洋上風力が開く地域の未来! 丸紅訪問記[後編]
2025/02/06
再エネの需要が大きくなる程、洋上風力発電への期待が高まります。分散型のイメージが強い再エネですが、洋上風力発電は大容量で発電ができ、スケールメリットによるコスト低減が可能です。一方で港湾というインフラを使いながら大規模な洋上工事を伴うため、巨額の資金も必要になります。それゆえに各国では、まさに国家的なプロジェクトとして洋上風力発電を位置づけています。地域の成長をかけて、早くから洋上風力の誘致を図ってきた秋田県、その秋田沖に洋上風力を立ち上げた秋田洋上風力発電株式会社。その中枢をになう丸紅株式会社を訪問してきました。
日本では風車メーカーは撤退してしまい、今は国内にはないのですが、実は洋上風力産業というのは、海洋土木事業であり、建設・運輸業でもあります。経済産業省は2040年までに部素材の国内調達率を60%にする目標を掲げており、国内の産業育成に大いに役立つのです。特に風況のよい場所は地域にあり、地元企業にとっては大きなチャンスです!
お話を伺った丸紅(株)の洋上風力・国内再エネ事業部長 岡垣啓司さんは、「洋上風力発電事業は新たな産業育成策の柱の1つと捉えています」と言い切っておられます。確かに有力企業が適地に進出するだけでなく、地元企業が参画する機会にもなります。さらには今回のように製造・研究拠点になれば優秀な人材も確保でき、地元の有力な就職先ともなります!
秋田洋上風力発電(株)のケースでは、秋田港・能代港でのプロジェクトを経て、風車以外の8割の作業を日本企業でまかなえるようになったと言います。地元企業の関わりも広がっており、メンテナンス関連では、全体の4割を県内の企業が担っているとか!たとえば風車のメンテナンスのために定期的に船で風車まで通う必要がありますが、その船の運行も地元企業が手がけています!
![秋田洋上風力発電プロジェクト概要が紹介されている展示場「AOW風みらい館」に掲示されていた秋田港の洋上風力プロジェクトに関わる企業ロゴ。地元企業も多く参画しています。](/image/article/article_images/20250206_2climate01.webp)
秋田洋上風力発電プロジェクト概要が紹介されている展示場「AOW風みらい館」に掲示されていた秋田港の洋上風力プロジェクトに関わる企業ロゴ。地元企業も多く参画しています。
面白いなと思ったのは、城壁や橋などの石材を扱っている地元の会社のケースです。実は洋上風力も石を使い、基礎部分を掘ったところに石をまいていくそうです。その石材会社に手掛けてもらったら、その会社は他の風力事業にも納入するようになったそうです!まさに地元企業の新ビジネス拡大につながっています。
再エネは地元との共存があってこそ!なるべく地元の事業者を巻き込もうと努力されておられる姿に感動しました。どのように地元の会社を探しているのですかとお聞きしたところ、マッチングには地域の建設会社と地方銀行が仲介役を果たしたとのこと。地元企業との架け橋となる秋田銀行さんでは、2024年7月に洋上風力発電事業の関連産業への地域企業の参入を進めるための専門チームとして「洋上風力産業支援室」を新たに設置しています。
その原動力となるのは、やはり国の主導と、県などの自治体の強力なリーダーシップ。地域と一丸になった再エネの未来は明るいですね!詳しくは、視察記をご覧下さい。
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20241220climate01.pdf
![丸紅株式会社の洋上風力・国内再エネ事業部長 岡垣啓司さんと。](/image/article/article_images/20250206_2climate02.webp)
丸紅株式会社の洋上風力・国内再エネ事業部長 岡垣啓司さんと。
※この記事は、日報ビジネス株式会社のご許可を受けて「隔月刊 地球温暖化」から転載しています。
(気候・エネルギーグループ 小西)