© Germund Sellgren WWF-Sweden

カカオという宝石 ~西アフリカの森から


カカオは、宝石と呼べるかも知れない。

初めて訪れた、海外の森林保全の現場ガーナで抱いた印象です。

チョコレート原料であるカカオは、ガーナ政府に外貨建ての収入をもたらす貴重な財源です。金と石油に続き、3番目に大きな輸出品目となっています。

国に大きな恵みをもたらすことから、アサンテ王国の伝説になぞらえて「ゴールデン・ビーン」の異名を持つカカオ。収穫~発酵~乾燥まで丹念な手作業を必要とします。
© WWF-Japan

国に大きな恵みをもたらすことから、アサンテ王国の伝説になぞらえて「ゴールデン・ビーン」の異名を持つカカオ。収穫~発酵~乾燥まで丹念な手作業を必要とします。

政府は徹底した品質管理を導入しており、カカオは販売されるまでに最低3回の品質検査に合格しなければなりません。

ふっくらと大きく元気なものから、小ぶりで傷みがあるものまで等級分類されたカカオは、等級が高いものから海外へ輸出されます。

そのため、ガーナ国内では等級の低いものが流通し、カカオ農家に至っては、一度もチョコレートを口にしたことがない人も多くいます。

まるで、希少なダイヤモンドの原石が、原産国に留まることも、採掘者が身に着けることもないかのよう―

カカオ消費量の8割弱をガーナに依存する日本は、その恩恵を授かる国の一つですが、こうした実態はあまり知られていません。

ベテラン農家のエスティーバさん。以前は自家消費のためにとうもろこしやキャッサバを栽培していましたが、お金に換えることができるカカオ農家になりました
© WWF-Japan

ベテラン農家のエスティーバさん。以前は自家消費のためにとうもろこしやキャッサバを栽培していましたが、お金に換えることができるカカオ農家になりました

エスティーバさんは、換金作物であるカカオを求めて30年前にアフィアソ村へ移住しました。

しかし、カカオ栽培を始めた頃と比べて、今の農園は変わり果てたと言います。

カカオは日陰を好みますが、生育に必要なシェードツリー(日陰樹)が姿を消したことでカカオが枯死し、今では従来の4割程度しか収穫できなくなってしまいました。

こうした現場で、WWFジャパンは今、環境保全と小規模農家の支援を両立した取り組みとして、日陰樹の苗木を無償提供しています。

この取り組みを通じ、新たに65本の苗木を植えることができたことを、彼女はとても喜んでいました。

「孫たちを養うためにもまだまだ頑張らないとね。苗木が育って農園に緑が戻り、カカオが元気に育つのが楽しみです」

希望に輝いたその瞳は、まるで宝石のようでした。

いっしょなら、もっと守れる。森林破壊から守る。|WWFジャパン

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自然保護室(森林グループ)
田沼 俊剛

米国サウス大学において生態系および生物多様性に関する理学士号を取得し、イェール大学環境大学院より環境マネジメント修士号を取得。 新卒で外資系コンサルティング会社に入社後、11年間、金融セクターおよびエネルギーセクター向けに業務改革、組織改編、事業戦略策定など幅広い支援を提供する。英国本社のエネルギー戦略チームへの出向、国内における電力自由化チームの立ち上げを経験。その後2年間、京都へ移住して実兄が経営する不動産DXのベンチャー企業で務めたのち、2024年にWWFジャパンへ入局。 オーストラリアおよびブラジルにおける森林保全、畜産品に由来する森林破壊の抑制、国内企業のサステナブル調達を促進・支援するための業務に従事。

外資系コンサルティング会社に新卒入社して目の前の仕事をこなしていく中で、気付けば"週末と優雅な休暇"が人生の目的と化していることに気づき、40代の手前で脱サラ。 高校生の頃に思い描いていた、「すべての人間活動の土台となる地球を守り、環境問題の解決に携わる」という夢と誠実に向き合うことを決意して、WWFジャパンへ入局。"Make every day count"-少しでも世の中の役に立ち、ポジティブな変化の一部となれるように、与えられた環境とご縁に感謝しながら精進する毎日です。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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