カカオという宝石 ~西アフリカの森から
2025/02/14
カカオは、宝石と呼べるかも知れない。
初めて訪れた、海外の森林保全の現場ガーナで抱いた印象です。
チョコレート原料であるカカオは、ガーナ政府に外貨建ての収入をもたらす貴重な財源です。金と石油に続き、3番目に大きな輸出品目となっています。
![国に大きな恵みをもたらすことから、アサンテ王国の伝説になぞらえて「ゴールデン・ビーン」の異名を持つカカオ。収穫~発酵~乾燥まで丹念な手作業を必要とします。](/image/article/article_images/20250213forest01.webp)
国に大きな恵みをもたらすことから、アサンテ王国の伝説になぞらえて「ゴールデン・ビーン」の異名を持つカカオ。収穫~発酵~乾燥まで丹念な手作業を必要とします。
政府は徹底した品質管理を導入しており、カカオは販売されるまでに最低3回の品質検査に合格しなければなりません。
ふっくらと大きく元気なものから、小ぶりで傷みがあるものまで等級分類されたカカオは、等級が高いものから海外へ輸出されます。
そのため、ガーナ国内では等級の低いものが流通し、カカオ農家に至っては、一度もチョコレートを口にしたことがない人も多くいます。
まるで、希少なダイヤモンドの原石が、原産国に留まることも、採掘者が身に着けることもないかのよう―
カカオ消費量の8割弱をガーナに依存する日本は、その恩恵を授かる国の一つですが、こうした実態はあまり知られていません。
![ベテラン農家のエスティーバさん。以前は自家消費のためにとうもろこしやキャッサバを栽培していましたが、お金に換えることができるカカオ農家になりました](/image/article/article_images/20250213forest02.webp)
ベテラン農家のエスティーバさん。以前は自家消費のためにとうもろこしやキャッサバを栽培していましたが、お金に換えることができるカカオ農家になりました
エスティーバさんは、換金作物であるカカオを求めて30年前にアフィアソ村へ移住しました。
しかし、カカオ栽培を始めた頃と比べて、今の農園は変わり果てたと言います。
カカオは日陰を好みますが、生育に必要なシェードツリー(日陰樹)が姿を消したことでカカオが枯死し、今では従来の4割程度しか収穫できなくなってしまいました。
こうした現場で、WWFジャパンは今、環境保全と小規模農家の支援を両立した取り組みとして、日陰樹の苗木を無償提供しています。
この取り組みを通じ、新たに65本の苗木を植えることができたことを、彼女はとても喜んでいました。
「孫たちを養うためにもまだまだ頑張らないとね。苗木が育って農園に緑が戻り、カカオが元気に育つのが楽しみです」
希望に輝いたその瞳は、まるで宝石のようでした。