密輸がなくならない理由
2019/03/06
2月27日、絶滅のおそれのあるサルを密輸入しようとして日本人が逮捕、起訴されたという報道がありました。
事件が起こったのは昨年4月。成田税関支署の職員がワシントン条約で取引が禁止されているスローロリスなどのサル5頭を発見したというものです。
スローロリスは、インドネシアやタイなどの東南アジアに生息する霊長類ですが、かつてその愛くるしい姿が人気を集め、日本にもペットとして多く輸入されていました。しかし、このまま取引が続けば、絶滅する危険がある、という理由で2007年にワシントン条約の附属書Ⅰに掲載され、ペット目的での輸入が一切禁止されるようになりました。
過剰な取引のせいで絶滅の危機が高まり、国際取引が規制された動物はスローロリスだけではありません。ヨウムやリュウキュウヤマガメ、そして、今最も注目を集めているのがカワウソです。
テレビやSNSなどでカワウソのかわいい姿が取り上げられ、カワウソカフェやカワウソを呼び物にしたイベントなど、かつてないカワウソブームが起こっています。その裏でカワウソの密輸事件が相次ぎ、絶滅が心配されています。
今年5月には「ワシントン条約」の第18回締約国会議(COP18)が開かれます。締約国からはコツメカワウソを「附属書Ⅰ」に掲載する提案が出ており、その提案が可決されれば、ペット目的での国際取引が一切できなくなります。
しかし、今回の事件のように、規制が強化されても、ペットとして求める人がいる限り密輸は一向になくなりません。取引規制は保護の観点からは必要な対策ですが、解決策にはならないのです。
野生動物をペットとして飼うことがその種や生息地にどんな影響を与えるのか考えてみてください。