【報告書】南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引


記者発表資料 2018年5月23日

  • 本調査で対象とした67種・亜種のうち37種が国内市場または海外市場において活発に取引されていることがわかった。
  • 条例で保護されている種にもかかわらず、多数が合法性の曖昧な状態で取引されている現状を改善するには、種の保存法への種の指定や、ワシントン条約の附属書への掲載など、より強い規制的措置を検討すべきである。
  • 期待されていた世界自然遺産登録が延期された理由のひとつに保全政策の不十分さが指摘されており、引き続き南西諸島を世界自然遺産リストへ掲載する努力においては、固有種に関する捕獲・取引規制の整備と施行が必要である。

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:徳川恒孝 以下、WWFジャパン)内の野生生物取引監視部門であるトラフィックは、世界自然遺産候補地でもある日本列島南西部に位置する南西諸島における両生類・爬虫類の取引調査の結果を報告書『南西諸島固有両生類・爬虫類のペット取引』にまとめ、本日、発表いたしました。

奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島を含む南西諸島は、多くの固有な野生の動植物が生息し、特に、両生類・爬虫類では固有種が多いことが知られています。また、2017年末に更新されたIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで新たに評価対象となった日本固有爬虫類の46種のうち、その3分の1が、生息地の減少など、外来種による捕食や、ペット目的の捕獲の影響を受け、絶滅の恐れが高い状態であることが示され、その中には南西諸島に生息する種も多く含まれています。

こうした現状を受け、トラフィックは2017年1月から2018年1月にかけて、南西諸島固有の両生類・爬虫類の67種・亜種(両生類17種2亜種、および爬虫類33種15亜種)を対象に、ペット取引の現状を把握するため、国内の実店舗およびオンライン市場、さらに欧米のオンライン市場での市場調査を実施しました。また南西諸島の行政担当者や研究者、観光業者など、地元関係者への捕獲や取引、地域住民の意識に関するヒアリングといった調査を実施しました。

調査の結果、本調査で対象とした67種・亜種の55%にあたる37種が、国内または海外市場において活発に取引されていることがわかりました。その中には環境省のレッドリストで特に絶滅の恐れが高い絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定されているミヤコカナヘビやクメトカゲモドキなども含まれています。また、この37種のうちワシントン条約、種の保存法、文化財保護法や地方自治体の条例などにより、何らかの捕獲・取引規制がある種は41%にあたる15種にのぼりました。

これは、希少種保護のルールがあるにも関わらず、国内外でペットとして活発に取引をされている現状を示しており、ルールが不十分であり、かつ適正に機能していないといえます。また、海外で公然と取引されている現状は、違法捕獲および違法輸出の防止と国際取引規制のいずれも成し得ていないことを意味します。

こうした結果をもとに、トラフィックでは、日本政府に対して、種の保存法の国内希少野生動植物種に指定して保護した上で、ワシントン条約の附属書への掲載の検討などを求めるとともに、ペット取引事業者に対しては、法令遵守の徹底、違法取引の排除、トレーサビリティの確立と消費者への適正な情報提供をすべきと本報告書にて提言しています。

引き続き南西諸島の世界自然遺産への登録を進めるためには、IUCNより勧告がなされた対象地域の見直しとともに、固有種の捕獲・取引規制の整備と施行が確実におこなわれるようなシステム作りをしなければなりません。世界自然遺産登録を目指すものの義務としても、行政、執行機関、企業、市民団体、住民が協力して世界の"ここにしかいない野生生物"を守るための抜本的な意識改革と保全政策の充実が必要です。

報告書

概要版

2018年6月8日(金)に石垣島で本件に関するイベントを開催いたします。

関連情報

問い合わせ先

トラフィック 若尾・西野 Tel: 03-3769-1716 Email: TEASjapan@traffic.org
WWFジャパン C&M室 プレス担当 山本 tel.03-3769-1714 press@wf.or.jp

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