© J.Mima / WWF

サイという名の町 タンザニアにて


東アフリカはタンザニアの北東部。
たままま移動ルート上で通り過ぎた、その町の名前は「KIFARU」。

数ある道沿いの小さな集落の一つであり、乗っていた四輪駆動車から降りたわけでもありません。

ですが、私たちが通りすがりに目にしたその町の看板は、同行していたWWFタンザニアのスタッフの一言で、きわめて印象深いものとなりました。

「KIFARUというのは、「サイ」という意味なんだ」

しかし今、この町の近くでサイの姿を見ることはできません。
密猟によって姿を消してしまったからです。

タンザニア北東部キファールの町
© J.Mima / WWF

タンザニア北東部キファールの町

この町を通ったのは、タンザニア東部のムコマジ国立公園から北上し、アフリカの最高峰キリマンジャロの麓の町モシへと向かう道中でした。

ここを含む東アフリカ一帯は、1970年代から90年代にかけて、象牙やサイの角を狙った激しい密猟が行なわれた場所。
KIFARUの町の周辺にすんでいたクロサイも、その犠牲になったものと思われます。

私たちWWFジャパンがアフリカゾウと人の間で起きる衝突事故を減らすため、活動を支援しているムコマジ国立公園では今、一度姿を消したこのクロサイを、人工的に繁殖させ、野生に戻す試みが行なわれています。

ムコマジ国立公園で自然に戻す試み(再導入)の対象となっているクロサイたち
© L.Nishino / WWF

ムコマジ国立公園で自然に戻す試み(再導入)の対象となっているクロサイたち

同様のクロサイの野生への再導入計画は、アフリカの他の地域でも実践されており、一部では成果も上がっていることから、ムコマジでの取り組みの成果にも期待ができそうです。

しかし、一度姿を消した野生動物をもとに戻すのは、非常に時間と人手と資金が必要な取り組み。しかも、完全に昔の姿を取り戻すことはできません。

今ある自然を守り、人と野生動物の共存を実現していく。
現地ではその目標を目指した取り組みが続けられています。

© J.Mima / WWF
ムコマジ国立公園の景色と、かつてこの公園に生息していたというクロサイの骨格標本。クロサイはよみがえるだろうか。
© J.Mima / WWF

ムコマジ国立公園の景色と、かつてこの公園に生息していたというクロサイの骨格標本。クロサイはよみがえるだろうか。

【寄付のお願い】アフリカゾウの未来のために|野生動物アドプト制度 アフリカゾウ・スポンサーズ

この記事をシェアする

自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP