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再エネの大規模電源:洋上風力の魅力! 丸紅訪問記[前編]


再エネに出遅れた日本では、まだ再エネと言えばコストが高い、と思っている方が多いかもしれませんが、再エネ先進国では、すでに再エネは、火力発電よりも最も安い電源となってきています。中でも風力は、大きな風車が開発されるにつれ、さらに大量の電気を作り出すことができるようになり、kWh当たりの発電コストは低くなっています。特に海の上に建てる洋上風力は大容量で発電ができ、スケールメリットによってコストを下げることが可能で、有力な脱炭素電源として期待されます!

ところが日本では、欧州に比べて風が風力発電に向いていない、台風や雷が多くて向かない、などの声も聞かれるため、秋田沖で早くから洋上風力に取り組んでこられたパイオニアの丸紅さんを訪ねて、現地を視察してきました。実際の事業をになうのは、地元企業7社を含む13社が参画する秋田洋上風力発電株式会社。国内初の商業プロジェクトとして全国から注目を集めています!

訪れた日も風が強く、高台から海を見渡すと、多くの風車が海上に立ち並んで回っている様は圧巻でした。さすがに日本でも有数の風力発電の適地である秋田沖!安定して秒速7~8メートルの風が吹いているそうです。ちなみに風況のよい欧州の適地では、平均風速はおよそ9~10メートルということなので、日本では少し劣りますが、平均風速から年間発電量を割り出すと、発電コストがやや高くなってしまうというだけのこと。決して日本の風況が向いていないわけではありません。

取材中も声がかき消されるほどの強い風が終始吹いていて、“風力発電の適地“を実感しました。
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取材中も声がかき消されるほどの強い風が終始吹いていて、“風力発電の適地“を実感しました。

また日本海側なので冬には雷が多く発生し、台風も襲来します。落雷に対しては、レセプターで受け取って下に逃がすようにはしているものの、どうしても羽の途中に直接落ちるケースもあるそうです。その場合には補修したり、羽を一本変えることも。ちなみに欧州でも羽が破損してブレードを交換することは結構あるそうです。

台風に関しては、もともと工事ができない期間を想定して工程を作って対応されているそうです。こういった日本に固有の気象事情はありますが、「課題はあるものの、きちんと対応すればできる話」と秋田洋上風力発電社の井上聡一社長は力強くおっしゃっていました。「あとはお金をどうかけずにやるかという経済性のバランスで、現在日本では、その経験値を蓄積しているタイミング」と語られ、なるほどと納得しました!

なお、現場の秋田港湾には火力発電所も立ち並んでいました。実はそれらは順次閉鎖されているそうで、代わりに洋上風力が次々と姿を現しているのです。過去と未来の交錯の風景!と思ったら、元々火力発電所があったからこそ港が整備されており、そこに巨大な風車の建設に耐える“地耐力”を整えるだけで済んだとのこと。さらには火力発電所のために送電線も備わっていて、洋上風力にはうってつけの適地であるわけです。まさに「過去を活かして未来を建設していく再エネ」の現場でした!!!
詳しくは、視察記をご覧下さい。
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20241002climate01.pdf

秋田港湾に立ち並ぶ火力発電所。「過去を活かして未来を建設していく再エネ」の現場がありました。
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秋田港湾に立ち並ぶ火力発電所。「過去を活かして未来を建設していく再エネ」の現場がありました。

※この記事は、日報ビジネス株式会社のご許可を受けて「隔月刊 地球温暖化」から転載しています。

(気候・エネルギーグループ 小西)

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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