国連生物多様性条約(CBD)の第15回締約国会議(COP15)が開始
2021/10/11
- この記事のポイント
- 国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)がいよいよ始まりました。新型コロナ感染症の影響で、今回のCOP15は2回に分けて開催するという異例の措置となっています。第一部は2021年10月11日~15日まで、オンライン方式と対面方式のハイブリット型で実施されます。議長国となる中国によるリーダーシップに注目です。
国連生物多様性条約で決まる2030年までのグローバル目標
生物多様性にかかわる国際交渉が本格始動しています。
国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)、カルタヘナ議定書第10回締約国会合及び名古屋議定書第4回締約国会合が2021年10月と2022年4月~5月の2回に分けて開催されます。
今回の交渉では2030年までのグローバル目標が決定されることから、非常に注目が集まっています。
2021年10月11日~15日まで開催されるCOP15第一部においては、オンライン式および対面式で開催され、実質的な交渉はありません。一方で、今回の締約国会議で議長国である中国がいよいよ前面に立って交渉を引っ張る立場となり、そのリーダーシップが問われています。
生物多様性の損失が甚大であるという認識の中、Nature Positiveに向け、各国の足並みをそろえる必要があります。一方で2011年~2020年までの目標として定められ、20の目標からなる愛知目標はいずれも達成できておらず、後退への余地は全くありません。
新たなグローバル目標を立てる今次会合では、実効性を担保しながら、野心的な目標を締約国間で合意できるかが焦点となっています。
交渉の終盤は、2022年4月25日から5月8日で開催されるCOP15第二部で、2030年までのグローバル生物多様性枠組み(GBF:Global Biodiversity Framework) が決定予定です
国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第一部での議論
2021年10月11日から開催されるCOP15第一部では、実質的な交渉はありませんが、各国からの生物多様性保全に向けた取組や高い目標に向けたコミットメントが注目されます。
具体的には、以下の3つが挙げられます。
- ハイレベルセグメントで注目される、議長国中国のリーダーシップ
- 昆明宣言(Kunming Declaration)で示すグローバル目標への野心
- 生態文明フォーラム(Ecological Civilization Forum)で示される多様なステークホルダーによる生物多様性分野への積極的関与
COP15が開始する前までに開催された会合では中国からの目立った発言はほとんど行なわれていません。やはり議長国である中国がどれだけリーダーシップをとれるかが交渉取りまとめの重要なカギとなり、ハイレベルセグメントでの発言が注目されています。
さらに現在中国主導でドラフトされ、COP15第一部で発表されるのが、昆明宣言です。中国主導で作成された昆明宣言概要では、生物多様性の主流化、持続可能な生物多様性保全、国家戦略と結び付けた効果的な実施、エコシステムアプローチ、人権保護などが含まれていますが、現在GBFの第一ドラフトに明示的に書かれていない項目、つまり自然を基盤とする解決策(Nature Based Solutions:NbSs)やワンヘルスなどについても言及がされ、一石を投じた形となっています。
また中国主催の生態文明フォーラムも会合期間後半から開始し、いくつかのフォーラムが開催される予定となっています。その中には気候変動と生物多様性に関するフォーラムや、NBSs、自然資本、生物多様性のファイナンスなどが含まれています。
上記開催期間中、WWFではハイレベルセグメントで他のNGOともに共同声明を発表するほか、生態文明フォーラムにおけるWWFインターナショナル事務局長マルコ・ランベルティー二によるスピーチや、WWF中国による生物多様性と気候変動のフォーラムを共同開催するなど、積極的に関与する予定です。
CBD国際交渉で求めていくべきこと、WWFが求めていくこと
WWFでは国連生物多様性条約における国際交渉において、NGOの立場から積極的にかかわってきています。
今後、生物多様性条約のGBFにかかわる議論が最終局面となる中、WWFは以下に対して重点を置き、2022年5月まで、継続した働きかけを実施していく予定です。
- 2030年までにNature Positiveを確保する
- 自然損失の要因となる生産と消費のフットプリントを半減する
- 強力で効果的な実施メカニズムを確立する
- 様々なステークホルダーから貢献を求め、生物多様性保全に反しない資金調達を目指す
- 権利に基づくアプローチ(Right-based approach)と社会全体(Whole of Society)を考慮に入れた活動の実施
WWFジャパンも、WWF代表団として加わり、世界の生物多様性保全と関連活動実施にむけ、取り組んでいきます。
【参考】COP15 第一部以降の動きについて
生物多様性に関連して、WWFが注目している国際会合は以下になります。これらの一連の会合を通じながら、野心の引き上げや合意形成がなされていきます。ぜひご注目ください。