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世界野生生物の日にワシントン条約を考える


CITES(サイテス)とも呼ばれるワシントン条約は、1973年3月3日に米国ワシントンで採択されました。それを記念し、国連は、毎年3月3日を世界野生生物の日(World Wildlife Day)に指定しました。

ワシントン条約は、取引の規制を通じて野生生物を種の絶滅から守ることと伴に、その持続可能な利用を理念に据えています。

そう、野生の動植物が消えてしまうことのないように、そして私たちが自然の恵みをずっと享受できるように、そんな願いが込められた国際的なルールなのです。

世界からジャイアントパンダが消えてしまったら…。WWFのロゴだけなら良いのですが、生息地の生態系が大きく崩れてしまいます。

世界からジャイアントパンダが消えてしまったら…。WWFのロゴだけなら良いのですが、生息地の生態系が大きく崩れてしまいます。

ワシントン条約には、現在184の国や地域が加盟しています。これら締約国が一堂に会する19回目の締約国会議(CoP19)が今年11月14日~25日に南米パナマで開催されます。

オウギワシ(Harpia harpyja)はパナマの国鳥です。生息地である森林の消失・劣化が主な脅威ですが、狩猟対象にもなっているため、ワシントン条約の附属書Iに掲載されています。
© Zig Koch / WWF

オウギワシ(Harpia harpyja)はパナマの国鳥です。生息地である森林の消失・劣化が主な脅威ですが、狩猟対象にもなっているため、ワシントン条約の附属書Iに掲載されています。

COP19に向け、条約事務局や締約国で着々と準備が進められています。締約国の各地域代表からなる執行機関・常設委員会は、今月フランスで開催されます。議題には、CoP19の準備の他、人獣共通感染症予防に条約が果たす役割、各国の法執行状況や取引情報の報告などが挙げられています。

フランスの国花「フルール・ド・リス」は、園芸品種のアヤメだそうですが、野生のアヤメ属には絶滅のおそれが高い種もいます。ワシントン条約で取引が規制される植物の中には、ランのように鑑賞目的の利用が主なものもあります。
© Kari Schnellmann

フランスの国花「フルール・ド・リス」は、園芸品種のアヤメだそうですが、野生のアヤメ属には絶滅のおそれが高い種もいます。ワシントン条約で取引が規制される植物の中には、ランのように鑑賞目的の利用が主なものもあります。

条約で商業取引が禁止されたり、制限されたりするのは、附属書に掲載されている種に対してのみです。ですから、COPでは、附属書の改正に最も注目が集まります。この改正の提案は、締約国のみが行うことができ、提出期限はCoP19開幕150日前の6月17日です。私たちに関係深い種に関する提案もきっとなされるはずです。

附属書	規制内容	主な種と掲載種数<br>附属書Ⅰ	商業目的の国際取引禁止	ジャイアントパンダ、ウミガメ、トラ、ゴリラ、センザンコウ、コツメカワウソ、ヨウム、タンチョウ、木香など<br>およそ1,100種<br>附属書Ⅱ	商業目的の取引は可能<br>ただし、その取引が種にとって有害でないことを輸出国が証明し、許可することが条件	キリン、ネコ科、ハシビロコウ、リクガメ、アホロートル、ジンベイザメ、ヨーロッパウナギ、サボテン、ラン、ローズウッドなど<br>およそ37,400種<br>附属書Ⅲ	指定国の輸出許可書、指定国以外の場合は原産地証明書(指定国ではないことを証明)が必要	クロイワトカゲモドキ(日本)、セイウチ(カナダ)、宝石サンゴ(中国)など<br>およそ220種<br>

CITES CoP開催年の今年の世界野生生物の日には、ぜひ野生の動植物を守るためのワシントン条約というルールの意味について考えてみてください(野生生物グループ・若尾)。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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