© Emmanuel Rondeau / WWF-UK

ブータンでのトラ会議と世界トラの日


森林グループの岩渕です。
7月初めに開催されたWWFのトラ会議に参加してきました。

世界のトラの個体数は、2010年頃まで減少を続け、2020年代に回復に転じました。

ブータンは、その手厚い保護活動によって回復に成功した国の1つです。

成功のカギの一つは、国中に張り巡らされた緑の回廊(エコロジカル・コリドー)でしょう。

ブータン 国中に張り巡らされた緑の回廊。黄緑のエリアが回廊。他の色のエリアは保護区。 ©WWFブータン

国の全面的なサポートもあり、国内の個体数は2010年代の103頭から131頭に増加 しました。

滞在中は、トラがいてもおかしくない地域を訪れる機会がありました。

©WWFジャパン

妖精か何かが出てきそうな神秘的な森。

ブータンというと標高が高く、背の高い木がたくさん生えた「森」はあまりないのではないかと勝手に想像していましたが、そんなことはありませんでした。

地形は非常に変化に富み、たしかに疎林のような場所もありましたが、写真のように苔むした湿潤な森も広がっていました。

標高が高いとはいえ緯度は低いので、じつに標高4,000mまで登ってもまだ森が広がっていました。

これなら、草食動物も多数生息していそうです。
実際、シカの仲間やヒョウのフンが見られました。

©WWFジャパン

ヒョウのフン。トラやヒョウなどの大型肉食獣が生息している場所には、その獲物となる動物を含めた、豊かな自然が残されています。トラの回復は、世界的な生物多様性の課題である「ネイチャー・ポジティブ(自然の回復)」の成功例といえます。

© Emmanuel Rondeau / WWF-UK

会議では、トラがいまでも数が減り続けている国や地域での課題や、増えた国で今後増えるであろう人との間で生じるトラブルへの対策、絶滅してしまった国での取り組みなど、様々な議論が交わされました。

今後の展開が楽しみな情報もたくさんありました。

今後、これらが公開され、お知らせできるようになるのを楽しみにしています。

そして、7月29日は世界トラの日です。

この日にも、新情報が発表されるそうなので、私も楽しみにしています。

©Rungnapa

ブータンの会議でのセッションにて。私からも発言する機会をいただきました。WWFジャパンも日本国内のサポーターの皆さまのご支援のもと、これまでにブータンをはじめインドネシアやタイなど、各生息国でのトラの保護活動を支援してきました。生息域の森林の保全や回復を通じた取り組みを、今後も続けていきます。

この記事をシェアする

自然保護室(森林)
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP