DNA検査で両生類の違法取引を防止!
2022/05/11
今、野生のカエルやサンショウウオなどの両生類を、ペットとして販売する事例が増えています。
種類によっては、そのための捕獲が、絶滅の危機を高める、深刻な原因にもなっています。
保全策の一つとして、こうした希少な両生類の捕獲や取引を法律や条例で制限する手立てがあります。
しかし、世の中にはこうした希少な動物を敢えて捕獲し、高値を付けて売る、という欲深な人たちがいます。
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南西諸島固有種のイボイモリ(Echinotriton andersoni)は、危急種(VU)。種の保存法で捕獲や輸出入、国内販売は禁止されている。
そうした取引が頻発するようになったため、今年1月に改正された「種の保存法」で、日本産のサンショウウオ類が多数、販売・頒布目的での捕獲や取引が禁止されることになりました。
ですが、取引禁止のルールがあるだけでは問題は解決しません。
特にサンショウウオ類は似た外見のものが多く、パッと見ただけでは、どの種(しゅ)であるかを、正しく識別するのが難しいためです。
識別の難しさに付け入って、捕獲や売買が法律禁止されている種(しゅ)を、姿の良く似た規制のない別の種だと偽って、違法に販売する、悪質な手口も、実際行なわれています。
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マンシャンイボイモリ(Tylototriton lizhengchangi)。日本のイボイモリと姿の似た近絶滅種(CR)。ワシントン条約により輸入には規制があるが、国内販売は可能。
そうした中、京都大学の研究グループによって、違法な販売を阻止するのに有用な技術が発表されました。LAMP法を用いた、遺伝子検査の手法です。
LAMP法は、発展途上国での結核検査や新型コロナウィルスの簡易検査にも用いられているもので、プライマーという合成DNAと小さな増幅装置があれば、簡単に行なうことができ、短時間によく似た種を識別することができます。
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DNA解析技術は、野生生物の保全のために様々に活用されている。写真は、タイの国立公園職員が押収された象牙の由来を調べる様子。
法的な保護の対象種か否を判別する「識別」は、法執行に必須の情報。
しかし、そのためのツールは多くが、活用に訓練やインフラを必要とするため、実際の「識別」は容易ではありませんでした。
その意味で、研究チームによる今回の発表は、違法な取引を抑止していく、大きな力になってくれることが期待されます。
偽装して違法取引される野生動物は、サンショウウオだけではありません。
こうした技術の開発が進み、世界中で広く活用されるよう、後押ししたいと思います。
(野生生物グループ・若尾)。