© Adriano Gambarini / WWF-US

国会議員主催勉強会で動物愛護管理法改正を提案

この記事のポイント
動物の飼育や管理の在り方について定めた、日本の国内法「動物愛護管理法」。しかし、現行の規制は主にイヌ・ネコ を対象としており、野生動物の利用に関する内容は、不十分な点が多くあります。こうした野生動物の中には、絶滅の危機にある種(しゅ)も含まれるケースがあることから、WWFジャパンでは愛玩、ふれあい目的での野生動物利用が、生物多様性劣化の一因とならないよう、法律の改正に向けた要望を行なっています。2024年6月17日には、その一環として、国会議員主催の勉強会で、野生動物のふれあい利用の課題と改善策について発表を行ないました。
目次

ペットやふれあい利用が野生動物を脅かす?

現在、動物の飼育や管理について定めた法律「動物愛護管理法」の次期改正に向けた動きが加速しています。

そうした動きの一環として、立法者である国会議員のグループでは、現行法の課題や論点の整理が活発に行なわれています。

ペット利用に加え、「展示・ふれあい利用」も、その重要なテーマのひとつ。
このテーマは、イヌやネコなどの家畜化された動物だけでなく、野生動物にも深いかかわりがあります。

ふれあいのために利用される野生動物の中には、絶滅のおそれのある種が含まれているケースも認められています。

そして、現状の日本の法律では、こうした販売やふれあいの対象とされる野生動物が違法に野生から捕獲されたり、密輸された個体ではないことを確かめる手立て(トレーサビリティ)がありません。

これは、日本のペット利用が、過剰捕獲や違法取引を助長し、野生動物が生息する地域の生物多様性を損なうことにつながるリスクがあることを物語っています。

国会議員主催の動物愛護管理法の改正を考える勉強会で発表

そうした中、WWFジャパンでは「動物愛護管理法」の次期改正に際し、同法をどう改善するべきか、国会議員や環境省に対し提言や情報提供を行なってきました。

2024年6月17日には、国会議員からの要請を受け、議員主催の勉強会で野生動物のふれあい利用の課題と改善策について発表。

©WWFジャパン

勉強会の開会挨拶のようす

日本の野生動物を扱うアニマルカフェの特徴や課題について、登壇したスタッフより調査結果を基に報告を行ないました。

実際、日本のアニマルカフェは諸外国に比べ圧倒的に数が多く、また取扱い種も多様であることや、アニマルカフェで行われる不適切な展示やふれあいが、野生動物の飼育・接触需要を喚起し、さらには野生動物に対する誤った認識を促しています。

この勉強会には、動物福祉の専門家や(公財)日本動物園水族館協会も招聘され、アニマルカフェでの展示が動物福祉に配慮されていない実態や、国内外の動物園水族館が取組む重点項目と野生動物を展示利用することに伴う責任についても説明がありました。

参加した国会議員からは、次々に野生動物ビジネスが誕生することへの懸念も含め、野生動物飼育の改善の必要性を認識する声があった他、有効な対策への意見交換がなされました。

© WWF-US / Marlon del Aguila

オブザーバーからは、特にサル類のふれあい利用について問題視する意見が出された

法改正に向けて

次期の「動物愛護管理法」の改正において、WWFジャパンでは野生動物の利用について、主に次の点を改善すべきことを提案しています。

  • 法律の目的規定に「生物多様性」を明記し、動物の取扱いにかかわる内容については「動物の愛護」から「動物福祉」に用語を置き換えること
  • 一般的に動物福祉に配慮した飼育が難しいと思われる野生動物種を同法で明確に指定し、 良好な動物福祉の確保や適切な感染症対策を行える事業者のみが飼育できる仕組みを導入すること
  • 一部の哺乳類、鳥類、爬虫類については、所有者に飼養個体の個体識別措置の義務を課し、責任所在を明確にすること。さらに個体識別措置を活用したトレーサビリティシステムを導入し、事業者には、生産地、動物の由来(野生捕獲、飼育下繁殖)などの情報の登録を義務付けること
  • 両生類を第一種動物取扱業の規制対象動物に加えること
  • 特定動物の飼育違反への罰則を強化すること など

今後は、改正案の運用方法や実効性確保を含めた提案と働きかけを行なっていく予定です。

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