飛べ!トラ病院の入院患者


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

ロシア沿海地方にある、シベリアトラのリハビリセンター(救護施設)から、ちょっと珍しく、嬉しいニュースが届きました。

二人の入院患者がめでたく退院した!というのです。

©WWF Japan

人里などに出没する個体や、孤児になった仔トラを収容し、野生に戻すトレーニングを行なうリハビリセンター。WWFロシアではその設立を支援し、実際の救護活動にも取り組んでいます。

今回退院した「患者」は、トラではありません。

なんと、コウノトリです!

日本ではかつて一度絶滅し、今また多くの方々の努力によって、復活しようとしているコウノトリですが、海外ではアジア大陸の東部に分布。

その多くは、繁殖期の夏を極東ロシアの湿地帯などで過ごし、冬になると中国南部の沿岸へ「渡り」をすることで知られています。

しかし、生息地の開発などにより、今では2,500羽以下まで減少。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも「EN:絶滅危惧種」に指定されています。

実はWWFロシアは長年、このコウノトリの調査と保全にも力を入れてきました。

そうした中でこの7月、巣から落ちて救護された2羽のコウノトリが、このトラのリハビリセンターに運び込まれたのです。

幸い大きなケガもなく、巣立ちも間近だったようで、2羽はここで立派な若鳥となり、先日ついに、コウノトリが多く生息するユダヤ自治州の空に放たれた、とのこと。

また、その際には小型の発信器が付けられ、渡りルートの調査にも貢献してもらうことにしたそうで、さすが保護のプロであるロシアのスタッフ、抜け目がありません。

野生のコウノトリたちはこれから秋にかけて、このユダヤ自治州を中心とした湿地帯で獲物をとり、体力を蓄え、中国南部に向けて旅立つことになります。

若い2羽にとって、初めての渡りの旅は、長く、過酷なものになるかもしれませんが、どうか無事に成功するように。日本からも祈りたいと思います。

©WWF Japan

さまざまな野生生物が生きる極東ロシアの森と川。ここで伐採された木材は、中国などで加工され、日本にも輸出されていると考えられています。WWFジャパンも、WWFロシアに協力し、この森の保全に取り組んでいます。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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