絶滅の淵にいる魚を救う~沖縄美ら海水族館訪問
2023/05/09
先日、沖縄県本部町の沖縄美ら海水族館を訪問し、石垣島に生息する希少淡水魚の合同調査保全プロジェクトのメンバーとともに、系統保存の現場を見学させて頂きました。
対象の魚は、イシガキパイヌキバラヨシノボリとヒョウモンドジョウ。いずれも沖縄県希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物種です。イシガキパイヌキバラヨシノボリは、石垣島の名前が付けられた、淡水魚では石垣初の固有種です。
豊かな自然が残る石垣島ですが、かつて島内に90本ほどあった大小の河川は、開発等により次々に自然な流れを失い、その姿を変えてしまいました。そこにすむ陸水域の淡水魚の中には、絶滅のおそれのある種が少なくありません。
現在、大規模なゴルフリゾート計画が進められている、日本最南端のラムサール条約湿地・名蔵アンパルの水系も、こうした危機にさらされている現場の一つです。
この水系でプロジェクトメンバーが沖縄県の捕獲許可を得て採集したイシガキパイヌキバラヨシノボリの仔魚を、沖縄美ら島財団が、大切に空路・陸路で搬送し、このたび水槽での飼育・繁殖を成功させました。
また沖縄美ら島財団は、石垣島では1980年に名蔵アンパル周辺の水系で採集されて以降、記録が途絶えているヒョウモンドジョウについても、沖縄島産を用いた飼育繁殖に成功しています。
この名蔵アンパルの水系の保全を求め、私たちは、石垣島の皆さんや全国の団体・学会とともに、必要な調査や保全策が講じられることを、事業者や許認可権限を有する自治体に要請しています。
16団体連名の沖縄県知事宛て要請書(4月17日提出)
石垣島の希少な淡水魚が、系統保存の成功により地球上から絶滅することを免れたのは朗報です。しかし、本来の生息地が保全され、回復することが最重要であることは言うまでもありません。
研究や飼育の現場での奮闘を直接見聞させて頂き、これらの絶滅の淵にいる魚たちが故郷に戻れる日を目指して今できることを精一杯やろう、との思いを新たにしました。
今後もプロジェクトメンバーと協力して、これらの魚の生息状況を明らかにし、生息地をまもる活動を進めていきたいと思います。
(野生生物グループ 小田倫子)