資料案内『感染症パンデミックを防ぐために、緊急に見直すべき野生生物取引の規制と管理』
2020/06/11
動物由来感染症とエキゾチックペット
動物からヒトに感染する「動物由来感染症」。
これは、感染症を保有する動物の血液や唾液への接触、噛まれた傷(咬傷)、汚染された水やペットフード、ダニや蚊といった他の動物を媒介して感染する病気です。
世界保健機関(WHO)によると、現在、世界で確認されている動物由来感染症は200を超えるといわれており、さらに、世界中で広がっている新型コロナウイルス感染症も、この動物由来感染症であると考えられています。
とりわけ日本でも人気の、海外の珍しい動物をペットにした「エキゾチックペット」の飼育や販売も、こうした病気の感染を広げるリスクがあるため、細心の注意が必要です。
懸念される日本の対策
日本はキツネやフクロウ、カメなど、海外の動物をペット目的で数多くの輸入している、エキゾチックペット輸入大国です。
その中で深刻な感染症の広がりを防ぐためには、特に、海外から国内に病原体を持ち込ませない対策が重要となります。
現状、日本で行なわれている、海外との水際の対策としては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」「狂犬病予防法」といった法律に基づき、国内の空港や港湾で輸入禁止や、輸入時の検疫・届出といった措置が取られています。
感染症法、狂犬病予防法に基づく輸入動物の水際対策
しかし、こうした法を破り、水際を擦り抜け、日本国内に「密輸」された動物は、検疫などを受けることもないため、人間に有害な病原体を、同時に持ち込んでしまう危険があります。
実際、日本で人気のあるエキゾチックペットの中には、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」で輸入が規制されている動物やIUCNのレッドリストで絶滅のおそれがあると心配されている動物も含まれており、こうした動物密猟や密輸される事例が後を絶ちません。
問われる責任と、取るべき対策
こうした法律の不備は、税関職員やペットを扱う業者、さらにそれを購入した消費者たちを、動物由来感染症の感染リスクにさらす可能性を高めてしまうのみならず、海外で絶滅の危機にある野生動物を、さらに追い込んでしまうことにもつながります。
また、密輸される動物の輸入元となっているのは、主に東・東南アジアの野生生物取引市場です。
そうした市場は、取引規制や衛生管理が不十分なために、世界的なパンデミックの発生を引き起こす懸念がもたれています。
つまり、日本のエキゾチックペット取引が違法取引を誘発し、また、感染症拡大の要因と指摘される市場を活発化させていると言えます。
エキゾチックペットの輸入国として、日本はその責任を十分に認識し、問題解決に取り組む必要があります。
WWFジャパンは2020年6月11日、この動物由来感染症と日本のエキゾチックペット取引の関係性や危険性についてまとめたパンフレット『感染症パンデミックを防ぐために、緊急に見直すべき野生生物取引の規制と管理』を作成しました。
このパンフレットでは、動物由来感染症の事例や、日本の現状の対策、考えられる危険性について紹介。
さらに、消費者、ペット業界、水際、そして政府に対し、取るべき行動についての提言をまとめています。
WWFはこうした資料を広く活用しながら、これからもエキゾチックペット取引や法執行体制の現状について調査を継続し、必要な法制度の改善や整備を、働きかけてゆきます。