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【COP28現地報告】2週目、閣僚級会合が始まりました


12月8日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている国連気候変動会議COP28は、1週間にわたる技術レベルでの交渉を終えて、各国の環境大臣を迎えて政治レベルでの交渉を行なう閣僚級会合に入りました。

1週目には、主要な議案のひとつ、損失と損害基金の運用が合意され、議長国UAEとドイツなどが次々に資金拠出を表明する歴史的な成果を上げました。

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1週目では、開会初日に損失と損害基金の運用に合意した。初日に議案に合意するのは、COPの歴史上初めてのこと。

基金の増額などまだ課題が残るとはいえ、難航が予想されていた重要議案が採択されたことで、残る議案を議論するための時間的な余裕ができました。

そのひとつが、グローバスストックテイク(GST)です。

パリ協定では、各国は5年ごとに包括的な気候変動目標(NDC)を策定することになっています。

GSTは、その各国の取り組みの総体が、パリ協定の掲げる目標にどれだけ近づくことができたのかを5年ごとに科学的に評価し、各国が次に策定する目標を引き上げるための政治的なメッセージを出すしくみです。COP28は初めてGSTが行なわれることでも重要な会議なのです。

開会に先立つ9月に発表されたGSTの統合報告書では、緩和、適応、損失と損害など多くの分野で、パリ協定が掲げる目標の達成には不十分であることが明らかになりました。

たとえば緩和では、各国の取り組みはパリ協定がめざす1.5度目標の達成には遠く及びません。1.5度目標を実現するためには、各国が2025年に提出する2035年目標が世界全体で60%削減につながる強いメッセージを出すことが期待されています。

しかし、1週目の交渉では各国の意見の隔たりを埋めることができず、合意文書の草案には多くの選択肢が併記されたたまま、閣僚級会合に送られました。そのため、残された1週間で、これらの議案の審議を尽くし、合意にこぎつけなければなりません。

開会初日に重要議案に合意した信頼と協力をGSTの合意にも発揮できるか、科学の成果を政治決断に生かして気候危機を解決する希望を世界に示すことができるか、会議に参加するすべての国の意思が問われています。

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12月8日にいよいよ始まった閣僚級会合。ジャベル議長はその開会式で、包括的なGSTの合意への協力を求めた。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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