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オガサワラカワラヒワ未来作戦


私の愛猫は、7年前に小笠原からやって来ました。
NPOや東京都獣医師会などが協力して行なっている、島のノネコを捕獲して本州で一般家庭のペットにするプロジェクトで1000キロの海を渡って来たのです。なぜなら、世界自然遺産登録地の小笠原諸島では、人が持ち込んだネコが野生化し、野生動物を襲う脅威となっているから

小笠原自然文化研究所の施設で本土への引っ越しを待つネコ。小笠原では、ノネコの捕獲と里親探しに加え、新たなノネコや他の侵略的外来種を生みださないよう、ペットの適正な飼育が村条例で定められています。ペットの登録と個体識別、飼育頭数制限などです。
© 小笠原自然文化研究所

小笠原自然文化研究所の施設で本土への引っ越しを待つネコ。小笠原では、ノネコの捕獲と里親探しに加え、新たなノネコや他の侵略的外来種を生みださないよう、ペットの適正な飼育が村条例で定められています。ペットの登録と個体識別、飼育頭数制限などです。

開始20年となるこの活動により、海鳥の繁殖地や固有種アカガシラカラスバトの個体数は回復という成果が得られました。

しかし、同じく小笠原固有の鳥であるオガサワラカワラヒワは、今、絶滅の危機に瀕しています。その一因は、外来種による捕食や繁殖地の破壊です。

木登りの得意なクマネズミは、樹上の巣を襲うことが報告されています。私も、母島で木の上を走るクマネズミを野鳥が威嚇する姿を目にしました。現在、このネズミが生息する島では、オガサワラカワラヒワの繁殖は確認されていません。
© 環境省

木登りの得意なクマネズミは、樹上の巣を襲うことが報告されています。私も、母島で木の上を走るクマネズミを野鳥が威嚇する姿を目にしました。現在、このネズミが生息する島では、オガサワラカワラヒワの繁殖は確認されていません。

地元の団体、住民と研究者が中心となって、オガサワラカワラヒワ絶滅回避のための行動計画が2020年につくられ、それに沿った調査、域内外での保全などが行なわれていますが、深刻な干ばつや台風が活動の効果を打ち消しています。

オガサワラカワラヒワ(Chloris kittlitzi)の幼鳥。本種は、これまで東アジアに広く生息するカワラヒワ(Chloris sinica)の亜種と認識されていましたが、近年、独立種であることが分かりました。「種の保存法」で国内希少野生動植物種として保護され、保護増殖計画も立てられています。
© Islands care

オガサワラカワラヒワ(Chloris kittlitzi)の幼鳥。本種は、これまで東アジアに広く生息するカワラヒワ(Chloris sinica)の亜種と認識されていましたが、近年、独立種であることが分かりました。「種の保存法」で国内希少野生動植物種として保護され、保護増殖計画も立てられています。

そこで、昨年末から今月にかけて、行動計画を見直すワークショップが開催され、私も参加しました。

この中で示されたPVA※の結果によると、30年後に絶滅する可能性が98%という恐ろしいものでした。存続可能性を高めるために効果的な保全策は何か、条件を変えて分析が行われました。非常に重要な対策のひとつが外来種の管理であることも改めて示されました。

※Population Viability Analysis(個体群存続可能性分析):人口統計学的手法を用いたモデルに環境的変数を組み込んで個体群の存続と絶滅リスクを予測するもの

母島会場の様子。2025年1月にハイブリッドで開催されたワークショップには、約100名が参加しました。
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母島会場の様子。2025年1月にハイブリッドで開催されたワークショップには、約100名が参加しました。

こうした科学的なデータを基にした議論を経て更新された計画「オガヒワ未来作戦」が絶滅回避につながることを信じ、少しでも貢献したいと思います。

2月2日13時から、オンラインでワークショップの報告会が行われます。小さな鶸色の鳥を絶滅の淵から救おうと最前線で取り組んでいる人々の姿を見て、ぜひその輪に加わってください。
https://youtube.com/live/unlN45FSmCw?feature=share

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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