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捕らわれの天然記念物キシノウエトカゲ


先日8月14日はトカゲの日だったこともあり、トカゲの素敵さを語りたいところですが、今日の私は怒っています!
先週、キシノウエトカゲとヤエヤマセマルハコガメを石垣島で違法に捕獲し、埼玉県の自宅で飼っていた男が書類送検されたという報道があったからです。

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キシノウエトカゲ(Plestiodon kishinouyei)
環境省のレッドリストの絶滅危惧Ⅱ類で、石垣市と宮古市の条令でも保護されている。1975年に国の天然記念物に指定。

キシノウエトカゲは、沖縄の八重山諸島と宮古諸島の固有種で、最大40cmにもなる日本最大のトカゲ。同じく八重山の固有亜種であるヤエヤマセマルハコガメともども、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。

こうした希少種を私有するため、捕獲して郵送するなんて不届き千万!しかも容疑者は、過去にも石垣島の生きものをネットオークションで販売していたそうです。

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ヤエヤマセマルハコガメ(Cuora flavomarginata evelynae)
絶滅危惧Ⅱ類で、石垣市自然環境保護条例保全種。1972年から国の天然記念物。ワシントン条約で国際取引も規制されているが、海外ではペットとして取引されている。

またこの2種は、文化財保護法で国の天然記念物として保護されている野生動物でもあります。
捕獲はもちろん、移動させることも禁止。たとえ天然記念物に指定される前から飼っていたとしても、許可なく譲渡や販売はできません。
それにもかかわらず、トラフィックの過去の調査では、中国やアメリカでキシノウエトカゲの販売例が確認されました。

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中国で販売されていたキシノウエトカゲ

国の財産である野生生物が、守る人々の努力をかい潜って密猟され、取引されるこの由々しき状況を打開するには、規制の強化だけでは不十分です。

「珍しい生物が欲しい」「バレなければ良い」という愛好者やコレクターの意識を変えること、そして行政、法執行機関、企業、市民団体の連携した対策の必要性を、あらためて感じた事件でした。

夏真っ盛り、海や山で色々な生きものに会うチャンスがいっぱいです。
ぜひ、自然の中で生きる姿を観察してみてください。きっと希少な野生生物は私するべきものでないと感じられるはずです。(C&M室 若尾)

★夏休み親子向け WWF会員イベント開催します!
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違法に取引される動物たちについて、現役の警察官と違法取引調査に取り組むトラフィックのスタッフがお話します。残席僅少!ぜひご参加ください。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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