命はぐくむ、水田と水路をつなぐ水の流れ
2019/10/15
私は小さいころから森林保全の仕事に携わることが夢でしたが、大学入試の時は点数が足りず、森林学科に入れなかったため、農業経済学を専攻しながら森林科学の授業を履修していました。
前職でも途上国の農業開発に携わっており、実は日本の農業にも関心を寄せています。
そんな訳で私たちWWFジャパンが目下取り組んでいる「水田・水路の生物多様性と農業の共生プロジェクト」は、担当外ながら応援したくて仕方のない活動の一つ。
中でも興味深いと思うのが、田んぼをめぐる「水路」です。
昔の日本には、田んぼに水を入れる「用水」と、水を抜く「排水」に、同じ1つの水路を使う水田が多くありました。
水路を水田と同じ高さに作ることで、田植えの際には水を入れ、稲刈りの前には水を出す、という使い方をしていたのです。
そして、この水路と水田のつながりが、水路でくらし、水田で産卵する生きものたちの営みを支える大きな要素となっていました。
しかし、近代の農業では2つの水路は分けられ、用水は川や水路からポンプで汲み上げ、排水は水田より低い水路に水を流す形で、簡単に行なわれています。
農業は効率化されましたが、生きものの観点からすると、水路と水田の間に高低差ができ、水の流れも一方通行になってしまったことで、季節や成長に合わせた生息環境への移動が困難になってしまいました。
こうした変化が今、水田を含む里山・里地の自然と、そこに生きる野生生物が数を減らす原因の一つになっています。
その中で、どうすれば水田の自然を守れるのか。WWFでは、地域や研究者の皆さんと共に、新しい挑戦を続けています。
現在この活動を支援するキャンペーンも実施中。ぜひご支援をお願い致します。