ゾウやトラに森を返すまで
2020/01/23
先日、タイ西部に位置するクイブリ国立公園の森を訪れました!
園内では、遠くから野生動物を観察することができます。
ガイドさんは、この森の貴重さ、生きものの多様さを解説してくれました。
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私はこれまで、国立公園でも、森が失われてきた地域に行くことが多かったので、初めて見た野生のゾウの群れには本当に感動しました。この日も、ゾウの群れはいきいきと、またゆっくりと湖に向かって進んでゆきました。
野生のアジアゾウがすむこの地域に、国立公園が設立されたのは1999年のこと。
それ以前は、村人によって森の木々が切り拓かれ、跡地にパイナップル畑が作られたため、すみかを失った野生のゾウが畑に出てきてしまうことが、大きな問題になっていたそうです。
大きな転機が訪れたのは、当時タイの王様、プミポン国王の訪問でした。
「もともとは、ゾウのすみかなのだから、健やかな森を、ゾウへ返さないといけない」
国王は、そう話したそうです。
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タイ国内に滞在中、一日に一度はプミポン国王の写真を目にしました。WWFの事務局にも!国民が抱くプミポン国王への尊敬の念が肌で感じられました。
これをきっかけに、残された森を守るべく、国立公園が設立。
WWFタイも農作地だった場所に植林したり、草地を作ったり、ゾウのための緩衝地帯を設ける活動を行ないました。
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地図にある黄緑色の地域は、かつて農作地だったところだと、WWFタイのスタッフが話してくれました。
「パイナップル農家の人々は…どうなったんですか?」
私がそう伺うと、ガイドさんは「エコツーリズムです」と答えてくれました。
そうです、人々は今、WWFタイのガイドさんを育成するトレーニングなどを通じて、エコツーリズムという新しい生計手段を得ながら、ゾウへのすみかを守る活動をしているのです。
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後ろの席で笑っているのが、村でトレーニングをうけたガイドさんです。公園の歴史や文化、ゾウの食性など、本当にいろいろなことを教えてくださいました。
地域の人々が主体となりエコツーリズムを運営できるようになるまでには、資金の確保、人材の育成、観光客の誘致など、実に息の長い取り組みで、うまくいかない事例のほうが多いのでは…と想像します。
そんな中、このような成功事例を見て、本当に嬉しく感じました。
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園内では2019年1月に9年ぶりにトラの足跡も見つかっています。WWFジャパンはWWFタイとカメラトラップを設置し、トラの個体数や生息域の把握に努めています。
ゾウと人が共存する風景が見られるこのクイブリ国立公園。
みなさんも引き続き、その活動を応援していただけたら嬉しいです。
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?