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COP29結果報告

この記事のポイント
世界の200近い国々が協力して脱炭素化に取り組むことを約束したパリ協定。このパリ協定の実施施策や追加ルールを議論する国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が、アゼルバイジャンの首都バクーにて、2024年11月11日から24日まで開催されました。 主要な議題と目されていた、「資金」の目標金額については、難航した交渉の末に、途上国向けの資金として、民間・公的資金などを合わせて「2035年までに年間3000億ドル」へと増やしていくと合意されましたが、この金額は、1.5度を目指すための脱炭素化や、特に気候変動の影響を受ける国々への支援という観点からは不十分な目標となってしまいました。 今回の会議ではこの他にも、前回のCOP28で宣言された化石燃料に依存したエネルギー体制からの決別をどのようにフォローアップしていくのかという課題や、「6条」と呼ばれる国際的な市場メカニズムに関するルール、公正な移行を国際的にどのように推進していくかなど、いくつかの議題がありましたが、それぞれについて濃淡のある成果を残した形となりました。 他方、交渉の外では非国家アクターによる脱炭素化に向けての各種イニシアティブ推進が着々と盛り上がりを見せている様子が見られました。
目次

新たな資金目標の合意

COP29の最大の論点とされていたのは、「資金」でした。つまり、パリ協定を実施していくために必要なお金の流れを、特に先進国から途上国に向けてどう引き起こしていくか、という課題でした。

これについては既存の目標が存在します。パリ協定採択よりもさらに前の2009年の時点で、「2020年までに先進国から途上国に年間1000億ドルの資金を動員する」という目標が掲げられていました。「動員(mobilize)」という言葉には、政府が出す公的な支援と、政府支援をきっかけに民間が行なう投資などの資金の流れの両方が含意されています。

2015年にパリ協定を採択する際に、この「1000億ドル」目標については、2025年まで継続することが決められ、同時に、2025年より前に(つまり2024年までに)、それ以降の目標を設定するということも決まりました。

そして迎えた、2024年のCOP29。

残念ながら、先進国が約束した「1000億ドル」目標については、2020年時点では836億ドルとなり、2年遅れの2022年の時点でようやく1159億ドルで達成したという状態でした。このため、途上国としてはより先進国に対して強く資金をコミットするように求めていました。特に、適応対策や損失と損害対策といった分野では、公的資金が果たす役割が強いので、公的資金の供与としての目標をしっかり示すことを求めていました。

他方で、先進国としては、脱炭素化対策にあっては民間資金の役割が重要であり、公的支援だけでは到底足らないことや「途上国」というカテゴリーの中でも、新興国と呼ばれる経済成長の著しい国々は拠出側に参加するべきだとの主張をしていました。

定められるべき金額の目標としては、年間で「兆ドル」単位という数字が会議前の議論の時点から出されていましたが、その中身が、公的支援だけの話をしているのか、それとも民間投資も含むのか、一部の途上国の参加もあっての話なのかなどの論点があり、なかなか交渉は進展しませんでした。「兆ドル」と聞くと途方もない数字に聞こえますが、気候資金に関する常設委員会(SCF)が出した報告書では、「世界全体」での資金の流れを算定すると、2021~2022年の平均金額として1.3兆ドル/年があったことが確認されていたため、範囲の設定の仕方によってはそこまで荒唐無稽でもないということは分かっていました。ただ、やはり「どのお金の流れを指しているのか」という定義が課題でした。

合意文書に向けた交渉は、1週目では少なくとも5回以上、議長による合意の草案が書き換えられましたが溝は埋まらず、第2週目での閣僚級会合まで議論はもつれました。閣僚級会合を経て、木曜日早朝に改めて議長草案が示されましたが、その時点でも大きな溝は埋まっていない状態でした。その後のさらなる厳しい交渉を経て、ようやく、会期を延長した11月24日に合意が採択されました。
合意文書は、途上国への資金の流れについて、政府に限らぬ全ての主体に対して、総額で、2035年までに年間1.3兆ドルを目指すことを呼びかける一方で、先進国(政府)が主導しつつ、民間資金と公的資金を合わせたお金の流れを、2035年までに年間3000億ドルに増やしていくことを目標として決定しました。この「3000億ドル」が実質的な新しい資金目標となりますが、公的資金の役割を重視していた途上国からすると、民間資金も含む上に額も低く、大きく不満の残る内容となりました。

また、COP26とCOP27の議長からの要請で設立された資金に関する国際的な専門家グループは、パリ協定実施に必要な資金について試算をしていますが、その金額と比較しても低くなってしまいました。同グループは、会期中に新しい報告を出す一方で、合意案での資金の定義に沿うなら、「2030年までに少なくとも3000億、2035年までに3900億が必要」と提案をしていました。今回の合意は、そうした専門家グループの試算で必要とされている金額にも届かず、気候資金の目標としては不十分な結果となってしまいました。
また、途上国が、南南支援などの形でこうした資金の流れに貢献していくことについては、あくまで自主的に行なわれることになりました。

資金目標は単純な金額だけの問題ではありません。温室効果ガス排出量を減らす対策にも、深刻化する気候変動の影響に対応していく対策にも、資金は必要です。加えて、今後、途上国も含めた全ての国々が新しい削減目標を2025年2月までに提出していくにあたって、野心的な目標を掲げるには、資金面でのバックアップがあり得るという確証が必要な状況でした。つまり、パリ協定を着実に実施していくための予見可能性を与えるという意味での役割があるのです。その意味で、資金の不足という不確実性は、大きな影を落とす結果となってしまいました。

他方で、2025年ブラジルに向けて、新しい資金源の検討を行なうための「1.3兆ドルに向けたバクーからベレンへのロードマップ」が設立され、次回のブラジル・ベレンでのCOP30において報告がされることになりました。会期の最後に急ごしらえで作られた「ロードマップ」ではありますが、最大限に活かして、不十分な資金を増やしていく努力がなされなければなりません。

アゼルバイジャンの首都バクーで開催された国連の温暖化防止会議COP29
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アゼルバイジャンの首都バクーで開催された国連の温暖化防止会議COP29

緩和:削減行動の強化について

パリ協定の長期目標は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5度に抑えることですが、現状各国が国連へ提出しているGHG排出削減目標(NDC)は、全て足し合わせても、地球の平均気温の上昇を、1.5度はおろか、2度未満に抑えるにも足りていません。そのためパリ協定には、各国が5年という期間ごとに新たな排出削減目標(NDC)を掲げ、かつ次の期間の目標は以前のNDCを上回ることが義務になっています。

2023年末のアラブ首長国連邦ドバイという化石燃料国で開催されたCOP28では、次の2035年のNDC提出を控え、世界全体でどの程度温暖化対策が進んでいるかの進捗報告(グローバルストックテイクと呼ばれる)が実施されました。その結論として、COPの合意文書では初めて「化石燃料からの脱却していくこと」が盛り込まれたのです。また「2030年までに世界全体で再生可能エネルギーを3倍にし、エネルギー効率を2倍にすること」などエネルギー関連の歴史的な合意がなされました。また、2023年4月に発表されたIPCC第6次評価報告書(AR6)で示された、2035年までにGHG排出量を2019年比で60%削減が必要であることを踏まえて、次の2035年NDCを提出することも盛り込まれました。

同じ化石燃料国のアゼルバイジャンがホスト国を務めるCOP29においても、前年のエネルギー合意を受け、さらに強化していくことが求められていました。

しかし、気候資金の進展が芳しくないために、緩和の強化はおろそかにされ、1週目にはほとんどテキストの俎上にも上らず、2週目になって出てきた議長テキストにもほとんど言及もない有様でした。これに欧州連合を始め、島嶼国連合らが強い抗議をして、会期最終日の11月22日になって出された議長テキストには、ようやくグローバルストックテイクで得られた成果の実施に関する合意文書案の中に、緩和策のフォローアップが入ってきました。そこにはCOP28で決まった化石燃料からの脱却や2030年までの再エネ3倍などの進捗について、毎年パリ協定会合に報告される、という形になっており、かつ具体的な電力網や蓄電システムの導入量の目安など具体的な数値も入っていたのです。

終盤での交渉激化の中で、妥協点を探る議長草案も出され、いったんはまとまるかに見えました。しかし、会期延長された土曜日の深夜から次の日の早朝にかけての終盤の全体会合でなんとこの昨年のグローバルストックテイクを活かすための決定は、気候変動枠組み条約の第16条という、決まらなかった議題は次の会合に先送りされるというルールの適用となって、最終的には採択できずに、来年に結論は持ち越されてしまったのです。これを主張したのは、逆に緩和の強化の重要性を訴えていた国々で、明らかにこれでは不十分すぎて弱いという理由でした。

炭素市場(カーボンマーケット)のルール交渉(パリ協定6条)

もう一つの注目点は、パリ協定6条の炭素市場(カーボンマーケット)のルールについての交渉です。パリ協定6条は、いわゆる国際的な炭素市場のルールを決める条項です。6条2項は、二国間などの分散型のカーボン取引、6条4項は、京都議定書時代のクリーン開発メカニズム(CDM)の後を継ぐもので、国連主導型のカーボンメカニズム、そして6条8項は、非市場型のメカニズムのルールを決めるものです。

COP26(2021年)において6条の大枠のルールは決定しているのですが、実際に炭素市場を運用するための詳細なガイダンスや方法論について、COP27(2022年)、COP28(2023年)ともに合意ができずに先送りになってしまっていたのです。パリ協定6条のメカニズムは、基本的には途上国で実施された削減プロジェクトからの削減量を、ホスト国がNDCなどに活用できるというオフセットの仕組みであるため、ルールが厳格でなければ、地球全体でみた場合にむしろ削減を妨げてしまう恐れもあります。より緩やかなルールを設けることで積極的に炭素市場を活用し、気候資金の流れを作りたいと考える国と、厳しいルールや規制を設けることで炭素市場の「質」を確保し、確実に気候変動対策に資する仕組みづくりに重点を置く国の考えの違いで、合意ができませんでした。

結論から言うと、COP29では初めてパリ協定6条ルールが最終合意されたのです!これでパリ協定の決まっていなかった最後のピースが埋まったことになります!

交渉となった論点はクレジットを登録する国際登録簿のあり方など複数あるのですが、ここでは技術的なことよりも、今後6条が実施されるに当たって日本目線から知っておきたい2点だけ報告します。

①6条4項における除去クレジットの方法論

日本企業からも関心の高い論点として、大気中から二酸化炭素を除去する、いわゆる除去クレジットの方法論が今回ようやく合意されました。除去クレジット(carbon removal)とは、たとえばDAC(ダイレクトエアキャプチャー)と呼ばれる技術で大気中の炭素を回収する方法や、森林など自然資源を使って炭素を吸収する方法などがあります。

2050年に実質ゼロにするには、最後までどうしても排出が残ってしまう分野があるため、大気中から除去する技術は不可欠となります。民間のボランタリークレジット市場において、クレジット取引が企業間で人気になるにつれて、除去クレジットは究極の高品質クレジットとみなされ、高い関心を呼んできました。

除去クレジットの方法論は6条4項の一つとして、パリ協定会議の下に設置された監督機関が、2022年のCOP27に提言を出したのですが、2年にわたって結論は先送りされてきていました。そのため監督機関は2024年には密に各国の意見を集めて、それらを基に数回にわたる会合やワークショップを開催し、このCOP29に、除去クレジットの方法論の基準として提出し、なんとCOP29の初日に合意されたのです。

民間のボランタリークレジット市場は活況を呈していますが、パリ協定6条のクレジットは国連公認のクレジットとなるため、より価値が高くなると考えられます。そのため、クレジット取引に関心のある企業はこの6条におけるルールをよく知っておく必要があります。 2つだけお伝えすると、リバーサルリスク、これはいったん大気中から炭素を除去したとしても、それが大気中に戻ってしまうリスクです。リバーサルリスクには、リーケージや森林火災などだけではなく、地震などの転変地異や、テロや戦争などの人為起源のリスクも含まれるため、事は簡単ではありません。これらをどう防ぐかや大気に漏れ出ていないかをチェックするモニタリング、漏れ出てしまった場合に補填するバッファープールの設置等が決まっています。もう一つは、プロジェクトを実施する現地における人権保護や環境保全の仕組みが決まっています。これらのルールはこれからも6条4項監督機関においてさらなる改善なども図られることになっています。なお、6条4項クレジットは早ければ2025年には市場に出てくると予測されています。

②6条2項における資金メカニズムの仕組みSOPとOMGE

実は6条というのは、自動的に途上国の適応基金に資金が回る資金メカニズムでもあります。特に6条4項には、収益の配分(SOP:Share of Proceeds)という仕組みがあり、クレジット取引の際に、自動的に収益の5%が脆弱な途上国への適応資金に当てられることが決まっているのです。これは京都議定書のCDMを踏襲した仕組みで、当時の2%からパリ協定では5%にあげられました。そのため6条の合意でもって途上国にとっては適応へ回される資金が自動的に入る仕組みとして意義が大きいのです。

そしてもう一つ、本来6条の市場メカニズムはオフセットの仕組みとなって、地球全体で見た場合には、ゼロサムとなります。それを改善するためにパリ協定6条で入った新規の仕組みが、「グローバルな排出削減の全体的緩和」(OMGE:Overall Mitigation in Global Emissions)で、クレジット取引の際に自動的に2%をキャンセルするという仕組みです。2%ではありますが、地球全体のための削減と言うことになります。

資金COPとなった今回のCOP29で6条がとうとう合意されたことは資金支援の仕組みや新しい市場メカニズムのあり方として成果といえます。

ところが課題として、このSOPもOMEGも、6条4項では義務としてルール化されているのですが、6条2項では、義務ではなく、拠出は”推奨”となっています。本来は6条2項でも義務としてあるべきですが、それは当事者国に委ねられているのです。
ちなみに日本が力を入れており、6条2項の対象となるJCM(二国間クレジット制度)は、実はこの適応資金への5%の拠出も、OMGEへの2%の拠出も今のところしない予定です。

民間のボランタリークレジット市場は活況を呈している中、パリ協定6条のクレジットは国連公認のクレジットとなるため、より価値が高くなると考えられます。また上記の途上国への適応支援や地球全体への削減貢献の仕組みを持つ6条4項クレジットと、それらを出さない6条2項クレジットの価値がどのように評価されるか、など今後の動きも注目されるところです。

交渉外での非国家アクターの活躍

企業、自治体、大学、若者団体、先住民族、市民団体など、政府以外の主体「非国家アクター」が会場内のいたるところで見せる熱気あふれる姿は、COP29も例にもれず、大きな盛り上がりを見せました。

会期前半に行なわれたアメリカ大統領選の結果や、アルゼンチン交渉団の離脱を受け、世界の気候変動対策の後退を心配する声も聞かれました。しかし、それにひるむことなく、現地で前向きな姿勢を見せたのは非国家アクターたちです。

アメリカの非国家アクターが5000以上も参加する連合「AMERICA IS ALL IN(アメリカはみんなパリ協定にいる)」は、11月14日から3日間、数々のイベントを開催し、アメリカの非国家アクターの揺るぎない気候変動対策へのコミットメントを見せつけました。
印象的だったのは、アメリカの大手食品企業MARSのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのバリー・パーキン氏です。パーキン氏は、自ら掲げたネットゼロへの移行計画を進めるにはまだ数十年あり、そのうちに政権は何度も変わる。政権にかかわらず、我々はやるし、やれる、と力強く述べました。

また、11月16日、アルゼンチンの非国家アクター連合「アルゼンチン気候行動連合」は、他国の非国家アクター連合体と共催したイベントで、再生可能エネルギー導入に力を入れている同国フフイ州が、同連合に参加する署名式を実施し、会場では大きな拍手が響きました。

11月21日には、日本の非国家アクター連合「気候変動イニシアティブ(JCI)」もイベントを開催し、日本の企業らがネットゼロに向けた取り組みの進捗を発信。非国家アクターのネットゼロ行動を推進する国連キャンペーン「Race to Zero(ゼロへのレース)」や企業や自治体の気候変動対策を推進する国際団体「Climate Group(クライメート・グループ)」からもスピーカーが登壇し、日本の非国家アクターだけでなく、政府に向けても高みを目指す期待のメッセージを寄せました。

非国家アクターたちの発信は、自身の取り組みにとどまりません。交渉を続ける政府に向け、気候資金の合意はもちろん、野心的な政策を求める声がいたるところで聞かれました。企業や自治体などが自ら、政府に向けたポジティブなメッセージを発信する姿が目立つようになったことは近年見られる喜ばしい傾向です。

一方で課題もあります。それは、いかに非国家アクターの取り組みを信頼性・透明性あるものへと引き上げ、真に1.5度目標の実現に資する行動に整合させていくかです。

11月14日、この課題に関する2つの報告書が発表されました。一つは、非国家アクターのネットゼロに向けた取り組みの進捗を調査した報告書です。これによると、非国家アクターによるネットゼロ宣言は急増しているものの、取り組みの内容には改善の余地があり、特に化石燃料からの段階的廃止への自発的な取り組みが著しく不足していると指摘されています。

また、G20諸国における1000以上の政策を調査したもう一つの報告書によれば、ネットゼロを推進する政策は過去5年間で急増していることがわかりました。一方、各国の法律の範囲や政策の野心度、具体性などを見ると、1.5度目標に整合する非国家アクターの行動を促進するには不十分であり、依然として大きなギャップがあると指摘しました。このギャップを埋め、非国家アクターによる質の高い取り組みを加速させることは、民間による気候資金の流れを促進し、各国政府が定めるNDCの達成、ひいてはパリ協定の実現にも貢献することにつながります。この規制に関する報告書を作成した「ネットゼロ政策に関するタスクフォース」は、今後さらなる詳細な政策分析や関係者との対話などを進め、その結果をCOP30で報告する予定です。

このように、非国家アクターのネットゼロ行動を加速する潮流は、ますます勢いを増しています。鍵となるのは、セクターや分野、国境さえも超えた協働をいかに拡大していくか、またその推進力となる政府の規制や政策をいかに1.5度目標に整合させていくか。政府と非国家アクターが、共に野心を高めあうループをさらに大きく太くしていくことが不可欠です。

各国のNGOが連携し、1.5度目標を達成するため、各国に対して、2025年2月に国連に提出する2035年の目標に高い削減目標を掲げるよう求めるアクションを行なっていました。
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各国のNGOが連携し、1.5度目標を達成するため、各国に対して、2025年2月に国連に提出する2035年の目標に高い削減目標を掲げるよう求めるアクションを行なっていました。

閉幕を受けてのコメント

小西雅子 WWFジャパン 専門ディレクター(環境・エネルギー)
「パリ協定の肝は気温上昇を1.5度に抑えるために世界全体でいかに削減強化を図れるかにあります。今回の全体の気候資金額の合意が重要だったのも、途上国の削減強化を進めるために必至であったからこそ。資金は不十分ながら合意がはかられたのに対し、削減強化のフォローアップの合意が先送りされたのは非常に残念です。しかし2023年末のCOP28ですでに次の2035年NDC(削減目標)は、IPCC科学を参照して各国が提出するように定められています。IPCCの示した2035年に世界全体で必要な削減量は60%(2019年比)。日本の基準年の2013年比にすると、66%となります。先進国日本として、世界平均を上回る66%以上のNDCの提出が求められることを念頭に国内の議論を加速して行く必要があります。

田中健 WWFジャパン 気候・エネルギーグループ(非国家アクター連携担当)
「気候変動対策は政府だけでは進まず、非国家アクターによる実践あってこそ、1.5度目標は実現するのだということを実感する2週間でした。そして交渉と並行して行なわれる数々のイベントで多く聞かれたのは、分野を超えていかに協働を進めるか、また非国家アクターの取り組みを後押しする規制をどう加速するか、そして非国家アクター自身がよりよい政策を求めて声を上げることの重要性です。今回のCOP29ではそれらに向けた前進も見られましたが、まだまだスピードが足りません。1.5度目標に届くには、あらゆる非国家アクターの力を総動員することが必要です。」

山岸尚之 WWFジャパン 自然保護室長
「主要議題であった途上国に対して提供していく資金目標については、必要な水準に届かない残念な結果となってしまいました。これは、今後のパリ協定の実施にとって大きな不安材料となる結果と言わざるを得ません。しかし、気候変動の影響は待ってくれないし、早期に対策を開始しなければ必要な脱炭素化はなしえません。今後のプロセスの中で、資金については上乗せをはかっていき、今回の資金目標を「到達点」ではなく、「最低限」とするような努力が求められます」

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