小泉環境大臣の演説に国際社会は落胆 2度目の化石賞を受賞
2019/12/12
12月11日、スペイン、マドリードで開催されているCOP25の本会議場で小泉進次郎環境大臣が演説のために登壇したときの期待は、演説を終えたときには落胆に変わりました。国際社会が日本政府に求めていたのは、気候危機を回避するための温室効果ガスの削減目標の引き上げ、そのために不可欠な石炭火力発電からの撤退です。しかし、小泉大臣はついに目標の引き上げに言及することもなく、さらに石炭廃止の可能性すら示されることなく演台を降りたのでした。
これが国際社会に対する日本政府の答えなのでしょうか。
この演説に対して、世界の市民社会は、会期中2度目となる化石賞を贈ることで応えました。
化石賞は、地球温暖化に取り組む世界120か国の1300を超えるNGOのネットーワークであるCANインターナショナルが、温暖化対策に消極的な国に与える不名誉な賞です。
石炭火力発電はどのように高効率であっても、天然ガスの約2倍のCO2を排出するため、気候変動の最大の要因のひとつです。そのため、日本政府が国内で石炭火力発電の新設を進め、さらに公的資金で海外の石炭火力を支援している姿勢には、早くから世界の環境NGOが批判をくり返してきました。
それでも石炭火力に邁進する日本に対して、国連も警告を発し始めました。COP25直前には、国連環境計画(UNEP)が最新の報告書で日本に対して石炭火力発電を新設しないよう促し、COP25の開会式では、グテーレス事務総長が9月の気候サミットに続いて、ふたたび石炭火力発電からの“中毒”から脱却するよう訴えました。
⼩泉環境⼤⾂が、日本の大臣としては初めてCOPにおいて「国際社会からの日本の石炭政策に対するグローバルな批判は認識している。グテーレス事務総長の石炭中毒からの脱却の訴えも、日本に対するメッセージと受け止めた。」と率直に述べられたことに今までにない真摯さは感じました。そして「本日は日本の石炭姿勢に何も進展は伝えられないが、自分を含めて多くの日本人がより気候対策をしなければならないと信じている」として無念さを滲ませていたのが印象的でした。いずれにしてもこのCOPではゼロ回答であることには変わりありません。
国内では、自治体や企業などの非国家アクターが脱炭素社会への移行に向けて努⼒を重ねています。また、日本政府は途上国における気候変動対策を支援する「緑の気候基⾦」に累積で世界第2位の貢献をしています。国際的にも評価されるこうした取り組みの数々が、消極的な気候変動政策のためにかき消されてしまうのは、⽇本全体にとっても得策とはいえません。
改めてCOP25という場で、日本の石炭偏重姿勢が、世界の市民社会のみならず、国連事務総長や他国からどれほど批判を受けているのか、示されたことを日本政府は真剣に受け止めなければなりません。次の国際的な場では日本の方針転換の表明を切に願います。
(自然保護室・小西)