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伝統の知恵を活用! アフリカの活動現場から


みなさん、「Boma」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

スワヒリ語で「フェンス(柵)」という意味になります。

中央~南アフリカにかけて、伝統的に活用されている、家畜を守るフェンスのことです。

トゲのある灌木の枝を利用して囲いを作り、ライオンやハイエナなど、家畜を狙う肉食獣の侵入を防ぐものです。

身近な素材を使い、現地の住民も自分で設置できる柵ではあるのですが、トゲトゲをものともせず突破されてしまったり、特に低めの柵は、動物たちに飛び越えられてしまうこともしばしば。

訪問したタンザニア北部の集落。古くからの手法で作られたBomaの一種。
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訪問したタンザニア北部の集落。古くからの手法で作られたBomaの一種。

私たちWWFジャパンが連携して取り組みを進めるアフリカゾウのプロジェクトサイト、タンザニアでも、こうした問題の発生件数や深刻度が増しています。

ゾウの場合は、家畜ではなく農作物や水場を荒らす害獣として、人との間で「あつれき」が生じています。

これは、農地拡大や開発によって野生動物と人の生活圏が近くなり、また、気候変動の影響により、水やエサとなる植物・捕食動物へのアクセスに変化が生じているためです。

そして、家畜や農作物を奪われた報復として、ゾウやライオンが殺されてしまう事態に発展することもあります。

保全活動を進める上では、こうした問題への対処がとても重要です。

タンザニア、アルーシャの集落にある新しい手法のBoma。身近な自然素材を利用しながら、高さをつけるなど、より安全にライオンの襲撃から家畜を守ることができます。WWFではLiving Wall(リビングウォール) Bomaと呼び、その設置を地域住民の方々と一緒に進めています。
© Greg Armfield / WWF-UK

タンザニア、アルーシャの集落にある新しい手法のBoma。身近な自然素材を利用しながら、高さをつけるなど、より安全にライオンの襲撃から家畜を守ることができます。WWFではLiving Wall(リビングウォール) Bomaと呼び、その設置を地域住民の方々と一緒に進めています。

私たちがタンザニア北東部で実施しているアフリカゾウのプロジェクトでも、慣習的に使っているゾウ除けのツールを、より効果的なモノに改善。

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タンザニア北東部のアフリカゾウのプロジェクトサイト(ムコマジ)周辺の集落の事例。左:畑に設置された慣習的なゾウ除け。風に乗って出る音がゾウを警戒させるのですが、風任せ。右:大きな音の出るブブゼラ。軽くて機能的、ゾウを見かけたらすぐに使えます。

また、その使い方のレクチャーや、未然に防ぐ施策の推進を進めています。

地域や種(しゅ)によって、その解決策はさまざま。
これからも多様なアイデアを活用しながら、活動を続けていきたいと思います。

【寄付のお願い】アフリカゾウの未来のために|野生動物アドプト制度 アフリカゾウ・スポンサーズ

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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