国境を超える野生生物、違法取引撲滅に向けた企業の取り組み
2020/03/05
いま、野生生物の違法取引、すなわち密輸が、薬物や人身売買に次ぐ、世界規模の「犯罪」の一つとして数えられています。
その規模は、およそ2兆9,000億円。
外国との水際にあたる各国の税関が、監視の目を光らせていますが、人とモノの行き来は増えるばかり。
摘発される事例は、氷山の一角に過ぎません。
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X線による旅客荷物チェック。
1年間に飛行機を利用する旅客数はおよそ44億人、 積荷はおよそ5,390万トンにのぼる(IATA Annual Review, 2018, 2019より)
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日本の税関で差し止められたワシントン条約該当物品。
2017年に輸入を差し止められた803件の内訳。ワシントン条約とは、約3万5,000種の野生生物の取引を規制する国際条約で、税関ではこの条約に基づき、取引規制の対象となる動物・植物そのものや、それらに由来する製品の持ち込みを取り締まっている。
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野生生物の違法取引は、生物そのものを絶滅の危機に追い込むことはもちろん、感染症や害虫を蔓延させるリスクにもつながる。とりわけコウモリやスローロリスなどは、人獣共通感染症をもたらす可能性のある動物。
こうした野生生物の違法取引を撲滅するために、今、企業も取り組みを進めています。
特に、違法取引の際に必ず利用される輸送手段である飛行機や船。
そうした輸送に関わる企業は、知らずと密輸に加担してしまっているのです。
こうした事態を回避するために、輸送業界が立ち上がり、2014年、取り組みを促進するためのタスクフォースが設立されました。
このタスクフォースには、日本企業も参加している他、わたしたちWWF・TRAFFICも参加して、取り組みを支援しています。
その取り組みのひとつに、航空会社の社員向けのトレーニングがあります。
これは、密輸品や密輸者の発見のポイントや、発見した際にとるべき行動、税関や警察への通報を通じて摘発率を上げることや、連携の重要性などを伝えるもの。
先日は、JAL(日本航空)の社員の皆さんが集まり、企業として貢献できることは何かを考える社内ワークショップの中で、講師としてお話しをさせていただきました。
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終了後には、航空業界と野生生物取引との関連性についての認識が高まり、違法取引撲滅に向けて施策を考えていきたい、との声をいただきました!
日本の水際が野生生物の保全により貢献できるように、これからも企業のみなさんの取り組みをサポートしていきたいと思います。