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ゾウと人を「ミツバチ」が救う!?


陸上最大の体躯をもつアフリカゾウ。
天敵もほぼいない、そんなアフリカゾウにも実は苦手な動物がいます。

それは、「ミツバチ」!

体長1.5cmほどのミツバチ。目や耳の後ろなど、敏感な部分を刺されるのを避けるために、ゾウはミツバチやその巣を回避するといわれています。聴覚の優れたゾウは、羽音を察知してこうした行動をとるようです。
© WWF-Japan

体長1.5cmほどのミツバチ。目や耳の後ろなど、敏感な部分を刺されるのを避けるために、ゾウはミツバチやその巣を回避するといわれています。聴覚の優れたゾウは、羽音を察知してこうした行動をとるようです。

ゾウがミツバチや巣を避ける習性に着目して、ゾウによる農作物の被害を抑える試みが今、各地で広がっています。

これは、農地や集落の周りに、ミツバチの巣箱を並べた「Beehive(ハチの巣)フェンス」を設置し、そこでゾウを追い返す!というもの。

地域住民が主体となって管理している保護区内に設置されたBeehiveフェンス。吊り下げられた白い箱がミツバチの巣になっています。タンザニアにて。
© WWF-Japan

地域住民が主体となって管理している保護区内に設置されたBeehiveフェンス。吊り下げられた白い箱がミツバチの巣になっています。タンザニアにて。

今年10月に発表された、9年間にわたる研究の結果によれば、Beehiveフェンスを設置したことで、ゾウによる農作物への被害が86%も減少した例もあるとのこと!

WWFタンザニアが実施するアフリカゾウ保全プロジェクトで設置したBeehiveフェンス。一部の対象地域では、2023年の1年間に農作物被害が78%も減少しました。中にいるミツバチの数が多いと、効果も上がることが分かっています。現在はアジアでもこの手法は使われていて、アフリカとアジア各地での設置場所は97カ所におよぶといいます。
© WWF-Japan

WWFタンザニアが実施するアフリカゾウ保全プロジェクトで設置したBeehiveフェンス。一部の対象地域では、2023年の1年間に農作物被害が78%も減少しました。中にいるミツバチの数が多いと、効果も上がることが分かっています。現在はアジアでもこの手法は使われていて、アフリカとアジア各地での設置場所は97カ所におよぶといいます。

農業被害が抑えられれば、地域の人々がゾウを恨んだり、害することもなくなります。

さらに、この巣箱からは収入源になるハチミツも採れる!

小さなミツバチたちは、アフリカゾウと人の衝突や「あつれき」を軽減する、大きな役割を果たしてくれているのです。

しかし、そんな素晴らしい取り組みにも、脅威が迫っています。

気候変動がもたらす干ばつなどの異常気象が生じたシーズンに、ハチが減少してしまう事態が発生。

そうなれば、農業被害を防ぐ効果も、ハチミツの収量も、減じてしまうことになり、ゾウと人の共存を目指す保護のための取り組みも、大きな影響を受けることになります。

WWFタンザニアのプロジェクトサイトで遭遇したアフリカゾウ。このゾウたちのいた場所のすぐ近くには畑が広がり、学校や集落の建物がありました。
© WWF-Japan

WWFタンザニアのプロジェクトサイトで遭遇したアフリカゾウ。このゾウたちのいた場所のすぐ近くには畑が広がり、学校や集落の建物がありました。

自然に対する影響は、全てつながっています。
Beehiveフェンスの活動が成功しても、気候変動の脅威を抑えられなければ、人とゾウの「あつれき」問題は解決できません。

多様化し、複雑化する環境課題に挑戦するため、私たちは出来る限り広い視野と知見をもち、より多様で多彩な関係者と手を取り合いながら、活動をいっそう促進させていきたいと思います!

アフリカゾウを守ろう!WWFの野生動物アドプト制度 継続スポンサー

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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