AIによって電力需要は増えるの? NTT DATA訪問記[前編]
2025/04/28
日本の将来のエネルギーミックス像を描く第7次エネルギー基本計画が、2040年に向けて閣議決定されました。その議論の途上では、電力需要が今後データセンターやAIの学習用に大幅に増大するという予測が聞かれ、電力が足りなくならないようにという前提で議論が進みました。
しかし、本当にそんなに電力の需要は増大するのでしょうか?省エネ技術の進展や、AIも学習するべき情報量のピークを迎え、電力需要は想定ほど増えないという予測もあります。そこで日本のDXを担うNTT DATAグループに取材に行って、率直に「今後電力需要は巷で言われているほど増えると思われますか?」と聞いてみました。
すると「いずれの予測もあり得る未来。しかしどちらの未来になろうとも、今取り組むべきことは変わらない。たとえばデータセンターの場合は、電力需要を減らしていくには、基本的に二つの取り組みに分けられる。一つは、エネルギーを使わない、CPUパワーを使わない技術開発、すなわち電力効率を上げる取り組みと、もう一つは効率的にデータセンターを冷やしていくこと」と明確なお答え。

取材のご対応をいただきました株式会社NTT DATAグループ コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部 グリーンイノベーション推進室 室長 山根知樹氏
その際に大切にしておられるのは、NTT DATAの伝統の役割「つなぐ」ということ。たとえば、データセンターを冷却するには、今まではサーバーを冷やすとか、空調で冷やすとか、それぞれが個別に解決策を提供するという形だったところを、複数のメーカーや施設関係者や研究者などが一丸となって、可能性を追求したそうです。排熱の可視化から含めて機器の相性までもみていくと、いろいろな手法がある!これら複数社をつないで全員で同一の場で検証する、というラボを提供して取り組んでおられるそうです。実はこれまで複数のメーカーが一堂に会して検討していく、ということはあまりないそうで、まさに今ある日本の英知をつないで、新たな脱炭素化への価値を生み出していく、という姿勢に感動しました。
また「電力を使うデータセンターを再エネの豊富な地域に置けばよいのでは?」という素朴な疑問に対しては、実はデータセンターは、都市部に多いそう。なぜなら、海底ケーブルの陸揚げが基本的に都市にあり、顧客である省庁や企業が都市にあるため、そこから近いところにデータセンターを置くのが基本だからです。しかし用途によっては、地域でもできるものもあり、再エネの豊富なところに置くことを検討されているそうです。たとえば、AIがデータを収集して学習するときには、リアルタイムにどこかとつながっている必要はあまりないので、離れたところでもできる。地産地消の再エネで、地域で学習したAIが都市で活躍する、そういった絵図も描けるそうです!
もっと先んじると、北海道や東北などで、風が強いなど再エネが潤沢な時間においては、その地域で処理を回す、そうではないときは元の場所で処理を回す、そういった地域をまたいだ電力の運用ということも視野に入るそうです。まさに、DXで再エネの余剰もあますことなく使う、という未来像にワクワクしました!
がんばれ、日本の英知!!詳しくはNTT DATA訪問記をご覧ください。
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20250227climate01.pdf

※この記事は、日報ビジネス株式会社のご許可を受けて「隔月刊 地球温暖化」から転載しています。
(気候・エネルギーグループ 小西)