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Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)とは

この記事のポイント
SBTiは、WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブです。世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという目標の達成に向けて、企業は極めて重要な役割を果たします。SBTiは企業に対し、どれだけの量の温室効果ガスをいつまでに削減しなければいけないのか、科学的知見と整合した目標(Science-based target)を設定することを支援・認定しています。世界中で2022年末までに、約2000社の企業がSBTi認定を取得しています。日本企業では2015年10月にソニーが最初の認定を取得しました。SBTは、現在ではパリ協定に沿った目標策定のグローバル・スタンダードとなっています。本記事ではSBTiについて、わかりやすく解説していきます。
目次

SBTi参加企業(認定及びコミット)世界全体9659社のうち日本企業1450社、1.5度基準で認定を取得した企業世界全体6297社のうち日本企業1293社
ネットゼロ基準で認定を取得した企業 世界全体1318社のうち日本企業58社

ネットゼロ基準認定企業

  • 三菱地所株式会社
  • 日本ゼルス株式会社
  • キリンホールディングス株式会社
  • 大和ハウスリート投資法人
  • ソニーグループ株式会社
  • 株式会社ウフル
  • 株式会社ナンバースリー
  • 株式会社資生堂
  • J.フロント リテイリング株式会社
  • ケネディクス・オフィス投資法人
  • 野村不動産プライベート投資法人
  • 株式会社イードア
  • 日本プライムリアルティ投資法人
  • DBJプライベートリート投資法人
  • 日本都市ファンド投資法人
  • TIS株式会社
  • アスエネ株式会社
  • 大和ハウス工業株式会社
  • 富士通株式会社
  • 株式会社丸井グループ
  • booost technologies株式会社
  • オリンパス株式会社
  • 株式会社 eftax
  • オリックス不動産投資法人
  • 株式会社ベルシステム24ホールディングス
  • 大東建託株式会社
  • KDX不動産投資法人
  • グローバル・ワン不動産投資法人
  • 日本ビルファンド投資法人
  • パシフィックコンサルタンツ株式会社
  • アスクル株式会社
  • 株式会社ニコン
  • 株式会社 東芝
  • 株式会社 LIXIL
  • 株式会社NTTデータグループ
  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
  • 日本電気株式会社(NEC)
  • 株式会社野村総合研究所
  • ソフトバンク株式会社
  • 三菱地所物流リート投資法人
  • 日本ガイシ株式会社
  • 不二サッシ株式会社
  • アサヒグループホールディングス株式会社
  • DMG森精機株式会社
  • 高砂熱学工業株式会社
  • コニカミノルタ株式会社
  • 東急不動産ホールディングス株式会社
  • 川崎重工業株式会社
  • 株式会社ニチリン
  • TOPPANホールディングス株式会社
  • ケイミュー株式会社
  • 株式会社ZOZO
  • 武田薬品工業株式会社
  • パナソニック ホールディングス株式会社
  • アズビル株式会社
  • 株式会社電通グループ
  • 日本国土開発株式会社
  • 沖電気工業株式会社
  • 住友林業株式会社
  • 三機工業株式会社
  • 日清食品ホールディングス株式会社



日経平均構成銘柄企業225社のSBT取得コミット情報はこちら
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5512.html

SBTiとは

企業による排出削減の重要性

最新の科学によれば、気候危機の被害を最小限に抑えるためには、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5度に抑えることが重要であることがわかっています。2021年に開催されたCOP26ではこの「1.5度目標」が事実上世界の目標となりました。1.5度目標の達成には、世界全体でCO2を2030年に半減、2050年に実質ゼロにすることが必要ですが、この目標の達成には、温室効果ガスの主要な排出者である企業が確実に排出削減を進めていくことが極めて重要です。一方で、個別の企業にとって、1.5度目標を達成するには自社は具体的にどうすればよいのか、判断することは容易ではありませんでした。

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© Rob Webster / WWF

SBTiの設立

SBTiは、2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブです。気候変動を防ぐとともに、ネットゼロ経済における企業の競争力を高めることを目的として、SBTiは企業が具体的にどれだけの量の温室効果ガスをいつまでに削減しなければいけないのか、科学的知見に基づいて目標を立てられるようなガイダンスを作りました。このガイダンスに基づき、SBTiは企業に対して科学的知見と整合した目標(SBT: Science-based target)を設定することを支援し、適合していると認められる企業に対しては、SBT認定を与えています。SBTiは企業がSBTを設定することが当然となり、経済と環境が調和する社会を創り上げることを目標としています。

SBT基準の概要

SBTiが掲げる基準

SBTiは2015年の設立以来、最新の科学的知見にあわせて、認定する目標のレベルも更新してきました。SBTiが設定する短期目標の基準では、以前は「2度基準」や「2度より十分に低い基準」で認定を受けることも可能でしたが、現在では、「1.5度基準」(基準年から5年~10年を目標年とする短期目標で、スコープ1,2は気温上昇を1.5度以下に、スコープ3では2度より十分低く抑える目標)のみで認定をうけることができます。既に「2度基準」や「2度より十分に低い基準」で認定を受けている目標は引き続き有効ですが、2020年以前に認定された目標は2025年までに1.5度基準に整合するように更新される必要があります。

1.5度目標について詳しく知りたい方はこちら
▼WWFジャパン主催セミナー:「気候危機には1.5度目標がトレンド」

注目が高まるネットゼロ基準

ネットゼロに関する議論については、SBTiは、2050年以前にネットゼロに到達する水準の長期目標であるネットゼロ基準を設定し、企業に対して野心的な長期目標の策定を促しています(2021年発表)。2022年末のCOP27では、国連のグテーレス事務総長が設立した専門家グループによって、企業や自治体など非国家アクター向けの「ネットゼロの定義提言書」が発表されました。いわば国連のお墨付きのネットゼロの定義が発表されたことによって、これまでは企業が自主的に掲げてきたネットゼロ目標やカーボンニュートラル目標も、きちんと科学に沿ったものであることを示す必要性がますます高まっています。この国連のネットゼロ提言は、前年に発表されたSBTiのネットゼロ基準を参照して策定されており、科学に忠実に目標設定を求めているため、共通項が多くあります。

国連ネットゼロ定義提案書について詳しく知りたい方はこちら。
▼ウエビナー開催報告:企業が知っておきたい国連による「ネットゼロの定義提案書」(COP27で発表) ~業界団体のロビー活動やクレジットにご注意~

大企業だけではない!

1.5度目標を達成するには大企業だけでなく、中小企業を含めた全ての企業が排出削減を進めていくことが重要です。またSBTでは、自社の活動による排出(スコープ1、2)だけでなくサプライチェーン全体の排出(スコープ3)についても目標を設定しなければいけません。つまり、今後は中小企業も積極的にSBTを設定し排出削減を進めていかなければ、サプライチェーンから外されてしまう恐れもあります。SBTiでは、中小企業用のSBT認定プロセスも準備されています。

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© Greg Armfield / WWF-UK

現在の認定状況

世界中で2022年末までに、約2000社の企業がSBTi認定を取得しています。日本企業では2015年10月にソニーが最初の認定を取得し、2016年9月に第一三共、2017年には川崎汽船、コニカミノルタ、キリンホールディングス、コマツ、リコー、ナブテスコ等12社が参加し、以降急速に参加社数が増えました。現在、どれだけの企業がSBT認定を受けているかは、冒頭のインフォグラフィックスをご参照ください。また、実際にどの企業が認定を受けているかは、SBTiのウェブサイトでも確認できる他、日本企業については環境省のウェブサイトでも確認ができます。

※SBT認定企業の数は、随時更新されるためインフォグラフィックスの数字と下記のウェブサイトに記載の数字が必ずしも一致しないことがあります。

外部リンク:SBTiウェブサイト(英語)
https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action
外部リンク:環境省ウェブサイト
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/targets.html#no00

企業にとってSBT認定をうけるメリットは

グローバル・スタンダード

SBTは、パリ協定に沿った科学的知見と整合した目標設定の方法として、世界中で既に多くの企業が認定を受けており、グローバル・スタンダードとなっています。また、気候変動対策の必要性の高まりを受けて、投資家や消費者も企業の排出削減目標の有無を重視し始めており、SBT認定の有無が重要な指標のひとつとなっています。さらに、CDPによる質問書においても、SBT認定を受けていると得点があがります。

サプライチェーン全体での削減

さらに前述のとおり、企業のサプライチェーン全体での排出削減が求められていく中で、今後は取引先企業から自社の削減目標の開示や評価が要求されることとなります。SBT認定を受けていれば、企業は自信をもって取引先に対して自社の削減目標を開示することができます。

© Global Warming Images / WWF

今後の課題

鍵となる鉄鋼・金融セクター

日本でも、SBT認定を受ける企業は着実に増えており、引き続き多くの企業がSBT認定を受けることが期待されます。しかし、CO2排出量の多い鉄鋼セクターや投融資先の排出量(ファイナンスドエミッション)に大きな影響を及ぼす金融セクターにおいては、2023年3月現在、日本企業のSBT認定はまだありません。また、ネットゼロ基準を取得している日本企業も少ないままです。今後、日本において排出削減をさらに進めるためには、さらに日本企業がSBT認定やネットゼロ基準認定を取得することが求められます。また東南アジア等途上国に多くのサプライチェーンを有する日本企業がSBT認定を受けることによって、こうした地域の企業の脱炭素化を促していく事にもつながります。

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