猫の日-吠えるパンテラ
2025/02/22
2月22日は、猫の日。今日は、ゴロゴロ喉を鳴らすイエネコではなく、動物園などでも人気の高い大型ネコ科動物の鳴き声のお話です。
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トラ(Panthera tigris)は、最大のネコ科動物ですが、生息地の劣化や密猟で絶滅の危機に瀕しています。世界中で行なわれている保全活動により2023年の推定個体数は、約5,500頭へ回復しました。
大型ネコ科動物は、分類学上ヒョウ属(パンテラ属)というグループに属しています。現在、ヒョウ属の動物は、トラ、ライオン、ヒョウ、ユキヒョウ、そしてジャガーの5種です。

ジャガー(Panthera onca)中南米に生息します。毛皮はヒョウと似ていますが、ヒョウ柄の中に斑点のある模様です。
某映画会社のオープニングロゴでライオンがガオーと吠える映像が使われているように、大型ネコ科動物で印象的なのでは、その迫力ある咆哮ではないでしょうか?
実は、ネコ科のうち吠えることができるのは、ヒョウ属に属する動物だけなのです。これは、舌骨の骨化の程度によるものと言われてきました。
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吠えることができるトラ(a)とできないネコ科動物(b)の 舌骨の構造の違い。aでは、紫色の部分が伸縮性のあるじん帯だが、bは骨なので、伸びることはない。出典:Deutsch, A. R. et al. (2023). Journal of Morphology, 284, e21627. https://doi.org/10.1002/jmor.21627
しかし、ヒョウ属5種のうち、ユキヒョウだけは吠えることができません。他の4種と同様に舌骨の骨化の程度が低いのに、です。このことから、舌骨に加えて喉の構造も重要であることが明らかになりました。
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ユキヒョウ(Panthera uncia)には「ヒョウ」の名がついていますが、分類学的にはヒョウよりトラと近縁です。
なお、咆哮することはないユキヒョウですが、もちろん鳴くことや唸ることはできます。何kmも先まで届く遠吠えやプルステンやチャフと呼ばれる独特のコミュニケーション手段も使います。
ユキヒョウの恋の季節2月にモンゴルで撮影された野生のユキヒョウの繁殖行動を記録した貴重な動画。求愛鳴きの声も流れます。© WWF-Mongolia
WWFがプロジェクトを展開している世界各地のフィールドに、その生態系の頂点の位置を占めるヒョウ属が生息しています。かれらの咆哮や鳴き声が絶えることのないよう、保全活動に力を尽くしたいと思います。
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ヒョウ(Panthera pardus)は、ネコ科動物の中では、もっとも広い範囲に分布するといわれています。黒化個体はクロヒョウと呼ばれますが、生物学的には同じ種です。