トラの野生復帰プロジェクトの拠点「リハビリテーションセンター」を訪れて
2018/08/03
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
長年の保全活動が実を結び、着実にトラの個体数が回復しつつある極東ロシア。
ただその一方で、人の生活圏の広がりにともなう森林減少により「人とトラの軋轢(衝突)」が問題になっています。
増えたといっても、シベリアトラの個体数は未だ約500頭程度。
人との軋轢をなるべく減らしながら、保全とさらなる回復を目指す挑戦がロシアでは続いています。
その一つが、人の生活圏にでてきたトラを保護し、森に帰す「野生復帰」です。
その拠点が、沿海地方南部にあるリハビリテーションセンターです。
先日、この施設を訪問する機会をいただきました。
ここでは、ケガをした個体や親とはぐれた仔トラを一定期間保護し、獣医が健康状態の確認や治療を実施。狩りの訓練も行ない、専門家チームが野生復帰のタイミングを判断します。
復帰場所の選定は重要で、そこにどのくらい他のトラがいるのか、食物となる草食動物は十分いるのかなどが検討されます。
それから、発信器付きの首輪をつけて、森に返されますが、その後も約2か月に1度、電波と足跡などを頼りに、ちゃんと狩りが出来ているか、健康状態は大丈夫かなどが追跡調査されます。
昨年はウラジクと名付けられたトラが、ここから野生に復帰。
調査の結果、ウラジクは700kmも離れた元の生息場所に一旦戻り、また北へ移動したことなどが分かりました。
森の違法伐採や破壊的な商業伐採は、今もトラを脅かす大きな原因。
その木材製品を輸入している可能性のある日本もかかわりのある問題です。
トラとその森を守ってゆくため、私たちも日本で、持続可能な木材の証である「FSC認証」ラベルが付いた製品の調達と購買を、企業や消費者に働きかけていきたいと思います。(会員係:安藤)