうか。

少なくともそうした自覚や問題認識を持たずに、ただ「かわいい」「珍しい」といった理由のみで絶滅の危機にある野生動物を面白がり、ペットとすることは、社会や環境に対する責任に欠けた行為であるとWWFジャパンは考えています。

カワウソを、エキゾチックペットたちを、守るためのアクション

1)日本のペットの問題を広く伝えよう

コツメカワウソや希少な爬虫類の違法取引や逮捕事件をきっかけに、日本での野生動物のペット問題が今、大きく注目されています。
しかし、飼育する人や、飼育したいと思っている人、またこうした動物を販売している人たちの間では、まだ問題が十分に理解されていません。
そこでぜひ、SNSなどで次のハッシュタグ「#カワウソ」「#カワウソの逆襲」をつけ、情報やメッセージを発信してください。

2)国会議員に対する要望を送ろう

WWFジャパンは現在、2019年5月の動物愛護法の改正に向け、改善案を提示し、現在の改正案に不足している内容を補うよう、国会議員と環境省に働きかけています。
この改正案は、議員立法(省庁ではなく、国会議員が案を出して決議する法案)として作成されているもので、その成立のため複数の国会議員の皆さんが尽力されています。
ぜひ、こうした国会議員をはじめ、国会でこれを審議する議員の方々に、動愛法の十分な改正を求めてみてください。
ハッシュタグ「#カワウソ」「#カワウソの逆襲」をつけ、SNSで国会議員の皆さんのアカウントにメッセージを届けてください。

報告書

【寄付のお願い】好きだからこそ 違法な取引から野生動物を守りたい

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP