森と人をつなぐ、ハンドブックを作りたい
2020/01/24
日本のみなさんこんにちは!WWFタイのナンです。
私の仕事は、野生生物の生息環境を管理することです。
タイを代表する保護区の一つ、クイブリ国立公園で働いています。
ここでは、国立公園の周辺に暮らす地域の方々がガイドさんとなり、訪れる観光客を対象にエコツーリズムを実施しています。

首都バンコクから車で4時間。クイブリ国立公園は、ミャンマーとの国境に沿ったテナセリウム山地にある公園です。ガイドさん(首からタグを下げている方)は野生動物を観察するサファリをはじめ、園内のさまざまな生きものについて解説をしてくれます。
日本のみなさんも山登りや、森に行くとき、ガイドさんを介して、その時、その場所でしか見られない動物や植物が見られると、ワクワクするのではないでしょうか。
そんな瞬間は、宝物のようで、見た命を「大切にしたい」と純粋に思える機会なのだと思います。
クイブリ国立公園では、いつどこでどんな植物や動物、鳥が見られるのか、まだ詳しくないガイドさんでも、しっかりご案内できるよう、私はハンドブックを作っています。

知らない植物はすぐ写真に撮って調べます。葉と花と実の写真が欲しいので、写せないときは、時期を変えて同じ場所に戻り、再チャレンジです。
私自身も、目にした生きものが何なのか…現地を調査しながら、頭を抱えて図鑑と向き合うことも多いです。
でもひとつ、またひとつわかってくるたびに、心躍る瞬間があります。
生きものはただそこにいるのではありません。
名前があり、自然の中での役割があり、物語があります。
まだまだ、知られていないことばかりなのです。

今同定している、アオギリの仲間。コーラやカカオと同じ仲間の植物です。日本にも、広島に被爆してなお生き残るアオギリがあると聞きました。いつか見に行きたいと思っています。
知ったときの心躍る瞬間を、ガイドの方々をはじめ、訪れた人々にも味わってもらえたら-そんな瞬間の積み重ねが、この森を守り続ける大きな力になるのだと思います。
そこで、ハンドブックには、いろいろな情報を盛り込んでいます。

こちらは、オオサイチョウ。立派なくちばしで実や果実などを食べます。翼を広げると150㎝の大きさになる個体もいます。

鳥類、哺乳類、植物と同時並行で作成しています。完成したら、日本のみなさんにもぜひ見ていただきたいです。
人々が森の資源を享受しながら、森を守る。
地域住民の方々が主体となって実施するこのエコツーリズムの取り組みが、そんな持続可能な産業であり続けられるよう願っています。
日本の皆さんも、このクイブリ国立公園の取り組みに、ぜひ注目していてください。
(編訳:森林担当 伊藤)