横浜税関でワシントン条約の講義を行ないました
2025/03/04
WWFジャパンの野生生物取引調査・監視部門TRAFFICでは毎年、横浜税関の研修で、「ワシントン条約」について講義をさせていただいています。
ワシントン条約は、野生生物種(しゅ)を絶滅から守るため、過剰な国際取引から守り、持続可能な利用を確保することを目的として定められた国際的なルールです。
しかし、このルールに違反して野生生物を密輸する例は、今も後を絶ちません。
実際、あの手この手で巧みに隠して行なわれる密輸の摘発は、困難をきわめます。
そうした中で、国境の水際で目を光らせているのが、税関職員の方々です。

日本にペット目的で密輸された実績のあるピグミーマーモセット。ワシントン条約で国際取引が規制されている、野生動物の一種です。
今年は2月上旬に、野生動物を含む、水際対策の強化に向けた税関の研修の一つとして、講義を実施。
実務経験のある税関の中級職員16名の方々に向け、ワシントン条約の運用に関係する最新の情報や、野生生物の取引動向、密輸防止のチェックポイントなどをお話ししました。
野生動物以外にも、持ち込まれる多様な物品と日々向き合う、大変なお仕事を手掛けられている皆さんですが、熱心な様子で耳を傾け、関心の高さが伝わってきました。

講義の様子。ワシントン条約の運用にかかわる説明や、実際の野生生物の違法取引事例なども紹介しました。
講義の終わりには、実際にワシントン条約対象種の製品サンプル(差止物品の中から普及啓発用に経済産業省にお借りしているもの)にも触れていただき、どんなものが密輸されるのか具体的なイメージを持っていただくこともできました。

トラの骨を含有した伝統的医薬品。他にもサイの角をはじめ、絶滅のおそれのある植物を原材料とした、取引が禁止されている医薬品も、密輸されることがあります。税関では、こうした品々の持ち込みをチェックしています。
今年11月には、2~3年ごとに開催される第20回締約国会議も開催される予定ですが、ここでも新たな規定や、持ち込みの規制に関連する取り決めが行なわれることになるでしょう。
そうした変化にも対応した柔軟かつ正確な対策が、これからも水際の税関には求められます。
多くの実務経験を積まれている中級職員の皆さんが、今回の講義を経て、より一層現場でご活躍され、野生動物の保護にも貢献してくださることを期待しています。
(野生生物担当 TRAFFIC:柴田)

TRAFFICは税関にとどまらず、空輸や海運セクターなどの輸送セクターに対する啓発、情報提供等の活動も積極的に継続していきます。