© Choong Joon LAI / WWF-Greater Mekong

トラの森を守る!現場スタッフに必要なスキルとは?


自然保護室の川江です。
WWFジャパンではWWFタイと協力して、2018年6月からタイのケーン・クラチャン国立公園における森林保全プロジェクトを始めました。

©WWFJapan

タイで最大の保護区ケーン・クラチャン国立公園。WWFではここでトラの調査活動を実施中です。日本からの支援金も役立てられています。

© Kabir Backie / WWF-Greater Mekong

インドシナトラ。メコン川流域をはじめとする、インドシナ半島に分布するトラの亜種。数百頭しか生き残っていないといわれており、絶滅寸前の危機にあります。今も開発と密猟に脅かされています。

この国立公園はミャンマーと国境を接する山岳地帯に立地するため、このプロジェクトでは国立公園当局だけでなく国境警備隊とも協力しながら活動を行なうことが必要となっています。

さて、こうした現場で森林や野生生物の保全に携わるスタッフは、どんな専門知識やスキル(技能)を持った人が多いと思いますか?

たとえば大切なのは、森林科学や生態学の専門性。野外での調査・研究の経験、など。

ですが、プロジェクトの現場では、むしろ全く違ったスキルや、バックグランドを持っているスタッフも多くいます。

こちらはたとえば、人道支援に取り組む団体や機関で、長く経験を積んできた者や、農業関連の企業で働いていた者など。

これは、森林破壊や、野生動物の密猟の原因が、地域の貧困や、違法な農地開拓などさまざまであるため、その対処には異なるバックグラウンドを持ったスタッフの協力が、必要不可欠だからです。

このように、現場のチームは多様なバックグラウンドやスキルを持ったスタッフで構成されていますが、全員が共通して持っているものは、頑健な体と自然を守りたいという思いです。

こうしたスタッフを集めることは、特に途上国においては決して容易ではありません。

それでも、ケーン・クラチャン国立公園のプロジェクトでは、長年にわたり多様な経験を積んだスタッフがそろっているので、今後もプロジェクトを着実に進めて行きます。

国立公園を守る主役は、公務員のレンジャーたち。ですが、十分な知識や経験のない職員も多いため、WWFではパトロールや野生生物調査のトレーニングなどを支援しています。

調査用の自動カメラ(カメラトラップ)を用いて撮影したアジアゾウの写真。見通しのきかない熱帯林では、こうした機材を使った野生動物の調査スキルが重要になります。

引き続き、ぜひ本プロジェクトにご関心を持って、ご注目・支援頂きますようよろしくお願い致します。

https://www.wwf.or.jp/campaign/da/

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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