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【開催報告】温暖化で地球に何が起きている? ~いま私たちにできること

この記事のポイント
アゼルバイジャンのバクーで、国連の気候変動会議(COP29)が開催され、気候変動(地球温暖化)や異常気象の問題に関心が集まる中、WWFジャパンは2024年11月17日、気象予報士・キャスターの井田寛子さん、東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授をお招きした、オンライン・イベントを開催。230名を超える方にご参加をいただき、地球温暖化が地球環境にどのような影響を及ぼしているのか、そしてその危機を解決するため、自分たちには何ができるのかを考えました。
目次

予測を超えたスピードで進んでいる気候変動

イベントでは冒頭、気象予報士・キャスターでWWFジャパン顧問でもある井田寛子さんより、2014年にWMO(世界気象機関)が主催しNHKが制作した「2050年の天気予報」を紹介。当時、どのように気候変動の未来を予測していたか、お話しいただきました。

その中で井田さんは、「2050年に起きる」と当時予測していた異常気象、たとえば猛暑日の日数や、最高気温の数値、熱中症の発生件数などが、2024年時点ですでに現実のものとなっていることを指摘。気候変動の脅威が、予測よりも早く、大規模に進んでいることを解説されました。

こうした状況の中、一人ひとりがどのようにこの問題を捉え、どのようなアクションが可能なのか。井田さんはこれを考えることが大事だということを強調しつつ、気象予報士としてご自身が取り組まれている活動などについてもお話しいただきました。

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気候変動はこれからどうなる?

続いて、東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授より、気候変動の仕組みと、今後の予測について、分かり易くお話をいただきました。

江守先生は世界中で進んできた、石油や石炭などの化石燃料の利用拡大や、森林破壊に伴う温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の大気中への排出増が、気候変動の原因であることを説明。

気候変化のシミュレーションを紹介され、気候変動対策を行なった場合と行なわなかった場合、2100年の地球がどのようになるか、その比較を説明されました。

その影響はすでに、世界の各地で、洪水、海面上昇、水不足、熱波、感染症など、さまざまな形で顕現し、大きな被害をもたらしています。そのいくつかは、既に日本でも実際に起きている問題です。

また、江守先生は今後、世界の平均気温がこのまま4度上昇した場合、その結果もたらされる高温・高湿度の影響が、世界の人の健康や野生生物にどのような被害を及ぼすかについても説明。

特に、その影響を、温室効果ガスをほとんど出していない、世界の貧しい国々の人、さらにこれから生まれてくる新たな世代が被っている実情を指摘され、私たちがこの現状をどう考え、行動するかが大事であることを強調されました。

左から東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授と、気象予報士・キャスターでWWFジャパン顧問でもある井田寛子さん
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左から東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授と、気象予報士・キャスターでWWFジャパン顧問でもある井田寛子さん

世界の課題 ~気候変動対策と生物多様性の保全

続いて、WWFジャパン気候エネルギーグループの羽賀秋彦からは、こうした気候変動の現状に対して、国際的にどのようなアクションがとられているか、WWFとしてどのような取り組みを行なっているか、紹介しました。

羽賀はまず世界の生物多様性が、1970年時点と比べ、その豊かさを73%も失ってしまった現状を指摘。WWFが活動の大きな目標として、2030年までにネイチャー・ポジティブ(自然の回復)と、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)の実現を目指していることを説明しました。

そして、これを実現するWWFの取り組みについても解説。重要な視点として、国際的な交渉や合意、日本の政策の改善、石油や石炭に頼ったエネルギー社会の変革、そしてビジネスの変化が「脱炭素」すなわち、温室効果ガスを出さない社会の実現に必要であることをお話ししました。

WWFジャパン気候エネルギーグループの羽賀秋彦
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WWFジャパン気候エネルギーグループの羽賀秋彦

パネルディスカッション ~私たちは何をするべきか

登壇した3者によるパネルディスカッションでは、まず井田さんが、2024年11月現在の日本について触れ、富士山の初冠雪が観測史上最も遅くなったことや、11月になっても大雨特別警報が発令されたり、気温が20度を超える日があることに言及。気候が変わってきていることを改めて指摘されました。

江守先生は、冒頭で紹介した「2050年の天気予報」の内容について、制作された当時は「本当にこのようなことになるのか?」「多少大げさではないか?」とお考えになられていたにも関わらず、むしろ2024年までの現状が映像のそれを越えてしまっている、と指摘。近年の台風や高潮の被害を見ても、25年前倒しで、気候危機の兆候を私たちが経験していることを話されました。

WWFの羽賀からは、気候変動の問題を解決するには「社会の仕組みを変える必要がある」ことを強調した上で、社会の仕組みを変えるために今、一人ひとりにできることとして、次の3つを指摘しました。

1)エネルギーの在り方を変えること

  • 化石燃料による電力に頼らず、再生可能な自然エネルギーを個々人でも活用することが重要。
  • 可能な人は、自宅に蓄電池や太陽光パネルの設置や自然エネルギーを扱う電力会社を選ぶことを検討する。

2)買うものを選ぶ

  • 気候変動対策を頑張っている企業も、頑張れていない企業も、気候変動に取組んでもなかなか消費者が評価してくれない、と言っている。気候変動対策を頑張っている企業を応援することが大事。そうした企業の製品やサービスを意識して選ぶ。
  • 気候変動対策を頑張っている企業の国際認定制度「SBT」も参考にしてほしい。
    関連情報:日本企業脱炭素本気度ウォッチ

3)国の政策に対して声を上げる

これを受け、江守先生からは、自治体が開催している気候市民会議のような、市民が行政に提案できる機会があれば 参加してみること、そして、「声」を届け、それが実際の政策変化につながった事例を紹介しながら、その実感をたくさんの人たちが手に入れることの重要さをお話しいただきました。

また井田さんは、国連広報センターが公開している「個人でできる10の行動」を紹介。こうしたものを含め、さまざまなアイデアや機会があること、何よりポジティブな考え方をもって、取り組みを行なっていくことが大切であり、メディアなどもそうした視点での発信を行なっていくことが必要だ、というメッセージいただきました。

オンライン配信後、WWFジャパン事務局での登壇者とWWF会員の皆さんの質疑応答。熱心なご質問やご意見をいただきました。
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オンライン配信後、WWFジャパン事務局での登壇者とWWF会員の皆さんの質疑応答。熱心なご質問やご意見をいただきました。

今回のイベントには、オンラインで約230名の方が参加。配信会場となったWWFジャパン事務局にも、抽選で選ばれたWWFジャパン会員の方々7名が足を運んでくださいました。

ご参会いただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。

WWFは今後も、国連の気候変動会議への参加や、日本政府やビジネス界への提言など、気候危機の解決に向けた取り組みを続けていきます。

イベント概要:温暖化で地球に何が起きている? ~いま私たちにできること

日時 2024年11月17日(日)
場所 オンライン +WWFジャパン事務局(東京都港区)
参加者 オンライン230名
対面7名(WWFジャパン個人会員の方)
主催 WWFジャパン
会場のWWF事務局では、温暖化が進むと日本の風物詩がどう変化するかを予想する、「夏の風物詩“止”展」のパネルも展示しました。
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会場のWWF事務局では、温暖化が進むと日本の風物詩がどう変化するかを予想する、「夏の風物詩“止”展」のパネルも展示しました。

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