© John P Starr

中国で進展?センザンコウの保全


ウロコを全身にまとった、不思議な姿をした哺乳類、センザンコウ。

アジアとアフリカに合計8種が分布していますが、肉やウロコを食用や薬用に利用するため乱獲が続き、どの種も深刻な絶滅の危機にさらされています。

©naturepl.com/Roland Seitre/WWF

このセンザンコウについて今月、中国政府が2つの発表を行ないました。

まず、5日に発表されたのは、中国に生息するセンザンコウを「国家一級保護野生動物」に指定する、というもの。

この「国家級保護野生動物」とは、中国政府が法律で保護の対象とすることを定めた動物で、第一級、第二級といったランクがあります。

最も厳重な保護下に置かれる第一級の代表は、あのジャイアントパンダ。センザンコウはこれまで第二級でしたが、今回それが「昇格」したことになります。

さらに9日、中国政府は、漢方薬などの伝統薬の原料として利用可能な動物のリストから、このセンザンコウを外すことも発表しました。

©TRAFFIC

保全施策の強化の理由は、明らかにされていませんが、背景としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような病気の拡大や再発を防ぐ狙いがあると考えられます。

実際、センザンコウは、人間にも感染する動物由来感染症を媒介する野生動物の一種である可能性が指摘されており、その利用については懸念も指摘されてきました。

中国の高いセンザンコウ需要が、アフリカやアジアで密猟や密輸を招き、さらに大量の消費につながってきた事実は、感染症の危険を増大させる問題でもあるのです。

今後は、こうした野生生物の取引や利用の在り方が、中国のみならず、各国でより真剣に検討されることになるでしょう。

ペット目的で多くの野生動物を輸入している日本もまた、その例外ではありません。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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