日本のペット取引規制はザル?


先日、New York Timesに「ペットショップのそのニシキヘビ、野生で捕獲されたかも?」と題された記事が掲載されました。米国やヨーロッパでペットとして売られている爬虫類や両生類の中に違法に野生で捕獲されたものたくさんがいるというドキッとする内容です。

実は、日本の市場も欧米と何ら変わりません。生息国で捕獲が禁止されているはずの動物が日本では合法的に販売されているのです。

どうしてこんなおかしなことが起こるのでしょう?
理由の一つは日本の国内規制の緩さです。違法に捕まえたものだろうが、密輸したものだろうが、一度国内に持ち込まれれば、洗浄(ロンダリング)されてしまいます。

モエギハコガメ(Cuora galbinifrons) 展示即売会で販売されていた野生捕獲のモエギハコガメ。中国、ラオス、カンボジア、ベトナムに生息する近絶滅種(CR)で、ベトナムとラオスでは保護対象となっている。

日本には、ワシントン条約で取引が禁止されている動物の国内取引を禁止する法律はありますが、生息国で捕獲が禁止されている動物の取引を禁止するという法律がないからです。

もう一つは、ペットショップなど取扱事業者への規制の甘さです。事業者は「動物の愛護及び管理に関する法律」で管理されていますが、この法律に野生動物を保全するという機能はありません。

たとえ絶滅のおそれの高い野生生物を販売するにも特別な資格は必要ありませんし、売られている動物がどうやって店まで来たかというトレーサビリティの確保も義務付けられていません。

よって、売られている動物の捕獲の合法性や輸入経路が不明な状態で取引ができるのです。

ミミナシオオトカゲ(Lanthanotus borneensis) 2017年に実施した調査では、12頭もの販売が確認されたが、生息国のインドネシア、マレーシアでは合法的な輸出の記録はない。いずれも飼育下繁殖個体として売られているが、最初のペアは当然野生から連れて来られたはず。

日本のペット市場にも違法取引の犠牲になっている動物が少なからずいると考えながら、ペットショップやペットショー、アニマルカフェを見てください。きっと「かわいい!」「珍しい!」だけじゃないと感じていただけるはずです(トラフィック 若尾)。

関連情報

ミドリニシキヘビ(Morelia viridis) 欧米でも日本でもペットとして取引されている、インドネシア、オーストラリア、パプアニューギニアに生息する樹上棲のヘビ。パプアニューギニアでは、食用にも捕獲されているが、この種の最大の脅威は国際的なペット取引です。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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