【動画あり】トビイロホエジカの未来
2020/02/13
「キョン」という名の方がよく知られているかもしれません。
その動物の正式な名前はホエジカ。
中国南部から東南アジア、インドにかけて分布するシカの仲間で、現在は13種が知られています。
この中の一種に、トビイロホエジカという、少し珍しいホエジカがいます。
分布域はインドシナ半島のメコン地域西部。ミャンマーとタイの国境地帯に、南北に連なる山岳地帯です。
トビイロホエジカは世界でただ1カ所、この両国国境を中心とした、この山々の熱帯の森にのみ生息する動物なのです。
トビイロホエジカの生息状況などはよく分かっておらず、絶滅の危機にあるのかどうかも不明。それでも、この動物は森林破壊による減少が心配されています。
タイでは、保護区になっているエリアに生き残っていることが知られていますが、それ以外の森が切りつくされた地域では、姿を消してしまいました。
一方、まだ森が残るミャンマー側では、天然ゴムなどの農園開発が急速に拡大。森が失われているほか、保護区にも密猟者が入り込んでおり、こうした野生動物を脅かしています。
森の乏しくなったタイと、森の保全がままならないミャンマー。
この両国の森を、一つにつないだ形で守らないと、トビイロホエジカの危機はさらに、深刻なものとなります。
このように、人が作った国境を越えて森や水域を行き来する野生動物は少なくありません。
私たちが調査をしているインドシナトラ自体、そういう動物ですし、両国双方の森をのこさないと、遠からず絶滅してしまう動物です。
トビイロホエジカの未来は、他の多くの野生動物の未来とも重なっています。
豊かな森を未来に向けて守れるか。その成否は、今の取り組みにかかっています。