ブータンでのトラ会議と世界トラの日
2024/07/24
森林グループの岩渕です。
7月初めに開催されたWWFのトラ会議に参加してきました。
世界のトラの個体数は、2010年頃まで減少を続け、2020年代に回復に転じました。
ブータンは、その手厚い保護活動によって回復に成功した国の1つです。
成功のカギの一つは、国中に張り巡らされた緑の回廊(エコロジカル・コリドー)でしょう。
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ブータン 国中に張り巡らされた緑の回廊。黄緑のエリアが回廊。他の色のエリアは保護区。 ©WWFブータン
国の全面的なサポートもあり、国内の個体数は2010年代の103頭から131頭に増加 しました。
滞在中は、トラがいてもおかしくない地域を訪れる機会がありました。
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妖精か何かが出てきそうな神秘的な森。
ブータンというと標高が高く、背の高い木がたくさん生えた「森」はあまりないのではないかと勝手に想像していましたが、そんなことはありませんでした。
地形は非常に変化に富み、たしかに疎林のような場所もありましたが、写真のように苔むした湿潤な森も広がっていました。
標高が高いとはいえ緯度は低いので、じつに標高4,000mまで登ってもまだ森が広がっていました。
これなら、草食動物も多数生息していそうです。
実際、シカの仲間やヒョウのフンが見られました。
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ヒョウのフン。トラやヒョウなどの大型肉食獣が生息している場所には、その獲物となる動物を含めた、豊かな自然が残されています。トラの回復は、世界的な生物多様性の課題である「ネイチャー・ポジティブ(自然の回復)」の成功例といえます。
© Emmanuel Rondeau / WWF-UK
会議では、トラがいまでも数が減り続けている国や地域での課題や、増えた国で今後増えるであろう人との間で生じるトラブルへの対策、絶滅してしまった国での取り組みなど、様々な議論が交わされました。
今後の展開が楽しみな情報もたくさんありました。
今後、これらが公開され、お知らせできるようになるのを楽しみにしています。
そして、7月29日は世界トラの日です。
この日にも、新情報が発表されるそうなので、私も楽しみにしています。
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ブータンの会議でのセッションにて。私からも発言する機会をいただきました。WWFジャパンも日本国内のサポーターの皆さまのご支援のもと、これまでにブータンをはじめインドネシアやタイなど、各生息国でのトラの保護活動を支援してきました。生息域の森林の保全や回復を通じた取り組みを、今後も続けていきます。