© 中本純市

カンムリワシが舞う農園の取り組み~石垣島


沖縄県石垣島で先日、カンムリワシと共生する農園作りを目指すクリーンアップイベントが開催され、子どもから大人まで20名を超す市民の方々が参加しました。

農園のある場所は、ラムサール条約湿地・名蔵アンパルの水源を擁する前勢岳の麓。以前私が訪問した際は、農園の入口で羽を休めるカンムリワシの姿が見られました。

農園内で餌を探すカンムリワシ。国の特別天然記念物、種の保存法の国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠA類(CR)(環境省)。
© カンムリワシの里と森を守る会

農園内で餌を探すカンムリワシ。国の特別天然記念物、種の保存法の国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠA類(CR)(環境省)。

最初に直面したのは、耕作放棄されていた土地に不法投棄されたゴミの山。家電、タイヤ、車両等々、だいぶ古い物から最近捨てられたゴミまで、農園用地の各所に埋まっていました。

不法投棄の看板(左上の写真)もむなしく、農地を掘ると出てくるゴミの数々。イベントでは、参加者が力を合わせて回収し、市内の業者に協力頂いて、数日間にわたって処理されました。
© カンムリワシの里と森を守る会

不法投棄の看板(左上の写真)もむなしく、農地を掘ると出てくるゴミの数々。イベントでは、参加者が力を合わせて回収し、市内の業者に協力頂いて、数日間にわたって処理されました。

回収作業に従事された石垣島の皆さん。お疲れ様でした!
© カンムリワシの里と森を守る会

回収作業に従事された石垣島の皆さん。お疲れ様でした!

作業に従事された皆さんの前には、多種多様な野生生物が姿を見せてくれました。サキシママダラ、イシガキトカゲ、サキシマヌマガエル、ヒメアマガエルのオタマジャクシ、オオムカデ、ナナフシ、ハナムグリの幼虫、オカヤドカリ等々。

農園内には湧水があり、水たまりには数多くのオタマジャクシの姿が見られました。ヤエヤマヒメアマガエルと思われるオタマジャクシ。
© カンムリワシの里と森を守る会

農園内には湧水があり、水たまりには数多くのオタマジャクシの姿が見られました。ヤエヤマヒメアマガエルと思われるオタマジャクシ。

イベントには親子での参加も多く、主催したカンムリワシの里と森を守る会メンバーの説明を熱心に聞いていました。
© カンムリワシの里と森を守る会

イベントには親子での参加も多く、主催したカンムリワシの里と森を守る会メンバーの説明を熱心に聞いていました。

農園内で見つかったサキシママダラ
© カンムリワシの里と森を守る会

農園内で見つかったサキシママダラ

農園内の水辺にはたくさんのカエルの姿も。カエルはカンムリワシの餌としても重要な存在です。サキシマヌマガエル。
© カンムリワシの里と森を守る会

農園内の水辺にはたくさんのカエルの姿も。カエルはカンムリワシの餌としても重要な存在です。サキシマヌマガエル。

農園内はムシもいっぱい、子どもたちも夢中。ナナフシ(左)とオオムカデ(右)。
© カンムリワシの里と森を守る会

農園内はムシもいっぱい、子どもたちも夢中。ナナフシ(左)とオオムカデ(右)。

現在、農園が隣接する場所では、約127ヘクタールの大規模なゴルフ場付きリゾート施設の建設計画が進められています。この施設で使う一日約1000トンの水の7割(約700トン)を地下水を汲み上げて賄う計画となっていて、この農園を含む周辺農地への影響が懸念されています。

イベントを主催した石垣島の市民団体「カンムリワシの里と森を守る会」と「アンパルの自然を守る会」が中心となって実施中のクラウドファンディングでは、カンムリワシ「自然の権利」訴訟の活動とともに、こうした農園の取り組みも支援しています。

カンムリワシの姿は、それを支える多種多様な生物が生息している豊かな生態系の証です。石垣島の貴重な自然と共生する農園作りの取り組みを、引き続き応援したいと思います。

※クラウドファンディングはこちら(camp-fire.jpのサイトへ)

※ゴルフ場付きリゾート計画の見直しを求める、我がーやいまの自然環境を考える会とアンパルの自然を守る会による、オンライン署名も引き続き募集中です(change.orgのサイトへ)

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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