日本への密輸も発覚 カワウソの違法取引問題
2018/06/21
人気者を脅かす違法な取引
日本で人気の動物、カワウソ。ここ数年で、カワウソカフェのような店舗の開業や、カワウソをペットとして購入する人が増えています。
そのペットブームの需要を支えるため、海外から日本に輸入されているカワウソも増加していると思われ、特に近年、東南アジアからの密輸が際立っています。
2017年には、タイの空港でコツメカワウソの幼獣を日本人が、違法に持ち出そうとしたところを逮捕される事件が3件相次ぎました。
WWFとIUCN(国際自然保護連合)の共同プログラムで、世界の違法な野生生物取引を監視する国際機関「トラフィック」は、2018年6月8日、そうした現状を調査した報告書を発表しました。
カワウソのふるさとの国々で
この報告書の制作にあたり、トラフィックは2016年に発表したアジアにおけるカワウソの押収(1980年~2015年)の分析結果をベースに、東南アジアの8カ国を対象に調査を実施。
これに最新の押収データ(2015年8月~2017年12月)の情報を加え、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマーでの実際の市場調査と、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでのオンラインを通じたカワウソの取引状況を調査した結果をまとめました。
まず、東南アジアに生息する4種のカワウソのうち、最も多くペットとして取引されているのは、コツメカワウソであることが明らかになりました。
しかし、各国での市場調査の結果、生きたカワウソが市場で直接販売されている例は少なく、インドネシアで2頭の幼獣が確認されたのみ。
これは、実際のカワウソのペット取引が、表立って行なわれていない現状をうかがわせるものです。
また特に、タイとインドネシアで、押収やオンライン取引が最も頻繁に発生しており、両国において、ペット取引が野生のカワウソを脅かす深刻な問題となっていることもわかりました。
この両国には、カワウソを人工的に繁殖させることのできる繁殖施設が、確かに存在しているか確認できておらず、取引の多くは野生の個体を密猟して行なわれているものと考えられます。
オンラインによる取引、そして日本とのかかわり
また、オンライン取引調査からも、カワウソの過剰捕獲が起きていることが裏付けられました。
2018年1月~4月に行なわれた調査では、560の広告が確認され、少なくとも734頭のカワウソが販売されていたことが明らかになっています。
そのほとんどが、インドネシア、タイの2ヶ国に集中しており、これらの広告はすべて違法と考えられます。
報告書は、日本とのかかわりについても、言及しています。
2015年から2017年に発覚した13件のカワウソの違法取引のうち、タイで発覚した3件が日本向けの密輸でした。
13件の違法取引では、計59頭の生きたカワウソがインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムで押収されましたが、そのほとんどがまだ幼獣で、日本向けにタイから密輸されようとしていた個体が32頭を占めました。
違法取引の摘発強化を求めて
この報告書は、ペットという形での商業的なカワウソの利用が、東南アジア地域を中心に生じていること、また違法取引などを取り締まる関係国の国内法や、ワシントン条約に違反した事例が、多発している危機を指摘するものとなりました。
また、特に、インドネシアとタイを中心に、ペット目的のカワウソの過剰捕獲が、野生の個体群に影響を与えることが懸念される状況などから、関係国における対応が必要とされる現状も明らかにしています。
さらに、これらの国から日本に向けられた取引が盛んに行なわれていること。
そして、日本ではひとたび密輸に成功し、国内に持ち込まれてしまえば、国内での販売などを規制する法整備が不十分なことから、こうした国内法の抜け穴への対応が、緊急に求められることも、報告書は指摘しています。
トラフィックでは、海外で発生している日本向けの密輸が増加している可能性が考えられることから、今後も引き続き調査を行ない、適切な取り締まり、および法的な改善について、政府に対し働きかけてゆくほか、国内事業者のコンプライアンスや需要の削減を呼び掛けていきます。