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野生のイグアナを危機に追いやる過剰なペット利用


独特の風貌や鮮やかな体色が特徴的なイグアナ。現在世界に45種が生息するイグアナ類は、ペットとして人気を博し、世界で最も取引される爬虫類といわれています。

しかし、こうした「ペット需要」が今、イグアナ類の重要な分布域の一つである中南米やカリブ海地域での違法捕獲を招いています。

その危機的な状況と、緊急対策の必要性を明らかにした報告書が、先日IUCN(国際自然保護連合)の専門家グループらにより発表されました。

希少なイグアナ類の生息地の一つである中米のコスタリカ。世界の生物多様性の6%を占めるともいわれる豊かな自然を擁しています。
© WWF-US / Keith Arnold

希少なイグアナ類の生息地の一つである中米のコスタリカ。世界の生物多様性の6%を占めるともいわれる豊かな自然を擁しています。

イグアナ属の動物は、全て「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」の附属書Ⅱに記載され、国際的な取引は規制されています。

ところが現地では、違法に捕獲した野生の希少なイグアナの産地を偽り、輸出許可を得て取引を行なうなどの「ロンダリング」行為が横行。これらが野生の個体群に脅威を与えていると、報告書は指摘しています。

こうした取引には、日本も大きく関係しています。

2012年から2020年までに、日本は実に、約2万5000匹ものグリーンイグアナをペット目的で輸入。

その輸入元には、エルサルバドルのような中米諸国だけでなく、飼育繁殖した個体を輸出している、アメリカやヨーロッパ諸国も含まれています。

2万5,000匹のうち、野生由来(WC)は約600匹で、残りはこうした国々からの飼育繫殖(CB)個体、とされていますが、今回の報告書では、こうした由来は実情と異なっている可能性があることも指摘。

実際、IUCNのレッドリストでCR(近絶滅種)に選定されている、絶滅寸前の危機にあるレッサーアンティルイグアナ等、カリブ海諸国に生息する希少なイグアナが、日本国内で販売されていた例も確認されていることから、違法な捕獲や取引との関係性が疑われます。

グリーンイグアナは寿命が約20年と長く、成長すると約2mの大きさになります。温湿度管理も欠かせず、その飼育管理は容易ではありません。一方で、野外に遺棄されると、外来生物となって、在来の生態系に深刻な影響を及ぼす場合があります。
© Terry Sora

グリーンイグアナは寿命が約20年と長く、成長すると約2mの大きさになります。温湿度管理も欠かせず、その飼育管理は容易ではありません。一方で、野外に遺棄されると、外来生物となって、在来の生態系に深刻な影響を及ぼす場合があります。

このままイグアナ属のペットとしての過剰利用が続けば、野生の個体数はさらに減少し、絶滅のリスクが増すことにつながります。

イグアナのみならず、野生動物のペット利用のあり方について、一人ひとりが考え、ペット事業者による調達や輸入方法についても、抜本的な見直しを行なっていくことが必要です。(野生生物グループ・岡元)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
岡元 友実子

獣医学修士(ソウル大学)/ 学芸員 / IUCN カワウソ専門家グループメンバー
学部から大学院に至るまで、野生動物について専門的に学ぶ。修了後、上野動物園など日本および台湾での動物園勤務を経て、2021年WWFジャパン入局。現在はペットプロジェクトに関連した業界変容を担当。

学生時代に海外で野生のカワウソを見たことをきっかけに、大のカワウソ好きに。「二ホンカワウソ絶滅」の悲劇を二度と起こしてはならない!の決意を胸に日々野生動物保全のため奮闘中。特技は語学(英語・中国語・韓国語)。

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