野生のイグアナを危機に追いやる過剰なペット利用
2022/04/27
独特の風貌や鮮やかな体色が特徴的なイグアナ。現在世界に45種が生息するイグアナ類は、ペットとして人気を博し、世界で最も取引される爬虫類といわれています。
しかし、こうした「ペット需要」が今、イグアナ類の重要な分布域の一つである中南米やカリブ海地域での違法捕獲を招いています。
その危機的な状況と、緊急対策の必要性を明らかにした報告書が、先日IUCN(国際自然保護連合)の専門家グループらにより発表されました。
イグアナ属の動物は、全て「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」の附属書Ⅱに記載され、国際的な取引は規制されています。
ところが現地では、違法に捕獲した野生の希少なイグアナの産地を偽り、輸出許可を得て取引を行なうなどの「ロンダリング」行為が横行。これらが野生の個体群に脅威を与えていると、報告書は指摘しています。
こうした取引には、日本も大きく関係しています。
2012年から2020年までに、日本は実に、約2万5000匹ものグリーンイグアナをペット目的で輸入。
その輸入元には、エルサルバドルのような中米諸国だけでなく、飼育繁殖した個体を輸出している、アメリカやヨーロッパ諸国も含まれています。
2万5,000匹のうち、野生由来(WC)は約600匹で、残りはこうした国々からの飼育繫殖(CB)個体、とされていますが、今回の報告書では、こうした由来は実情と異なっている可能性があることも指摘。
実際、IUCNのレッドリストでCR(近絶滅種)に選定されている、絶滅寸前の危機にあるレッサーアンティルイグアナ等、カリブ海諸国に生息する希少なイグアナが、日本国内で販売されていた例も確認されていることから、違法な捕獲や取引との関係性が疑われます。
このままイグアナ属のペットとしての過剰利用が続けば、野生の個体数はさらに減少し、絶滅のリスクが増すことにつながります。
イグアナのみならず、野生動物のペット利用のあり方について、一人ひとりが考え、ペット事業者による調達や輸入方法についても、抜本的な見直しを行なっていくことが必要です。(野生生物グループ・岡元)