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生物多様性の保全と気候変動対策 世界の2つの「約束」の現在地


今年10月~11月にかけて、環境に関連する重要な国際会議が2つありました。

1つ目はコロンビアのカリで開催された、生物多様性条約の第16回締約国会議(CBD-COP16)。もう1つはアゼルバイジャンのバクーで開催された、国連気候変動枠組み条約の第29回締約国会議(COP29)です。

私たちWWFも、両方に大きな代表団を送り込み、会場と交渉の内外でネットワーキングや対話を通し、影響を与えようとしました。しかし残念ながら、いずれも結果は残念なものとなりました。

詳報はWWFのウェブサイトをご覧いただくとして、実は両者の会議には共通点がありました。

それは「資金」の役割が主要論点の1つであったことです。CBD-COP16は、昆明・モントリオール生物多様性世界枠組みで合意された23の目標を実施していくために、特に途上国に対してどういう資源(資金)を回していくのか。COP29では、2035年に向けた削減目標を各国が来年に向け提出していく中、特に途上国に向けた資金をどのように提供していくのか。それが主要な議題となっていました。

この一致は偶然ではなく、両者がそれぞれ世界的目標とルールの「実施」段階に入り、「そのために必要な資金が本当に入ってくるのか」その確証を得る大事な局面を迎えたことを示しています。

結果は残念(COP16は「一時中断」、COP29は不十分な金額で合意)でしたが、2つの世界の約束は着実に「ルールメーキング」から次の「実施」フェーズに入りました。

そして、国際社会はその中で困難にぶち当たりながらも、懸命に協力を推し進めようとしています。

その大きな流れの中、森や海などの自然の現場を見る目を忘れないようにしつつ、国際規模で大きな影響力を発揮できる活動が、私たちにも求められ始めています。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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環境保全団体です。

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