©長嶋祐成

アマミノクロウサギからカンムリワシへ


1995年、アマミノクロウサギ等の野生生物を原告として、奄美大島のゴルフ場計画に対する鹿児島県知事の開発許可取消を求める訴訟が提起されました。当時法学を志していた私は、「自然の権利」という考えに基づく奄美の人々の動きに衝撃を受けたことを覚えています。

©WWFジャパン

鹿児島県奄美大島のアマミノクロウサギ。国の特別天然記念物、種の保存法の国内希少野生動植物種、絶滅危惧IB類(環境省)。

この訴訟から28年が経過した2023年、ネイチャーポジティブが国家戦略となり、国連・持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みが世界中で進められる中、時代の動きに逆行するゴルフリゾート計画が、沖縄県石垣島で進められています。
予定地には、日本最南端のラムサール条約湿地・名蔵アンパルの水源地のほか、国の特別天然記念物カンムリワシの営巣地が含まれていて、WWFも計画見直しを求める働きかけや調査を続けています。

©中本純市

沖縄県石垣島のカンムリワシ。国の特別天然記念物、種の保存法の国内希少野生動植物種、絶滅危惧IA類(環境省)

一緒に要請活動をしている石垣島の市民団体「カンムリワシの里と森を守る会」では、計画に異を唱える市民の皆さんと日本環境法律家連盟(JELF)弁護団の活動を支援するクラウドファンディングを開始しました。

ご支援頂いた方への返礼品には、私も大ファンの魚譜画家・長嶋祐成さんが書き下ろしてくださった、ゴルフリゾート計画によって絶滅が心配される石垣島固有の淡水魚イシガキパイヌキバラヨシノボリの絵の原画も!

石垣島の固有新亜種イシガキパイヌキバラヨシノボリ。絶滅危惧IB類(環境省、沖縄県)、沖縄県希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物種。©長嶋祐成

他にも、趣旨に賛同する多くの方々のご厚意により、石垣島の自然や豊かな恵みを表す素敵な贈り物が提供されています。ぜひご覧ください。

日本初の「自然の権利」訴訟となったアマミノクロウサギ訴訟は約6年を費やし、最終的にゴルフ場計画は中止され、奄美大島は2021年に世界自然遺産に登録されました。アマミノクロウサギは今も絶滅することなく、その愛らしい姿を観察するため毎年多くの人が奄美を訪れ、貴重な観光資源になっています。

一方、石垣島のカンムリワシの個体数は約110羽(2012年3月環境省調査)。環境アセスでは予定地に13羽が生息する可能性が指摘されています。八重山の生態系と文化伝統を象徴するこの野生生物の行く末は、人の手に委ねられています。

石垣島の皆さんによるクラウドファンディングへの支援の輪が全国に広がることを願っています。

※クラウドファンディングはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/660613

※この計画の見直しを求める、我がーやいまの自然環境を考える会とアンパルの自然を守る会による、ウェブ署名も引き続き募集中です:
chng.it/96wGkyhG

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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