チリ海洋保全の現場から:サーモン養殖業の改善
2024/12/25
日本の皆さんこんにちは、WWFチリのクリスティーナです。
私は、海洋保全のシニアコーディネーターとして、地域に根差した海洋生態系の管理や野生生物の保全に取り組んでいます。
特にチリ南部のパタゴニア地域の海の生物多様性と生態系にとって最も重要な課題のひとつとなっているのが、サーモン(サケ)養殖業です。
そのため、この地域での海洋保全活動の一環として、10年以上にわたりその改善を進めてきました。
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チリのサーモン養殖場。タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)やギンザケが養殖されています。ちなみに南米大陸には、野生種のサケは生息していません。
パタゴニア地域の沿岸域には、サーモン養殖場が集中していて、養殖施設の設置による生息環境への影響や、サーモンの餌の食べ残しや排泄物による水質汚染、そして逃げて外来生物となったサーモンによる生態系のかく乱など、さまざまなリスクが懸念されています。
また、サーモン養殖による影響は、地域のコミュニティや先住民の人々にも及んでいて、海域の利用をめぐるサーモン養殖企業との対立も起きています。
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世界でチリの沿岸域にのみ生息する固有種「チリイルカ」。パタゴニア地域の海洋生態系にとって最も重要な種のひとつですが、サーモン養殖場の獣害対策用の網にかかり、怪我をしたり命を落としたりする事故が起きています。
私たちはこうした問題に対処するために、ASC基準に基づく養殖の改善に取り組んできました。
この10年で、ASC認証を取得したサーモンの養殖生産量は確実に増加。皆さまのご支援が、この活動を支える大きな力になってきました。
ですが、パタゴニア地域の海の生態系と生物多様性の保全のためには、さらなる取り組みが必要です。
特に、生物多様性と保全価値の高い保護地域からは、養殖場を撤去することも必要です。そのため政策提言などの活動を進めています。
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ASC認証ロゴを付けて販売されるチリ産サーモン。ASC認証を取得するには、養殖場周辺の環境と生物多様性を保つことや、地域住民との協議を通じて海や自然資源の円滑な共同利用を図ることなどが求められます。
日本はアメリカに次ぐ主要なチリ産サーモンの輸入国。責任あるチリ産サーモンの生産を促進していくためには、日本の消費者の皆さんの理解と行動が必要です。
ぜひ、チリ産サーモンをはじめ、サステナブルなシーフードを求める声を、日ごろお買い物するスーパーなどの小売店に届けてみてください。
そして、引き続き私たちの取り組みも応援していただきますよう、お願いいたします。(編訳:海洋水産グループ 吉田)